おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

華麗なるヒコーキ野郎

2022-05-18 08:35:08 | 映画
「華麗なるヒコーキ野郎」 1975年 アメリカ


監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演 ロバート・レッドフォード
   ボー・スヴェンソン
   スーザン・サランドン
   ジェフリー・ルイス
   マーゴット・キダー
   ボー・ブルンディン

ストーリー
第一次大戦がやっと終結した1920年代。
ここアメリカには『バーンストーミング』と呼ばれる職業があった。
単発のプロペラ機で、田舎町を飛びまわり、金をとって人々を飛行機に乗せたり、曲乗り飛行をして見せる商売で、バーンストーマーたちの多くは第一次大戦中に飛行機で戦って、その魅力にとりつかれた者たちで、ウオルド・ペッパーもそんな男の1人だった。
ある日、ペッパーが中西部の田舎町にやって来ると、そこでは既にアクセル・オルソンという元空軍大尉が彼の市場を荒らしていたが、二人はチームを組んでサーカスに参加することになった。
ペッパーは飛行中、翼の上を歩く曲芸を思いつくが、過当競争が激しくなり始め、並の曲芸ではお客は集まらなくなっていた。
そこで曲芸に色気を加え、薄い服地をまとったメアリー・ベスが翼の上に立つことになったが、その練習中、不幸にも墜死してしまう。
一方、スタイルズは新型飛行機の組立てを完成し、翼をもぎとられたペッパーに替って試行飛行に飛びたったが、機はバランスを失って地面に激突した。
ペッパーは狂ったように飛行機に乗り込むと、機首を地面すれすれにさげ、見物人たちをけちらした。
その混乱で何人かが怪我をして、ペッパーは永久に飛行免許証を失った。
数カ月程たって、ペッパーはオルソンがハリウッドの映画会社で飛行スタントマンとして働いていることを聞くと、矢も盾もたまらず、ピータースドルフという偽名を使ってハリウッドに乗り込んでいった・・・。


寸評
原題は「Great Waldo Pepper」となっており、ウオルド・ペッパーとは主人公の名前で第一次世界大戦における空軍兵士の生き残りである。
戦後の彼は複葉機に乗って曲芸飛行を行うパイロットとして金を稼いでいる。
彼のあこがれのパイロットは敵国ドイツ軍のケスラーだ。
彼ら二人が見せるラストの空中戦が見せ場となっている。
大きなドラマはなく、僕はノスタルジーをそそりながら飛行機が飛び回っているだけという印象を受けた。
陸上の闘いと違って空の闘いは一騎打ちの要素がある。
ケスラーが言うように、パイロットは騎士のようであり、威厳を持ってお互いを尊敬し合う騎士道の精神を持ち合わせていたのだろう。
ペッパーは、機銃が故障してしまった敵機を相手の技量を認めて撃墜せずに敬礼をして飛び去ったケスラーを尊敬しているのだが、その相手は自分だったとホラを吹く調子のよい男でもある。
空を飛ぶことが唯一の生きがいとしている男で、複葉機で飛び回るシーンはノスタルジーを超えた爽快感がある。
第一次世界大戦は1914年から1918年にかけて行われた戦争で、当時は登場したような複葉機で空中戦が行われていたのだろう。
何とものどかな飛行機で、女性のメアリー・ベスが飛んでいる飛行機の座席から外に出て翼の上に立つ事ができるような代物なのだ。
操縦席にはフードもないし、機体は時代を感じさせるに十分なものがあった。
僕は高所恐怖症の気があるので、見ているとゾクゾクしてくるシーンもあり、僕には臨場感たっぷりに思えた。
敵機を何機も撃ち落とした撃墜王なるパイロットもいたのだろう。
彼らは空中戦を自分達の技術を競う場と考えていたのかもしれない。
ペッパーもケスラーもまるでスポーツで競うように空中戦を繰り広げる。
失くしてしまった命を懸けた緊張感に比べれば、スタントに生きる今の生活は堕落にしか思えないのだろう。
それほど空の男には誇りがあったのだと思う。

太平洋戦争における日本海軍のパイロットも優秀だったと聞く。
パイロットだけでなく照準士も優秀で、真珠湾攻撃では高空から落とさねば威力を発揮しなかった爆弾をアリゾナに命中させているのである。
一方のアメリカの爆弾投下はなかなか目的物に命中しなかったらしい。
大金をつぎ込んだB29の成果が上がらず、焼夷弾による無差別爆撃に踏み切ったとも聞く。
アメリカの技術不足と陸海空の覇権争いによって、日本の民間人がどれほど命を失ったことか。
日本のパイロットは本当に優秀で、終戦間際には精鋭を再編成した航空隊が松山上空での空中戦で完勝しているのである。
撃墜王だれそれと呼ばれる人もいたようで、ケスラーもそのような人物である。
その尊敬するケスラーと戦ってペッパーは雲間に飛んでいく。
その機影は忘れ去ることができない記憶との決別を行ったようにも見えた。
陳腐な邦題ではあるが、ペッパーは間違いなく飛行機野郎である。