おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

エリン・ブロコビッチ

2020-11-18 08:03:48 | 映画
「エリン・ブロコビッチ」 2000年 アメリカ


監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ジュリア・ロバーツ
   アルバート・フィニー
   アーロン・エッカート
   マージ・ヘルゲンバーガー
   チェリー・ジョーンズ
   ピーター・コヨーテ

ストーリー
カリフォルニア州モハベ砂漠の小さな町。
エリン(ジュリア・ロバーツ)は元ミス・ウィチタの美貌ながら、離婚歴2回、3人の子持ちながら無職。
職探しに出て採用面接の帰り、追突事故に巻き込まれた彼女は、引退を控えた弁護士エド(アルバート・フィニー)に裁判の弁護を依頼するも和解金を取り損ねた。
職もなく貯金も尽きかけた彼女はエドの法律事務所へ押しかけ、強引に彼のアシスタントとして働き始める。
書類整理中、彼女は不審なファイルを見つける。
不動産売却の書類になぜか血液検査の結果が添付されていたのだ。
孤軍奮闘して調査した結果、大企業の工場が有害物質を垂れ流しにしている事実を突き止める。
病に苦しむ住民たちを目の当たりにしたエリンは、気乗りしない住民たちを訴訟に持ち込むよう説得に回る。
その後及び腰だったエドも本格的にその問題を担当。
また彼女の隣りに住むバイク野郎ジョージ(アーロン・エッカート)が3人の子供の面倒を見てくれる主夫として私生活面をサポート。
地道な活動が住民たちの共感を呼び、大企業と交渉の場を持つまでになった。
ついには執念で600人以上もの署名を集め、全米史上最高の和解金350億円を勝ち取った。
大きくなった法律事務所で窓際の個室を与えられたエリンはエドから破格のボーナスを受け取るのだった。


寸評
ジュリア・ロバーツの魅力が炸裂している作品だ。
エリンはミスコンテストで優勝した経験を持つが負け組の人生を送っている。
2度の離婚を経験したシングルマザーで三人の幼い子供を抱えている。
おまけに無職で職探しをしており貯金も底をついているが、バイタリティと行動力だけは抜きん出ている女性だ。
半ば押し売り的に採用させたのは、エリントはまったく違う文化圏と言える弁護士事務所である。
事務所で働き始めたが、事務所の女性たちとは交わるところがない。
エリンは過激でセクシーなファッションを好み、最後までそのファッションスタイルは変わらない。
彼女から見れば法曹の世界に生きる人たちは型にはまったスタイルと行動しか出来ない人種と思えるのだろう。
「太い足とダサイ靴!」と痛烈に提携事務所の女性をけなしたり、膨大な人の署名を取付け、決定的な証拠を示した時のエリンの放つ言葉は我々から見れば小気味よい。
3児の母であっても、どんなに仕事が忙しくても、溌溂とした女性でありたいと思っているようだし、他人の目は気にせず言いたいことはハッキリと言う。
僕たちがこうでありたいと思う姿をエリンが見せてくれる。
礼儀をわきまえるように注意されたりもするが、シングルマザーとして一生懸命な姿に胸打たれる。
一方できちんと話し合えば理解してもらえるという自信もあるのか、マニュアル通りの行動ではなく誠意でもって人々と接していくという彼女のキャラクターがあって物語は成立している。
提携弁護士事務所の女性が住民を訪ねると、無視されたり拒絶されたりするのとは対照的である。

集団訴訟を扱った裁判劇でもあるのだが、法廷シーンはほんの少ししか登場しない。
大半は素人であるはずのエリンが被害者から状況を聞いたり、証拠を集めて回る場面の連続である。
脅迫めいた電話が有ったり、彼女の存在をバラした男の存在などサスペンス的な部分もあるが、サスペンスを前面に出すことはせず、ひたすらエリンという女性のキャラクターを描き続けている。
その事がかえって観客を引き付けて画面に釘付け状態にさせている。
したがって裁判物に付き物の法廷で原告側が勝利を得る劇的な場面がなくても納得してしまう。
エリンのジュリア・ロバーツを引き立てているのが、事務所の社長でもある弁護士のエドで、演じているアルバート・フィニーがとぼけた味を上手く出している。
エドはいい加減かと思えばまともな行動をとる不思議なキャラで、エリンに冷たくしたかと思うと、車を提供するなど優しい面を持っているし、軟弱かと思えばエリンの痛烈な言葉を受け止める度量のある男でもある。
二人の掛け合いの面白さもこの作品の見どころとなっている。
見ているうちにこれはエリンの成長物語でもあることが分かってくる。
映画の冒頭では、彼女にとって仕事とはお金を稼ぐ手段にすぎないことが描かれ続ける。
しかし、公害訴訟に関わったことで、人から尊敬され感謝されるという経験をすることで、最後には自分の仕事を正当に評価してほしいと主張できるようになっている。
エリンは弁護士資格を持っていないが、エドのアシスタントとして辣腕を振るうようになるようだし、自分を助けてくれた男性への感謝も忘れておらず、二人して被害者を訪ねて賠償額を伝える場面は感動的だ。
「仕事、頑張るぞ!」と思わせてくれる映画である。