おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グリーン・デスティニー

2021-01-23 06:50:04 | 映画
「グリーン・デスティニー」 2000年 アメリカ / 中国


監督 アン・リー
出演 チョウ・ユンファ
   ミシェル・ヨー
   チャン・ツィイー
   チャン・チェン
   チェン・ペイペイ
   ラン・シャン

ストーリー
中国全土にその名を知られる剣の名手リー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)。
彼は血で血を洗う江湖の争いに悩み剣を置く決意をし、瞑想修行を途中で切り上げて、女弟子ユー・シューリン(ミシェル・ヨー)の元へやってきた。
二人は密かに惹かれ合っていたが、師弟に愛の関係は許されなかった。
彼はユー・シューリンに伝説の名剣“グリーン・デスティニー”を北京のティエ氏(ラン・シャン)に届けるよう頼む。
そんなある日、ユーは届け先のティエ氏の屋敷で隣に住む貴族の娘イェン(チャン・ツィイー)に出会う。
イェンは両親に名家に嫁ぐことを決められていたが、本当はユーのような剣士になりたがっていた。
二人は打ち解け合うが、その夜“グリーン・デスティニー”が何者かに盗まれてしまう。
ユーはイェンを疑うのだったが……。
やがてイェンは、盗賊の青年ロー(チャン・チェン)と砂漠で恋に落ちる。
しかし政略結婚が決まっているイェンは、彼に別れを告げた。
イェンを諦めきれないロー。
彼への想いに揺れるイェン。
そんな時、イェンに正しい剣の道を教えようとしていたリーが、長年の敵に毒針で殺されてしまう。
死の直前で、初めて愛の告白をするリーとロー。
イェンはその姿に接し、家が決めた結婚を捨ててローとの愛を選ぶのだった。


寸評
ワイヤーアクションとカンフーによる立ち回りのオンパレードで、その滑稽さに笑ってしまうシーンもあるが、リー・ムーバイとイェンが竹林で対決する場面などはファンタスティックである。
壁を駆け上がり屋根へと飛び移りながら繰り広げられるアクションを受け入れることが出来なければ、この作品はまるで漫画でとても評価対象にはならないだろう。
それを理解したとしても、僕はこの作品を一般に評価されているほど手放しで好評価することはできない。
理由はアクションはともかくとして、登場人物が秘めている心の奥底が描き切れていたとは言い難いからだ。

リー・ムーバイは高名な剣の達人であるが、戦いに明け暮れる世界に疑問を覚え、修行をやめて愛剣グリーン・デスティニーを手放す決意をする。
シューリンとの静かな生活を望んでいるむが、名剣を巡る因縁で再び戦いの世界に戻っていく。
師匠を殺されてその敵討ちを志しているが、一方でシューリンとの平和な生活も望んでいる男である。
そのシューリンは恋人を殺した仇敵を、ムーバイと共に捜している。
武術の師でもあるムーバイに心惹かれているが、ムーバイの為に命を落としたかつての恋人を思い、自分の心に素直になれずにいるし、ムーバイもそれを感じているようである。
イェンはユイ長官の娘で好きな男がいるのだが政略結婚を強いられている。
そのイェンの教育係がジェイド・フォックスで、ムーバイの師匠のほか多くの人間を殺してきた謎の武芸者だ。
イェンの技量が自分を上回ったことを知り殺意を抱くようになったこの物語の悪役である。
ローはイェンをさらった盗賊だが、剣士になって冒険することを夢見ている彼女と愛し合うようになる。
政略結婚をする貴族の娘と盗賊と言う身分を超えた悲恋の関係である。
この様に人間模様は複雑に絡んでいるのだが、その人間模様は濃いようでいてその実、薄いと感じる。
ムーバイとシューリンの秘めたる恋心がアクションに隠れてしまっていて、もう一つ情感に欠けるものがある。
ムーバイはシューリンに気持ちを伝えて最後を迎えるが、僕はそこに二人の間の悲劇性を感じられなかった。

そして僕が盛り上がりを感じられなかった理由として、一体誰が強いのか明確でない所にもあったように思う。
リー・ムーバイが一番強そうなのは分かるが、ジェイド・フォックスが悪役の割には圧倒的な強さを感じさせない。
イェンも相当使い手で、シューリンとは互角のようだ。
イェンは武芸を申し込んだ男たちを手玉に取るが、ローには敗れて介抱されている。
そのローは追われる身になって霊峰の山に逃れてしまう。
ジェイド・フォックスは力量的にイェンに追い越されているはずだが、最後にはリー・ムーバイと相打ちするといった具合で、それぞれが圧倒的強さを示さず、どこか弱点を抱えているようなところがある。
僕の感受性が低いのか、イェンの描き方はこの女性を消化するには不十分に感じた。
彼女は最後に霊峰の山頂から飛び降りる。
かつてローが話してくれた霊峰の山頂から飛び降りると願いが叶うという伝説に乗っかった形だ。
鳥のように空を舞うイェン。
伝説によれば2人の願いは叶ったはずだが、はたして二人の願いとは何だったのか。
二人が一緒になることなら飛び降りることもなかったろうに。