おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ポセイドン・アドベンチャー

2020-04-01 10:11:19 | 映画
「ポセイドン・アドベンチャー」 1972年 アメリカ


監督 ロナルド・ニーム
出演 ジーン・ハックマン
   アーネスト・ボーグナイン
   レッド・バトンズ
   キャロル・リンレー
   ロディ・マクドウォール
   シェリー・ウィンタース
   パメラ・スー・マーティン

ストーリー
81000トンの豪華客船ポセイドン号が、ギリシャに向かうためにニューヨーク港をでたのは12月末だった。
ポセイドン号が地中海に入ったとき、地震観測所から、クレタ島南西130マイル沖合いで海底地震があったという電報が入り、それから間もなく大津波がおしよせポセイドン号は一瞬にして転覆した。
折から新年を祝うパーティが大食堂で催されており、集まった船客たちのほとんどが生命を失うという大惨事だったが、乗客の1人であるフランク・スコット牧師は、大混乱が鎮まると奇跡的に助かった人々と共に脱出を試みた。
ニューヨークの刑事であるマイク・ロゴ、その妻でもと売春婦だったリンダ、雑貨商のジェームズ・マーティン、中年夫婦マニー・ローゼンとベル、歌手のノニー・バリー、17歳のスーザン・シェルビーと10歳になるその弟のロビンそして船のボーイ、エーカーズの9人がスコットに従うことになり、あとの生存者は、救急隊がくるまでじっとしていた方がいいという事務長の意見をとった。
スコット牧師は、かすかながら船内にともる電気があるうちに、船の竜骨、つまり海面に1番近い所にたどりつき、そこで待機していれば助かるかもしれないと判断したのだ。
一行はスコット牧師の指示に従い、ブロードウェイと呼ばれる通路を通り、エンジンルームにたどりついた。
その間、船内では爆発がたびたび起こり、船体は徐々に沈下していく。
海水が下から次第にせり上がってきて、皆をあせらせた。
最初の不幸は、ギャレーから次のエンジンルームに向かうときに興り、惨事は次々と彼等を襲った。
やがて一行は最後の困難にさしかかっていく・・・。


寸評
この映画のヒットでその後多くのパニック映画が作られたが、やはりこの作品が本家本元と言える。
脱出を試みるメンバーも絞られていて、それぞれにキャラクターを割り振っていて見せ場を作っている。
主人公はジーン・ハックマンの牧師なのだが、この牧師は神は助けてくれるものではなく、自らの運命は自分で切り開くものだという行動派である。
彼はその異端な考え方のため資格をはく奪されていそうで、元牧師と言ったほうがいいかもしれない。
対抗するのがアーネスト・ボーグナインの刑事で、二人は似通った性格からことごとく対立する。
行動を共にする仲間に対立する二人がいることは映画の常道で、そのこと自体は驚かないが刑事の奥さんが元娼婦などというふくらみを持たせている。
若い船員がかつて自分が相手した男だといって船長と同席する食事にためらいを見せるなどの余談も描かれる。

船は老朽化していて、航海を終えるとすぐさまドッグ入りをしなければならない。
航海の遅れが修理費に響いてくるので船主の代理人の男は船長の反対を押し切って全速力での航海を命じる。
てっきりそのことが事故の大きな原因になると思っていたら、あまり関係なかったから、何のために船長との対立を描いたのかわからない。
ちょっと余計な演出だったと思うが、その後は人間的なトラブルや、立ちはだかる困難への挑戦などお手本となるような演出が続き手に汗を握る。
船は常に揺れていて、これだけ大きな船が航海中にあんなに揺れるのかと思ったが、船を意識させる演出だったのかもしれない。
転覆してからは逆さになっているセットが凝っていて、その制作に対する苦労が伝わって来る出来になっている。

主人公のジーン・ハックマンが活躍するのは当然だが、負けず劣らず活躍する少年の存在が面白い。
船オタクの様なのだが、それまでにも船員たちと交流して知識を得ていることが役立ってくるという設定だ。
それ以上にユニークな存在がローゼン夫人。
かなり太っている初老の女性で、潜水の名手でかつては大会で優勝したこともあるのだがそれは17歳でのこと。
彼女の言動は緊張をやわらげ、そして大活躍場面には拍手を送りたくなる。
ロビン少年が夫人を引き上げるのを手伝ったときに「僕はパパと237キロの魚を釣り上げたことがる」と言ったことを、後刻に悪気がなかったと謝るのだが、夫人は「いいのよ、そんなことを気にしてたの」と慰めるシーンがあるのだが、緊張の中でホット一息つけるシーンになっていた。
「誰かが助かるとしたら、あの姉弟を助けたいわ、あの子たちには未来があるもの」と話す心の優しさも持ち合わせている淑女だ。
もちろん一番しんみりともさせられる人でもある。
ジーン・ハックマンのスコット牧師がスーパーヒーロ過ぎるのは仕方のないところだけれど、スーパーヒーローらしく「助けてくれとは言わないが、邪魔をしないでくれ」と神に対して叫んで最後に挑むのもなかなかいい。

助かるのがたった6人というのは少なすぎるような気もするし、彼らを助けた救助隊が全部去ってしまうのもどうかと思うのだが、巨大客船の転覆事故を臨場感たっぷりに描いた超娯楽作であることは確かだ。