おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

お熱いのがお好き

2020-11-21 11:13:21 | 映画
2019年2月10日から「お」の作品を19本程掲載しましたが、
今日から間口を広げ追加で掲載していきます。

「お熱いのがお好き」 1959年 アメリカ


監督 ビリー・ワイルダー
出演 ジャック・レモン
   トニー・カーティス
   マリリン・モンロー
   ジョージ・ラフト
   ジョー・E・ブラウン
   パット・オブライエン

ストーリー
禁酒時代のシカゴのもぐり酒場でサキソフォンを吹いていたジョー(トニー・カーティス)と、バス・ヴァイオルを弾いていたジェリー(ジャック・レモン)は、酒場に警察の手入れが入って失職した。
困った2人は新しい仕事場へ都落ちするため、ガレージに自動車を借りに出かけたところ、そのガレージで彼らは酒場の持ち主スパッツ・コロンボ(ジョージ・ラフト)が、もぐり営業を密告した男に機関銃弾をぶちこんだ殺人を目撃する。
逃げ出した2人はコロンボ一味に狙われる身の上となった。
生命の危険を感じた2人は、ジョーがジョセフィン、ジェリーがダフニと名を変えて、女装して女性オーケストラ一行にまぎれこみ、マイアミ演奏旅行に出発する。
オーケストラの一員に、ウクレレ奏者の金髪娘シュガー(マリリン・モンロー)がいた。
ジョーは一目でシュガーに惹かれたが、彼女は過去に6回もサキソフォン吹きとの恋愛に失敗し、今度は成金と結婚しようと狙っている娘だった。
それに女を装う身の上では、求愛もできない。
一方ジェリーのダフニは、マイアミで年輩の大金持の御曹子オスグッド3世(ジョー・E・ブラウン)に一目惚れされてしまう。
そこで一計を案じ、ジョーは男の姿に戻って石油成金と偽り、シュガーをつれ出す。
そしてジェリーの誘いで外出したオスグッド3世のヨットを使い、彼女と愛をささやくことに成功。
2人の二重生活が進行中のそんなある日、ギャング達の集会がマイアミで開かれ、スパッツ・コロンボが一味をつれてオーケストラ一行と同じホテルにやってきた。
びっくりした2人は、正体を見破られかけて逃げ出す仕度をする。


寸評
ビリー・ワイルダーはこのような作品を撮らせると上手い。
大した中身はないのに最後まで見させるものがある。
とは言うものの1959年という時代を考えると背徳映画と見えなくもないし、当時の風潮に対するビリー・ワイルダーの挑戦とも思えてくる内容ではある。
深読みすれば、現在では認知されているが当時は嫌悪されていたトランスジェンダーや同性愛を盛り込んでいるような気がするのだ。
トニー・カーティスとジャック・レモンが女性楽団に入る為に女装するのだが、ジャック・レモンの女装はグロテスクで、それだけで可笑しい。
二人の女装はカラー作品だったら目を覆うようなものになっただろうから、この映画がモノクロで撮られた理由はそこにあるのではないかと思う。
女装してダフニとなったジャック・レモンはジョー・E・ブラウンのオスグッドに言い寄られる。
オスグッドがダフニを女と思って好意を寄せたことになっているのだが、オスグッドは同性愛者のような雰囲気を持った男だ。
オスグッドの表情もそうなのだが、何度も結婚しているが母親によって離婚させられているとか、男であることを明かしたジャック・レモンに「完全な人間なんいない」と言うあたりに僕は同性愛者を感じ取った。

キャスティングは実にユニークで名前を見ただけで興味津々となる。
日活の人気俳優で若くしてゴーカートの事故で亡くなった赤木圭一郎がトニーと呼ばれていたのは、ジョーを演じたトニー・カーティスに似ていたからである。
トニー・カーティスは二枚目俳優らしい雰囲気があるのだが、本領発揮するのは本作のようなコメディ作品だったように思う。
断然面白いのはジャック・レモンだ。
身振り手振りがコメディアンそのもので、後年アメリカ映画界最高の喜劇俳優と言われたのも納得だ。
「アパートの鍵貸します」のようなシリアスな演技も見せる俳優だったが、コメディ映画で魅せる生き生きとした表情と動きは何とも言いようがない。

そして今一人は言うまでもなく伝説の女優マリリン・モンローである。
セックス・シンボルとして、少し頭が弱いが色気たっぷりという役をやらされることが多かったが、ここでもそんな役を見事に演じている。
僕はマリリン・モンローという女優は単なるセックス・シンボルとしてではなく、演技派としても十分にやっていけた女優さんだったと思っている。
たしかに本作でもグラマラスなボディを強調するような衣装で男性客の目を楽しませているが、想像以上にコメディもこなせていて彼女の本質を見る思いがする。
彼女の歌声も聞けてすごく楽しめる映画で、これがマリリン・モンローの最高作かもしれない。
添え物ではない存在感もあり、マリリンはやはり魅力的な女性だったのだ。