おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グローリー

2021-01-26 08:18:05 | 映画
「グローリー」 1989年 アメリカ


監督 エドワード・ズウィック
出演 マシュー・ブロデリック
   デンゼル・ワシントン
   モーガン・フリーマン
   ケイリー・エルウィズ
   ジミー・ケネディ
   アンドレ・ブラウアー

ストーリー
1860年代初頭、ボストンの実家に戻ってきた北軍指揮官ロバート・グールド・ショーは、パーティの席上で知事から、黒人だけで組織される第54連隊の指揮官を勧められ、それを引き受ける。
ショーの友人で白人士官のキャボット・フォーブスと幼なじみの黒人シアーレスも、それに志願した。
やがて多くの黒人たちが入隊を志願するが、その大半は南部から逃れてきた奴隷で、食事と軍服目当ての者も少なくなかった。
訓練は苛酷を極め、兵士は白人部隊をしのぐ成長ぶりをみせた。
ところが、北軍内部でさえ人種差別は根強く、必要物資もなかなか支給されない上、リンカーン大統領の命令で、黒人兵は戦闘に加わることができないでいた。
厳しい訓練が続く中、ショーは、リーダー格のローリングや白人を憎むトリップ、射撃の名手シャーツたち兵士との交流を通して、厚い信頼関係を築いてゆくのだった。
間もなく第54連隊は、サウスカロライナに移動し、ローリングも黒人初の上級曹長になるが、略奪や肉体労働ばかりの黒人兵士の仕事に業を煮やしたショーは、総司令官にそれを訴えて脅かしたことで、連隊はようやく実際の戦闘に加わることができ、そしてめざましい戦果をあげた。
さらにショーは、難攻不落の南軍の砦フォート・ワグナーの攻撃を、部隊の全滅を覚悟で志願する。
ローリングは、今まで家畜同様に扱われてきた、これは自分たちの誇り高い栄光なのだ、と語る。
そして南北戦争の雌雄を決するこの壮絶な死闘の中で、第54連隊は壊滅した。
しかし彼らの勇敢な戦いは、その後北軍に多くの黒人部隊を誕生させるきっかけとなり、その勝利に大きく貢献することになるのである。


寸評
アメリカの南北戦争は日本における明治維新と同様に、歴史上エポックメーキングとなる大きな出来事で、そこではありとあらゆる物語が生まれている。
南北戦争は1861年~1865年と時代的にも近く、明治維新の少し前に終結している内戦である。
当時の銃撃戦が描かれたようなものであったのかどうか知らないが、横一列になって進んでいく隊形は「どうぞ撃ってください」と言わんばかりに思えて、随分と悠長な戦いをやっていたんだなと思ってしまう。
アメリカ史に詳しくない僕は、リンカーンは奴隷解放を行た大統領との認識だけで、彼が当初黒人兵の戦闘参加を認めていなかったことなど知らなかった。
また南北戦争において第54連隊と言う黒人部隊が存在していたことは新たな知識となった。

多くの黒人兵たちは南部からの逃亡奴隷で、自分たちの自由のために立ち上がった北部の黒人たちは白人と共存していたという単純図式で描かれているが、北部にだって黒人奴隷はいたはずだ。
ここでは指揮官となるショーや仕官のフォーブスと黒人志願兵のシアーレスを友達として描いている。
軍隊組織は友人の関係に溝を作ってしまうのだが、一度できた溝がどのように埋まっていったのかの描写は少なく、特にショーとフォーブスの確執が解消される経緯が分かりづらい。
人種差別は奴隷解放を掲げる北軍の中にもあって、物資供給も差別を受けており、トリップの脱走原因もそれにあるのだが、彼はそれに対する処罰としてむち打ちの刑を受ける。
シャツを脱ぎ捨てた背中に奴隷時代に受けた無数のムチ打ち傷が残っていることが判明するシーンはゾッとするが、映画の流れはこの一件から一変する。
それまで紋切り型だったショーが、俄然積極的に黒人兵の中に入り込んでいく。
資材供給仕官を脅かして靴を調達するなど、ショーの行動を通じて感動シーンが増産されてくるから、映画は山場を迎えていくことになる。

54連隊が規律ある部隊として描かれる一方で、それを際立たせるために他の部隊の黒人兵に略奪暴行をさせて、必ずしも北軍=正義ではなかった点も描いているのは、単純ヒーロー物としないための配慮だろう。
差別的だった白人仕官が、出撃していく54連隊に「頑張れ!」と声をかけるのは感動したけど・・・。
54連隊は南軍の要塞への突撃の一番手に志願する。
それは黒人たちの名誉を得てやろうとするショーの思いやりなのだろうが、ショーもこの時点では戦うことに対して高揚していたのではないかと思う。
フォート・ワグナー要塞の結末を知らないから、54連隊がどのようにして攻略するかと興味を持って見ていたら予想外の展開だ。
後続部隊が戦闘にどう絡んでいたのかは分からないし、第二次世界大戦におけるノルマンデー上陸作戦のような状況になかなかならない。
そしてフォーブスが土塁を乗り越えたところで出会う状況がさらに期待を裏切る。
「なるほど、ここで終わるか」と唸らせるラストシーンだった。
最後に流れる説明文で僕はやっと歴史的背景を理解することが出来た。
僕はアメリカ史をほとんど知らないのだとも悟った。