おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

海猿 ウミザル

2020-11-05 08:02:51 | 映画
「海猿 ウミザル」 2004年 日本


監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明 加藤あい 藤竜也 伊藤淳史
   海東健 香里奈 村田充 深水元基
   田中聡元 古畑勝隆 飯沼誠司 恵秀
   青木崇高 斎藤工 田中哲司 國村隼

ストーリー
広島県呉市にある海上保安大学校に、潜水士を目指す14名の若きエリート海上保安官たちが、主任教官・源(藤竜也)の指導の下、50日間に及ぶ潜水技術課程研修に挑むべくやって来た。
ダイブマスターの資格を持つルーキーの仙崎(伊藤英明)は、仲間たちと絆を深めながら、やや実力の劣る“バディ”(相棒)の工藤(伊藤淳史)と共に厳しい訓練をこなす一方、街で知り合った東京のファッション誌の編集者である環菜(加藤あい)とも不器用ながらも愛を育んでいく。
ところがある休日、人命救助に向かった工藤が還らぬ人となった。
ショックから立ち直れない仙崎。
支えであった環菜も仕事を解雇され、失意のまま彼のもとを去った。
しかし、訓練は容赦なく続き、最終実習。
仙崎は、それまでライバル関係にあった三島(海東健)と組み40mの潜行に成功するが、その時、ふたりは突然変化した潮流に流され、三島が岩に挟まれてしまう。
残されたボンベはひとつ。
しかも、片道分しかない。
だが、仙崎はバディである三島を決して見捨てなかった。
勿論、源も、仲間の訓練生たちも……。
50日間の研修が終了した。
仙崎をはじめとする13名の訓練生は、晴れて潜水士となった。
そしてその後、東京へ戻った仙崎は、専門学校へ通い始めた環菜との交際を再スタートさせると、潜水士として新たな最前線の舞台へと向かって行くのだった。


寸評
海上保安庁及び海上保安官への信頼がいやがうえにも植え付けられる作品だ。
この作品のヒットにより海上保安庁への入庁希望者が増えたと聞くが、それも納得させられる描き方だ。
厳しい訓練と同時に彼等の青春が描かれる。
時としてハメをはずす彼等の姿が明るく愉快に描かれ、海上保安大学って楽しいところだなあと思わせる。
訓練中だけの相手として女性をナンパする様子も描かれて、これを見れば希望者が殺到するのもうなずける。
しかし訓練は過酷なものがある。
その様子も海上保安官たちに対する信頼と尊敬を増すのに十分だった。
自分の命を犠牲にするかもしれない任務に従事する者への尊敬の念だ。
だから犠牲者に対する扱いは特別のものがある。
訓練生の工藤が事故死し、それを海上保安庁職員が整列して見送るシーンに身震いした。
訓練生たちが卒業証書を授与されるシーンもカッコいい。
あの白い制服にはあこがれるものがある。

判っていても感動を引き起こす上手い演出も見受けられる。
海上保安庁の全面協力もあって訓練シーンや海上シーンなどはなかなかドラマチックな映像となっていて興味と感動を呼び込むものになっていた。
最たるものが仙崎、三島が救出されるシーンだ。
助けを待つ仙崎が見上げるとわずかな光が届いているだけで何も見えない。
そこにホバーリングしながら仲間たちが一列に並んで浮かび上がってくる。
音楽が重なり思わず拍手したくなる展開で、往年の時代劇で助っ人が土手を走る姿に観客が拍手したことを思い出すのだが、さすがに今は拍手する人はいない。

冒頭の二次災害のシーンの顛末は、後半で明らかにされるが、源がなぜスーパールーキーの仙崎と、体力・技術が違い過ぎる落ちこぼれの工藤とを組ませたのかの答えは語られていない。
工藤とエリカ(香里奈)の恋の顛末もスッキリしないものがある。
少なくとも選ばれた人員であるはずの工藤が簡単におぼれ死んでしまう経緯も説明不足感がある。
それでもオシリを丸出しして「環菜ちゃ~ん」と船上から呼びかけたり、潜水禁止と張り紙がしてある生けすで潜水時間の競争をやるなど、青春を謳歌する彼らの姿に微笑んでしまう。
青春時代は一生のうちでもいい時代だ。
確かにこの作品は海上保安庁の潜水部隊という特殊な場所を背景としているが、仙崎と環菜の恋物語もあって紛れもなく青春映画だ。
訓練シーンが多い割には飽きることなく見続けられるうように撮られていて、なかなかどうして楽しめる娯楽作品となっている。
彼等は潜水士なので、その目的を「人命救助のためです」と答えるが、潜水士も含めた今の海上保安庁には国境警備と言う重要な任務も重きをなしてきている。
彼等が活躍しない方が平和な世の中だということも分かる。