おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グッドフェローズ

2021-01-16 11:06:01 | 映画
「グッドフェローズ」 1990年 アメリカ


監督 マーティン・スコセッシ
出演 レイ・リオッタ
   ロバート・デ・ニーロ
   ジョー・ペシ
   ロレイン・ブラッコ
   ポール・ソルヴィノ
   クリストファー・セロン

ストーリー
ヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は少年時代からマフィアに憧れ、地元のボス、ポーリー(ポール・ソルヴィノ)のもとで下働きを始めたところ、ポーリーに認められて街で一番恐れられている男ジミー(ロバート・デ・ニーロ)を紹介してもらい、ジミーは弟分のトミー(ジョー・ペシ)とヘンリーを組ませる。
不法な売買で警察に捕まったヘンリーは、取り調べでも決して口を割らなかったことで、先輩マフィアから一人前の男として認められ、その時、この世界の掟が“仲間を売るな”“決して口を割るな”であることを学ぶ。
大人になったヘンリーとトミーは、ジミーの仕切りで空港貨物の強奪など規模の大きな仕事もするようになり、一人前のマフィアとして贅沢に暮らしていた。
ヘンリーはカレン(ロレイン・ブラッコ)と出会い、恋に落ちた2人は結婚する。
ある日、ヘンリーの愛人のことでカレンは激怒し、ヘンリーに銃口を向け、ヘンリーは家を出る。
カレンはポーリーやジミーに泣きつき、ヘンリーは帰るよう説得されカレンと寄りを戻す。
ヘンリーとジミーはフロリダで暴行事件を起こし、10年の実刑判決を受ける。
ヘンリーは刑務所内でポーリーの嫌う麻薬の売買を始め、カレンが運び屋をしていた。
4年で出所したヘンリーは金になる麻薬の売買を続け、ジミーとトミーも仲間に引き入れる。
そんな中、ケネディ空港からルフトハンザ貨物を強奪するという計画がジミーの仕切りで進んでいた・・・。


寸評
主人公のナレーションと軽快なロック音楽に乗ってテンポよく物語が展開されていくのが特徴となっている。
事件が前後している以外はほとんど実話ということなのだが、犯罪映画のように犯行を手際よく見せて爽快感を感じさせるという作りにはなっていない。
ケネディ空港からルフトハンザ貨物を強奪するという犯行では、実行手順と参加するメンバーの紹介がヘンリーのナレーションでなされるが、実際の犯行シーンは描かれず、彼らが喜ぶ姿を通して作戦の成功が知らされるだけである。
仕入れた麻薬を小分けする場面はあるが売りさばくシーンなどはなく、そこでうごめく輩の様子が描かれていく。
そのように犯罪そのものよりも、そこでうごめく人物に焦点を当て続けた作品で、「ゴッド・ファーザー」のようにマフィアを美化して物語を膨らませるような所も見受けられない。

レイ・リオッタのヘンリーも、ロバートデ・ニーロのジミーもいいが、抜群のキャラクターを演じたのはトミーのジョー・ペシで、この男の機関銃の様なしゃべくりと、カッときたら簡単に人を殺してしまう単純さと狂気がこの映画の雰囲気を支配していた。
レストランの従業員である若者を気分で殺してしまうなどは狂気の世界だ。
からかっているのか、本気なのか分からない異常な人物で、絶対に知り合いになりたくないタイプの人物である。

少年時代からマフィアに憧れていたヘンリーは“仲間を売るな”、“決して口を割るな”という掟を学び、一人前のマフィアに成長していきカレンと知り合う。
カレンはヘンリーの正体を知らないままに、特別待遇とぜいたくな暮らしに引き込まれていくのだが、彼らが初めてレストランで食事するシーンがいい。
レストランは大人気で、店の外は順番待ちの人々が列を作っている。
ヘンリーとカレンは裏口から入り、厨房の中をすり抜けながら店内に入ると、優先的に一番前に席を作ってもらう。
その間、ヘンリーは従業員にチップをはずみ続ける。
その様子をカメラがワンカットで追い続けるのだが、流れるような画面が彼等の世界におけるステータスを表していたし、カレンがヘンリーに参ってしまうのも納得できてしまういいシーンだった。

常に仲間と一緒にいて結束が固いのはイタリア系マフィアの特徴なのだろう。
大豪邸に住んでいるような所はないが贅沢な暮らしはしている。
運送会社の従業員や警官をワイロで自由にあやつり、金品強奪犯罪を繰り返しているのだが、ジミーの指導の下で目立つようなハデな暮らしを慎んでいる。
ところがとんでもない大金を得たことで、彼らが急に贅沢な買い物をするようになってしまう。
あぶく銭を手にするとこうなるのだという典型である。
ジミーは発覚を恐れて、結束はどうなったのだと思われるくらい仲間を次々と消していく。
追い込まれたヘンリーが“仲間を売るな”、“決して口を割るな”という掟を破る経緯が面白く描かれている。
司法取引で保護されたヘンリーは足を洗うが、その生活は刺激的な過去とは別物の、安全と引き換えの退屈なもので、ただ生き延びているだけというラストが余韻を残す。