おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

家族はつらいよ2

2022-05-08 07:56:29 | 映画
一作目は2020/12/15をご覧ください。

「家族はつらいよ2」 2017年 日本


監督 山田洋次
出演 橋爪功 吉行和子 西村雅彦 夏川結衣
   中嶋朋子 林家正蔵 妻夫木聡 蒼井優
   小林稔侍 風吹ジュン 中村鷹之資
   丸山歩夢 劇団ひとり 笑福亭鶴瓶

ストーリー
東京の郊外に暮らす三世代同居の平田一家。
平田家は当主の平田周造(橋爪功)と妻の富子(吉行和子)、長男の幸之助(西村雅彦)とその妻史枝(夏川結衣)に二人の子供たち、謙一(中村鷹之資)と信介(丸山歩夢)という6人家族である。
当主の周造が妻・富子との熟年離婚の危機を乗り越えてから数年が経った。
マイカーでの外出がささやかな楽しみの周造の車にへこみ傷が目立つようになり、高齢者の事故を心配する家族が運転免許を返納させようとする。
頑固な父を誰が説得するか兄妹夫婦でなすりつけ合っているのを見透かした周造が激怒し、またもや平田家に一騒動が勃発してしまう。
そんな中、周造は馴染みの小料理屋の女将・かよ(風吹ジュン)をマイカーに乗せ、昼食の天婦羅を食べに行こうとして居た時、道路警備をしていた故郷・広島の高校時代の同級生・丸田(小林稔侍)と40年ぶりに偶然の再会を果たした。
かつてはモテモテのぼんぼんだった丸田のわびしげな姿を不憫に思い、友人の向井(有薗芳記)も誘い、即席の同窓会を開いて大いに盛り上がるのだった。
周造の免許返納について家族会議を開くため、長女の金井成子(中嶋朋子)と亭主の泰蔵(林家正蔵)や、結婚した次男の平田庄太(妻夫木聡)と憲子(蒼井優)の兄妹夫婦たちが集められたところ、前日に周造が家に泊めていた丸田が息を引き取っており、てんやわんやの大騒ぎになる。
一人暮らしをしていた丸田を引き取る人もなく、市の福祉課によって淋しい葬儀が行われることとなり、不憫に思った周造は葬儀の立ち合いを家族に頼むが、皆はそれぞれ用事があり立ち会うことが出来ず、参加できるのは庄太と憲子の夫婦だけだった。


寸評
登場人物は前作と同じだが、数年を経ているので庄太(妻夫木聡)と憲子(蒼井優)は結婚している。
微妙に違うのが周造(橋爪功)は前作ではテニス部だったのに今回はサッカー部となっていることや、ペットが犬から小鳥に変わっていることなどであるが、別段気にはならない。
肝吸い付きのうな重が登場し、新米の警官が出てくるのは前作からのパターンを継承している。
シリーズ物は第1作を見ておくと楽しみが増加するのは間違いない。
今回、先ず描かれるのが老人の運転免許返納問題。
危険運転が度々指摘されているが返納に対する法的根拠はないし、あくまでも自己申告を待たねばならない。
車に対する執着心がない私は免許を返上しても良いと思っているが、しかしあって当然のものがなくなると不便を感じるだろうことが想像できてなかなか踏ん切りがつかない。
公共交通としては比較的便利な場所に住んでいると思うが、それでも大きな荷物の買い出しや、重いものの購入には車が欲しいし、離れた場所にある墓参も大変だ。
滅多に車を利用しなくなった今となっては、必要時にレンタカーを利用すれば維持費も安上がりなのだろうが、それも面倒に思うし、第一免許証を返上すればそれも無理となってしまう。
なかなか踏ん切りがつかない。
そうは言いながらも、視野の狭さや、反射神経の鈍化は感じるところがあり、事故への恐れはぬぐい切れない。

周造も運転技術が低下して、車には接触傷が絶えない。
家族はなんとか運転免許を返納させようとするが周造は納得せず、その間のドタバタがテンポよく描かれていく。
頑固な親父を説得するのに子供たちは四苦八苦するが、そんな頑固おやじを説き伏せることが出来るのは妻の富子だけだと思うが、当の富子が「私が不便になる」と言って賛成していない。
しかもオーロラを見るために北欧に出かけてしまい戦線離脱である。
本作では吉行和子の登場シーンが少ないが、脚本上では賢明な選択だったと思う。
居合わせていれば、彼女は夫側なのか子供たち側なのかの立場を明確にせねばならなかっただろう。

前回は変な私立探偵で登場した小林稔侍が、今回は昔は羽振りが良かったが今は落ちぶれている高校時代の同級生・丸田として登場している。
後半は彼を巡る物語となっている。
ありきたりと言えばそれまでだが、孤独な老人の淋しい死だ。
しかし深刻で厳かである葬式は喜劇映画の中ではよく笑いのネタになる。
思わず笑ってしまう小ネタがいくらでも存在するのがお通夜とかお葬式の場面だ。
ここでも死者の額につける三角の巻物を、西村雅彦が額に巻いて笑わせ、映画の中の家族たちが笑いをこらえるシーンが挿入され、しっかり者の憲子までが笑いをこらえている。
登場する大人たちが全員ダメ人間なのに対し、若者代表的な蒼井優の憲子は唯一まともな人物と言っていい。
笑い飛ばしながらも老人賛歌をしているが、しっかり者の若者を描くことでバランスをとっている。
山田演出の手堅いところだ。
でも、一作目の痛快な笑いに比べると今回はちょっとパンチ不足で、2作目の宿命を感じた。