「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「お助け人物語」(12)

2010年09月04日 | 過去の物語
「さけを、冷や、でな。なすの漬物なんぞ、くれるかな。あとは、おまかせ、で、な」

と、桃庵は、一室に通されると、顔なじみのおせつと、話している。

「今日は、少し、話が長くなりそうだ。そう、女将に伝えておいてくれ」

と、桃庵は、まじめな顔で、おせつに話す。

「はい。女将と、板長に、そう、伝えておきます」

と、おせつも、まじめそうに、応対すると、静かに部屋を出ていきます。

ここは、「無音屋」。桃庵の顔なじみの料亭旅籠です。


「俺達の動きは、完全に、見張られていた」

そう主張するのは、すでに酒を傾けている平賀源大さんです。

「俺は、お弓ちゃんとは、別に動いていた。あの殺しは、どう見ても、殺しを専門に請け負っている人間の仕業だ」

と、少し興奮するように、話しています。

「真昼間に、飛苦無よ!」

と、驚いたように、話すのは、お弓さんです。

「あんなの、芝居の中での、話だけかと思っていたわよ。しかも、自分が狙われるなんて・・・」

と、目の前の現実に、どうも、理解ができない、お弓さんです。

「お弓は、そういう経験は、初めてだったか」

と、桃庵は、盃を傾けながら、少し苦笑して、話します。

「まあ、俺も、そう何度も・・・ってわけじゃねえけど、あれだけ、殺気が強すぎりゃあ、相手には、わかるぜ」

と、源大さんは、飛苦無を投げた人間の技の低さを指摘しています。

「そうね。あれは、わたしにも、わかったもの・・・ま、わたしだって、伊賀の出ですからね」

と、自分の出自を素直に暴露するお弓さんです。

「ま、私のところは、特別と言えば、特別だけどね」

と、少しほほえむ、お弓さんです。

「まあ、お弓ちゃんは、ある意味、特別扱い、だからね。下々の伊賀忍のことは、知らないんじゃないかい?」

と、源大さんは、お弓さんを、少し、持ち上げます。

「だって、お弓ちゃんは、伊賀のお姫さんだろ?」

と、源大さんは、お弓さんの秘密を、話します。

「え?まあ、その筋では、あるけれど、わたしの血筋は、二番目だから・・・」

と、お弓さんは、何か、言い淀むようです。

「いやいや、あのお方は、さらに、特別だからね。だから、やっぱり、お弓ちゃんは、お姫さんなんだよ」

と、源大さんは、鷹揚に話しています。

「まあ、それは、どちらでも、いいけど」

と、お弓さんは、話しながら、

「いずれにしろ、あの技では、伊賀では、途中の考試すら、合格できないはずよ!」

と、言い張る伊賀出身のお弓さんです。

「ということは、相手は、やはり、甲賀ね・・・」

と、お弓さんは、答えを知ったかのように、話します。

「いや、まだ、わからねえ。お弓ちゃんだって、一般の伊賀は、知らねえんだから、伊賀の、どこかで、飼われていた女かもしれねえよ」

と、源大さんは、一概に甲賀を敵視するのは、まだ、まだ、だ、と言っています。

「だってよ。甲賀が敵となるとよ、蓮華院殿配下が、敵だって、ことになるんだぜ」

と、源大さんは、こわいことを言っています。

「蓮華院殿は、将軍家に、忠誠を誓っておる。それだけは、ありえん」

と、桃庵は、それだけは、がんとして、ゆずらないようです。

「でも、昼間に、動く、忍びなんて、私には、考えられないもの・・・。あれじゃ、まるで、芝居よ・・・」

と、お弓さんは、それでも、食い下がります。


と、そこへ、ガラッと障子が、開いて、精悍な男が、入ってきます。

蒼龍思念流岩下道場塾頭、千代田剣之助です。

「遅れて、すまぬな。衣服を着替える必要があったのでな・・・」

と、剣之助は、鷹揚に構えると、自分の席につき、まずは、酒を手酌し、一気に飲み干します。

「剣之助、何かあったか?」

と、桃庵は、剣之助の雰囲気を感じて、何か、があったことを察知しています。

「わかりますか?さすが、桃庵殿」

と、剣之助は、苦笑します。

その言葉を聞き、源大も、お弓も、剣之助の言葉を待ちます。

「甲賀の男が、私を、襲いましてな・・・」

と、口に出すと、目をキラリとさせる剣之助です。

「なに!」「やはり!」「ほら!」

と、一同、驚愕の事実に、驚きを隠せません。

「たまたま、私が知っていた甲賀の男。それも、連達の男が、わたしを討ちにきましてな。まあ、待ち伏せを受けたようでした」

と、剣之助は、静かに話します。

「まあ、それでも、忍びは、暗闇でのみ、真価を発揮する職種。目の効く場所では、こちらの方が、圧倒的に有利ですよ」

と、剣之助は、忍びの意味を、話します。

「確かに、おかしいな」

と、源大さんも、それに反応します。

「忍びの使い方が、おかしい。まるで、兵法に、疎い者が、使っているようだ」

と、源大さんは、今日あった事の意味を、見出しています。

「なるほどな。ということは、奴らを使っているのは、蓮華院殿では、ない」

と、桃庵は、結論を出しています。

「この話、すぐにも、鼎に!」

と、源大さんが、言うと、ガラリと障子が開き、

「その必要は、ねえな。全部聞いたよ。それに、もう、手は、打った」

と、そこには、目をギラギラさせた、将軍家史編纂室長、蒼樹度鼎が立っています。

「将軍家を裏切った奴は、俺は、容赦しねえぜ!」

鼎は、その背中から炎を吹き出すような風情で、話しています。

「裏切った奴は、即、死だ!」

と、鼎は、そう断じます。その目は炎を吹き出すように、ギラギラしていました。


「殿、お話が、あります」

ある男が、部屋の前で、そう話します。

その部屋の中では、裸の男と、何人もの裸の女とが、汗を流しながら、抱き合っています。

「うむ。すぐか?」

裸の男は、涼し気な表情で、腰を激しく動かしながら、話します。

「はい。お願いできれば」

と、男が返すと、その裸の男は、鷹揚に、

「うむ。すぐ終わらせる。次の間に、待つように」

と、言いつけます。

「はは。そのように」

と、神を恐れるような表情を見せながら、その男は、次の間に、入っていきます。


「どうだ。気持ちよいか?」

と、その裸の男が、下になっている女に聞くと、女は、息も絶え絶えに、頷くだけです。

「まったく、最近のおんなは、弱いのう。これでは、我が心の師、松永弾正殿に、追いつけないではないか・・・」

と、つぶやく、男です。


この男こそ、今、全国を騒がせている紫ノ宮藩藩主、松永康秀そのひとであります。


「ほら、どうだ。こうだ。ほら、これで、どうだ」

と、康秀は、なぶるように、腰を使うと、女は、もう何度イッたか、わからないながら、また、イッて、腰をひくひくさせます。

「うむ。そうか。じゃ、わしも・・・」

と、強い突きをいれて、康秀も、濃い目の体液を、女の体内に、吐き出し、快感に身を委ねます。

そして、快感が終わると、ひくひくする女を尻目に、モノを引き抜き、まわりで、朦朧としている

おんな達に、命令します。

「おまえ達、ほら、後処理じゃ。それに、着替えも、させるのじゃ!」

と、贅肉が、一片もついていない、精悍な体を見せている康秀です。

裸のおんな達に、後処理をさせながら、ニヤリとする康秀は、自信にみなぎっています。

「弾正殿は、運がなかったのじゃ。だが、わしも、おなご達に、運はもらっている。弾正殿、まあ、見ていてくれ」

と、康秀は、はだかのおんな達に、囲まれながら、天下への秘策を、心の奥に秘めるのでした。

「宗春よ、待っておれ。その顔に、吠え面、かかせてやる!」

そう叫ぶと、大笑いする康秀でした。おんな達は、そんな康秀を、頼もしそうに見つめているのでした。


(つづく)



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