おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

2024-08-19 06:44:30 | 映画
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 2023年 アメリカ


監督 アレクサンダー・ペイン
出演 ポール・ジアマッティ / ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
   ドミニク・セッサ / キャリー・プレストン
   ブレイディ・ヘプナー / イアン・ドリー
   ジム・カプラン / ジリアン・ヴィグマン / テイト・ドノヴァン

ストーリー
舞台は1970年、雪の積もるボストン近郊の全寮制男子校。
クリスマス休暇を前にした最終日、親たちが子供を迎えに来るなか、5人の「訳あり」学生たちが、置いてけぼりをくらう。
やがてその内の4人が寮から出ていくことが出来て、母親が再婚したばかりのアンガス(ドミニク・セッサ)だけが帰る場所を失い、冬休み中、学校に残る羽目になった。
彼の見張り役を任されたのは、生徒にも教師にも疎まれている、気難し屋の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)。
そんなでこぼこコンビに、息子をベトナム戦争で亡くしたばかりの料理長メアリー(ダバイン・ジョイ・ランドルフ)が加わり、3人の奇妙な休暇が始まるなか、お互いの秘密が明らかになっていく。


寸評
クリスマスを含む冬休み中、学校に残る生徒がいるので教師のポールがお目付け役を命じられる。
年末年始に出勤を命じられるサラリーマンの様なもので、誰でも逃れたい気持ちがある。
別の教師が担当するはずだったのだが、その教師は母親の病気をでっちあげて逃れてしまったためにハナムは校長から指名されたのだ。
この校長はかつてハナムの教え子だったが、今ではハナムの上司となっているといういびつな関係である。
ハナムはこの学校にしか居場所がないのでその関係に甘んじているが、なぜそうなのかが後半で明らかになる。
ポールは身体的欠陥があり、そのことで女性に対して臆病でずっと独身を通している。
親切にしてくれる事務員の女性もいるが、彼女の態度は観客にも勘違いを起こさせる。
でも誰でも思い当たることがありそうな関係で、このエピソードだけでなく、映画は大きなドラマではない日常の何気ない出来事を上手く散りばめている。

この学校に居場所を求めているのは料理長のメアリーも同様だ。
時代が1970年ということで、アメリカはベトナム戦争の真っただ中だ。
メアリーの息子はこの学校の優秀な生徒だったが、貧しい家庭の彼は退役後に大学進学の補助が得られることで出征し戦死してしまっている。
メアリーは息子との思い出が残るこの学校を去ることが出来ない。

髪を切らないとスキーに連れて行かないと言っていた父親が迎えに来る。
息子は「親父はやわだ」というが、親はどうしても子供を見放すことが出来ないのだ。
一緒に残っていた生徒たちが去ってしまい、アンガスは一人で残ることになる。
アンガスたちは口実を作ってボストンに向かう。
ここからの展開は感動を呼び起こす。
アンガスは父親が好きだったのだろう。
しかし、父親が最後に漏らす言葉が画面の雰囲気とは違って残酷だ。
短い言葉なのに、なるほどと思わせる上手い演出である。

男二人が素晴らしい演技を見せているが、メアリーのダヴァイン・ジョイ・ランドルフも存在感を示している。
ハマムが下す決断も泣かせるが、僕はメアリーが生まれてくるメアリーの妹の子供の為にお金を貯めるという言葉に泣けた。
息子を失った彼女は、妹の子供に夢を託すのだろう。
肉親はいいものだ。
ハマムとアンガスは疑似親子のような関係になっていたのだろう。
信頼関係を築く自信がないと言って生徒を見放す教師もいれば、ハマムのように存在しなかった信頼関係を築いて去っていく教師もいるのだ。
お互いに「頑張れよ」と言って別れるのがいい。


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