「ま、主任就任は来月になるだろう・・・それまでに、エマちゃんとは、メールをやりあえる間柄になっておけ」
と、カズキに言われた・・・その言葉が耳元にまだ残っていたサトルだった。
月曜日の夜、独身寮に帰ると、サトルはシャワーを浴び、缶ビールを買って部屋に戻った。
パソコンを立ち上げ・・・今後どうするか、考えていた。
「エマさんと、メールをやりあえる間柄か・・・どういう理由をつけて・・・それを相手に納得させるか・・・だよな・・・」
と、サトルは難しい難題を与えられたサルのように考えていた。
「こういうの・・・苦手なんだよな・・・だいたい、僕は相手に考えてもらう方が得意だし・・・」
と、サトルは、頭を抱えていた・・・。
「うーん・・・要は相手が僕とメールしたいって、思わせることが先決ってことかな・・・」
と、とりあえず考えてみる、サトルだった。
「で、それって、どうしたらいいの?・・・わっからないよ・・・」
と、頭を抱えるサトルだった。
「えーと、とりあえず、わかってることを整理するか・・・とりあえず、わかってることは・・・」
と、ビールを飲みながら、ノートを開いたサトルは・・・ノートにボールペンで文字を書いていく。
「エマさんが、僕のブログの写真に食いついた事・・・これだけは確かだな」
と、サトルは言葉にし、ノートに書いてみる。
「そうか・・・食いついたのは、エマさんの方なんだ・・・」
と、サトルは改めて言葉にする。
「うーん、ということは・・・弱みはエマさんの方にあって、強みは、僕の方にあるってこと?」
と、サトルはノートにボールペンで言葉を書きながら、自問自答している。
「その強みを活かして交渉していけば・・・いいってことなのかなー」
と、サトルは頭の中を????にしながら、言葉にしている。
「こういうの・・・苦手なんだよなー。シンプルに言葉にする方が楽だし・・・」
と、サトルは言葉にしている。
「にしても・・・何事も経験かー・・・ミクが言ってたな」
と、サトルはミクの言葉を思い出す。
「サトルは・・・相手の気持ちを考えて行動するのが、苦手なようね・・・でも、それが出来るようになると、相手の笑顔も増えるわよ」
と、ミクは言ってくれた。あれは逗子海岸で、二人で海を見ていた時だった。
「僕はまだ、子供だ・・・ミクに比べれば、全然なんの経験もしていないし・・・」
と、サトルが言うと、
「それは素敵な事でもあるのよ・・・わたしは・・・いろいろな事があった・・・サトルに今は言えないような事も経験してるの。でも、時期が来たら、もちろん、言うわ」
と、ミクはそんな風に話した。
「僕に、今は言えない事・・・そんな経験したの?ミク」
と、サトルが言う。
「順番よ。私もいろいろ考えて行動しているの・・・わたしが考えて・・・サトルに言っていいい日が来たら、ちゃんと言うから・・・それまで待ってて」
と、ミクは笑顔で言った。
「うん・・・まあ、ミクがその・・・僕の成長を見ていてくれて・・・いろいろ考えてくれてるのは、わかってるから・・・その時を待つよ」
と、サトルは言葉にする。
「ごめんね。ありがとう・・・サトルは、そういう素直なところが、本当の宝物だわ」
と、ミクは笑顔で言った。
「そんなこともあったな・・・」
と、サトルは遠い思い出に・・・なんとなく納得していた。
「そうか・・・カズキさんが言ってたっけ・・・エマさんは、僕の肩甲骨の写真に食いついた・・・ミカさんの意見だけど」
と、サトルは考える。
「となれば・・・要は同じモノが好き同士って、ことかな・・・」
と、サトルは考える。
「美しい肩甲骨や、プリっとした筋肉が光るお尻や、綺麗なラインの出ている、腰からヒップへのボディライン・・・そういうのが好きってこと、だよね?」
と、サトルは考える。
「そこに食いついたのなら・・・食いついたのなら?・・・あれ、そっからどう考えればいいんだろ?」
と、サトルは少しよくわからない。
「ま、今日のところは、エマさんに向けて、とりあえず、もうひとつコメントを出しておこう・・・」
と、サトルはどう書こうか悩む・・・。
「そう言えば、エマさんは、月の美しく見える街に住んでいるんですよね?どんな街なんですか?興味があります//ニコラ」
と、コメントを書いたサトルは、
「ま、僕がエマさんに興味を持った・・・ということを伝えれば・・・どうにか、なるだろう・・・」
と、あまり女性を口説いたことの無いサトルだった。
「どっちかって言うと、ただストレートなだけだもんな。僕って・・・」
と、サトルは言葉にする。
高校時代に初めて女の子と、つきあって・・・その子とはキス止まりだったけれど、大学時代、同じテニスサークルの女子と恋人同士となって、
初めてエッチも経験したけど・・・就職してすぐに別れていた。
「だから、女性の事、あんまり理解していないんだよな、僕・・・」
そして、次につきあったのが、4歳年上のミクだった・・・。
「確かに、僕・・・年上の方が圧倒的に楽かもしれない・・・大学時代、年下の女の子リードするの・・・結構大変だったし」
と、その頃を思い出す、サトルだった。
「なんで、おんなごころがわからないのよ!」
といきなりキレられて、物を投げつけられたこともあった。
「確かに・・・そういうところ、僕は、鈍感なのかもしれないな・・・」
と、サトルは思っていた。
「エマさんとメールでやりとり・・・主任になったら、平日だって時間取れるか、わからないぜ・・・人生のピンチだ、確実に・・・」
と、サトルは言葉にしていた。
「まあいい・・・今日出来ることは、これだけだ・・・えーと、あとは・・・サークル仲間にメールでもしておくか」
と、サトルはメールをさらさらと書くと、推敲して、送信した。ものの5分とかからなかった。
「しかし、メールだけは、俺早いんだよな・・・文章書くの得意だし、大好きだし・・・これが俺の仕事になったら、どんなに良いことか・・・」
と、思いながら、サトルはパソコンを立ち下げ、ビールを飲んで寝てしまった。
同じ頃、ミウは「カーペンターズ」を聞きながら、白ワインを飲んでいた・・・月夜野の街の真実を知り、自分がどういう目で見られていたかも知ったミウは、
少しショックだった。
「皆、考えることは同じ・・・・そういうことね・・・」
と、ミウは思った・・・自分の黒い闇・・・それは・・・決して語りたくない闇だった。
「でも、考えてみたら・・・皆わたしを白い目で見てるって現実があるってことじゃない・・・言っても言わなくても、どうせ同じってことじゃない・・・」
と、ミウは愚痴った。
誰かに話を聞いてもらいたかった。
「ユカに電話かける?愚痴を聞いてもらう・・・ううん。この時間は編集者にとっては仕事のメインの時間だもの・・・かけるわけにはいかないわ・・・」
と、ミウは思い留まった。
「こんな時に彼氏がいてくれたら・・・愚痴を聞いてもらうくらい・・・でも、無理だわ・・・だってあの話、彼氏になるような人に言えないもの・・・」
と、ミウは言った。
「人生って、こういうものだった?いつもそう・・・夢を持って歩き出そうとすると・・・壁にぶち当たる・・・もう何回そういう壁にぶつかってきたのかしら、わたし」
と、ミウは言葉にする。
「ふふ・・・いいわ。ニコラくん・・・あの肩甲骨の美しい年下のスポーツマン・・・彼と電話でしゃべれる間柄になりたいわ・・・」
と、ミウは思う。
「できれば・・・ねー・・・」
と、ミウは言葉にする。
「そうなれないかしら・・・わたしの愚痴聞いてくれるだけでもいい・・・それだけでも・・・日々が潤うわ」
と、ミウは言葉にする。
と、ミウは思い出したようにパソコンを立ち上げる・・・今日はまだニコラのブログを見ていなかった事に気づいた。
ミウはニコラのブログを見る・・・コメントが・・・ニコラのコメントが珍しいことに2つもあった。
「やっと今、その月の写真をアップしました。その月を見ながら缶ビールを飲んでいたら、酔っ払ってしまって、だから、アップが今日になったんです(笑)//ニコラ」
「そう言えば、エマさんは、月の美しく見える街に住んでいるんですよね?どんな街なんですか?興味があります//ニコラ」
ミウは、ニコラのくれた2つのコメントに、つい、嬉しくなっていた。
白ワインをグラスに注ぎ、ぐっと飲み干す。いっぱいの笑顔になる。しあわせな瞬間だった。
「この男性・・・すごく繊細で、やさしい・・・」
と、ミウは感じていた。
「多分・・・最初のコメントは、土曜日にコメントを返せなかった事を謝っている・・・そういう風に見えるわ」
と、ミウは思った。
「それに・・・わたしが月の写真を楽しみにしてるって言葉・・・彼は覚えていたんだ・・・わたしの言葉が彼の胸にあった・・・それって嬉しい事よね」
と、ミウは感じる。
自分の言葉が誰かの胸に残っていて・・・その言葉の為に男性が行動してくれる・・・そのことがすごく嬉しいミウだった。
「この男性は・・・信用出来る・・・信頼出来る男性だわ・・・」
と、ミウは感じていた。
「わたしの言葉を大切にしてくれる・・・そういう男性だわ・・・そういう男性こそ・・・」
と、ミウは笑顔になりながら、その言葉を反芻した。
「2つ目のコメントは・・・わたしに興味を持ったって、ことでしょう?わたしに食いついたって事?わかりやすい・・・シンプルな男性なのかも」
と、ミウは笑顔でそのコメントを読む。
「まだ、幼い感じがあるわね・・・年下の幼いところがある男性・・・思ったことをシンプルに言える・・・正直な男性・・・それがニコラくんね」
と、ミウは笑顔でそのコメントを楽しんでいる。
「そっか・・・いろいろな事がわかったわ・・・大事なことは・・・ニコラは、私に興味を持った・・・シンプルな言葉で、わたしに向かってきている・・・そういうこと」
と、ミウは理解した。
「だったら・・・ニコラと電話で話せる仲に・・・なる事も不可能じゃ、ないわね」
と、ミウは結論づけた。
「明日の朝、コメントを書こう・・・今日は酔ってるし・・・相手が求めている時は、少し引く・・・そうすれば、もう少し、相手の本音が引き出せるかも、よね」
と、ミウは年上の女性らしく、恋のかけひきに、少しだけ賢いところを見せる。
ミウはグラスいっぱいに白ワインを注いだ・・・それを笑顔で飲み干し、もう一度、ニコラの書いたコメント読み返す。
「私の為に、男が出した言葉・・・いつ見ても嬉しい・・・わたしに興味がある・・・そういう男性が好き・・・」
と、ミウは言葉にして・・・思い切りの笑顔になる・・・。
「これが、恋の始まり、かも・・・」
ミウは言葉にした・・・。
ミウはいい気分のまま、パソコンを立ち下げ、眠りに落ちる。
笑顔のミウは、気持ちよく眠りについていた。
ミウは今、しあわせだった。
火曜日の朝方、午前4時を過ぎたあたり・・・。
サトルの携帯に電話がかかってきた。
「はい・・・もしもし・・・」
とサトルが半分眠りながら、電話に出ると、
「鈴木、メインフレームの調子がおかしい。CPUの負荷が200%に上がったままなんだ。他の処理にも影響が出始めている・・・対応してくれないか?」
と、関空現地の主任システムエンジニア、多岐川からのエマージェンシーコールだった。
「わかりました。会社には10分でいきますから、すぐ折り返し、連絡いれます」
と、サトルはしゃっきりしながら、服を着替え、しゃっきりして、部屋を出て行った。
(つづく)
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と、カズキに言われた・・・その言葉が耳元にまだ残っていたサトルだった。
月曜日の夜、独身寮に帰ると、サトルはシャワーを浴び、缶ビールを買って部屋に戻った。
パソコンを立ち上げ・・・今後どうするか、考えていた。
「エマさんと、メールをやりあえる間柄か・・・どういう理由をつけて・・・それを相手に納得させるか・・・だよな・・・」
と、サトルは難しい難題を与えられたサルのように考えていた。
「こういうの・・・苦手なんだよな・・・だいたい、僕は相手に考えてもらう方が得意だし・・・」
と、サトルは、頭を抱えていた・・・。
「うーん・・・要は相手が僕とメールしたいって、思わせることが先決ってことかな・・・」
と、とりあえず考えてみる、サトルだった。
「で、それって、どうしたらいいの?・・・わっからないよ・・・」
と、頭を抱えるサトルだった。
「えーと、とりあえず、わかってることを整理するか・・・とりあえず、わかってることは・・・」
と、ビールを飲みながら、ノートを開いたサトルは・・・ノートにボールペンで文字を書いていく。
「エマさんが、僕のブログの写真に食いついた事・・・これだけは確かだな」
と、サトルは言葉にし、ノートに書いてみる。
「そうか・・・食いついたのは、エマさんの方なんだ・・・」
と、サトルは改めて言葉にする。
「うーん、ということは・・・弱みはエマさんの方にあって、強みは、僕の方にあるってこと?」
と、サトルはノートにボールペンで言葉を書きながら、自問自答している。
「その強みを活かして交渉していけば・・・いいってことなのかなー」
と、サトルは頭の中を????にしながら、言葉にしている。
「こういうの・・・苦手なんだよなー。シンプルに言葉にする方が楽だし・・・」
と、サトルは言葉にしている。
「にしても・・・何事も経験かー・・・ミクが言ってたな」
と、サトルはミクの言葉を思い出す。
「サトルは・・・相手の気持ちを考えて行動するのが、苦手なようね・・・でも、それが出来るようになると、相手の笑顔も増えるわよ」
と、ミクは言ってくれた。あれは逗子海岸で、二人で海を見ていた時だった。
「僕はまだ、子供だ・・・ミクに比べれば、全然なんの経験もしていないし・・・」
と、サトルが言うと、
「それは素敵な事でもあるのよ・・・わたしは・・・いろいろな事があった・・・サトルに今は言えないような事も経験してるの。でも、時期が来たら、もちろん、言うわ」
と、ミクはそんな風に話した。
「僕に、今は言えない事・・・そんな経験したの?ミク」
と、サトルが言う。
「順番よ。私もいろいろ考えて行動しているの・・・わたしが考えて・・・サトルに言っていいい日が来たら、ちゃんと言うから・・・それまで待ってて」
と、ミクは笑顔で言った。
「うん・・・まあ、ミクがその・・・僕の成長を見ていてくれて・・・いろいろ考えてくれてるのは、わかってるから・・・その時を待つよ」
と、サトルは言葉にする。
「ごめんね。ありがとう・・・サトルは、そういう素直なところが、本当の宝物だわ」
と、ミクは笑顔で言った。
「そんなこともあったな・・・」
と、サトルは遠い思い出に・・・なんとなく納得していた。
「そうか・・・カズキさんが言ってたっけ・・・エマさんは、僕の肩甲骨の写真に食いついた・・・ミカさんの意見だけど」
と、サトルは考える。
「となれば・・・要は同じモノが好き同士って、ことかな・・・」
と、サトルは考える。
「美しい肩甲骨や、プリっとした筋肉が光るお尻や、綺麗なラインの出ている、腰からヒップへのボディライン・・・そういうのが好きってこと、だよね?」
と、サトルは考える。
「そこに食いついたのなら・・・食いついたのなら?・・・あれ、そっからどう考えればいいんだろ?」
と、サトルは少しよくわからない。
「ま、今日のところは、エマさんに向けて、とりあえず、もうひとつコメントを出しておこう・・・」
と、サトルはどう書こうか悩む・・・。
「そう言えば、エマさんは、月の美しく見える街に住んでいるんですよね?どんな街なんですか?興味があります//ニコラ」
と、コメントを書いたサトルは、
「ま、僕がエマさんに興味を持った・・・ということを伝えれば・・・どうにか、なるだろう・・・」
と、あまり女性を口説いたことの無いサトルだった。
「どっちかって言うと、ただストレートなだけだもんな。僕って・・・」
と、サトルは言葉にする。
高校時代に初めて女の子と、つきあって・・・その子とはキス止まりだったけれど、大学時代、同じテニスサークルの女子と恋人同士となって、
初めてエッチも経験したけど・・・就職してすぐに別れていた。
「だから、女性の事、あんまり理解していないんだよな、僕・・・」
そして、次につきあったのが、4歳年上のミクだった・・・。
「確かに、僕・・・年上の方が圧倒的に楽かもしれない・・・大学時代、年下の女の子リードするの・・・結構大変だったし」
と、その頃を思い出す、サトルだった。
「なんで、おんなごころがわからないのよ!」
といきなりキレられて、物を投げつけられたこともあった。
「確かに・・・そういうところ、僕は、鈍感なのかもしれないな・・・」
と、サトルは思っていた。
「エマさんとメールでやりとり・・・主任になったら、平日だって時間取れるか、わからないぜ・・・人生のピンチだ、確実に・・・」
と、サトルは言葉にしていた。
「まあいい・・・今日出来ることは、これだけだ・・・えーと、あとは・・・サークル仲間にメールでもしておくか」
と、サトルはメールをさらさらと書くと、推敲して、送信した。ものの5分とかからなかった。
「しかし、メールだけは、俺早いんだよな・・・文章書くの得意だし、大好きだし・・・これが俺の仕事になったら、どんなに良いことか・・・」
と、思いながら、サトルはパソコンを立ち下げ、ビールを飲んで寝てしまった。
同じ頃、ミウは「カーペンターズ」を聞きながら、白ワインを飲んでいた・・・月夜野の街の真実を知り、自分がどういう目で見られていたかも知ったミウは、
少しショックだった。
「皆、考えることは同じ・・・・そういうことね・・・」
と、ミウは思った・・・自分の黒い闇・・・それは・・・決して語りたくない闇だった。
「でも、考えてみたら・・・皆わたしを白い目で見てるって現実があるってことじゃない・・・言っても言わなくても、どうせ同じってことじゃない・・・」
と、ミウは愚痴った。
誰かに話を聞いてもらいたかった。
「ユカに電話かける?愚痴を聞いてもらう・・・ううん。この時間は編集者にとっては仕事のメインの時間だもの・・・かけるわけにはいかないわ・・・」
と、ミウは思い留まった。
「こんな時に彼氏がいてくれたら・・・愚痴を聞いてもらうくらい・・・でも、無理だわ・・・だってあの話、彼氏になるような人に言えないもの・・・」
と、ミウは言った。
「人生って、こういうものだった?いつもそう・・・夢を持って歩き出そうとすると・・・壁にぶち当たる・・・もう何回そういう壁にぶつかってきたのかしら、わたし」
と、ミウは言葉にする。
「ふふ・・・いいわ。ニコラくん・・・あの肩甲骨の美しい年下のスポーツマン・・・彼と電話でしゃべれる間柄になりたいわ・・・」
と、ミウは思う。
「できれば・・・ねー・・・」
と、ミウは言葉にする。
「そうなれないかしら・・・わたしの愚痴聞いてくれるだけでもいい・・・それだけでも・・・日々が潤うわ」
と、ミウは言葉にする。
と、ミウは思い出したようにパソコンを立ち上げる・・・今日はまだニコラのブログを見ていなかった事に気づいた。
ミウはニコラのブログを見る・・・コメントが・・・ニコラのコメントが珍しいことに2つもあった。
「やっと今、その月の写真をアップしました。その月を見ながら缶ビールを飲んでいたら、酔っ払ってしまって、だから、アップが今日になったんです(笑)//ニコラ」
「そう言えば、エマさんは、月の美しく見える街に住んでいるんですよね?どんな街なんですか?興味があります//ニコラ」
ミウは、ニコラのくれた2つのコメントに、つい、嬉しくなっていた。
白ワインをグラスに注ぎ、ぐっと飲み干す。いっぱいの笑顔になる。しあわせな瞬間だった。
「この男性・・・すごく繊細で、やさしい・・・」
と、ミウは感じていた。
「多分・・・最初のコメントは、土曜日にコメントを返せなかった事を謝っている・・・そういう風に見えるわ」
と、ミウは思った。
「それに・・・わたしが月の写真を楽しみにしてるって言葉・・・彼は覚えていたんだ・・・わたしの言葉が彼の胸にあった・・・それって嬉しい事よね」
と、ミウは感じる。
自分の言葉が誰かの胸に残っていて・・・その言葉の為に男性が行動してくれる・・・そのことがすごく嬉しいミウだった。
「この男性は・・・信用出来る・・・信頼出来る男性だわ・・・」
と、ミウは感じていた。
「わたしの言葉を大切にしてくれる・・・そういう男性だわ・・・そういう男性こそ・・・」
と、ミウは笑顔になりながら、その言葉を反芻した。
「2つ目のコメントは・・・わたしに興味を持ったって、ことでしょう?わたしに食いついたって事?わかりやすい・・・シンプルな男性なのかも」
と、ミウは笑顔でそのコメントを読む。
「まだ、幼い感じがあるわね・・・年下の幼いところがある男性・・・思ったことをシンプルに言える・・・正直な男性・・・それがニコラくんね」
と、ミウは笑顔でそのコメントを楽しんでいる。
「そっか・・・いろいろな事がわかったわ・・・大事なことは・・・ニコラは、私に興味を持った・・・シンプルな言葉で、わたしに向かってきている・・・そういうこと」
と、ミウは理解した。
「だったら・・・ニコラと電話で話せる仲に・・・なる事も不可能じゃ、ないわね」
と、ミウは結論づけた。
「明日の朝、コメントを書こう・・・今日は酔ってるし・・・相手が求めている時は、少し引く・・・そうすれば、もう少し、相手の本音が引き出せるかも、よね」
と、ミウは年上の女性らしく、恋のかけひきに、少しだけ賢いところを見せる。
ミウはグラスいっぱいに白ワインを注いだ・・・それを笑顔で飲み干し、もう一度、ニコラの書いたコメント読み返す。
「私の為に、男が出した言葉・・・いつ見ても嬉しい・・・わたしに興味がある・・・そういう男性が好き・・・」
と、ミウは言葉にして・・・思い切りの笑顔になる・・・。
「これが、恋の始まり、かも・・・」
ミウは言葉にした・・・。
ミウはいい気分のまま、パソコンを立ち下げ、眠りに落ちる。
笑顔のミウは、気持ちよく眠りについていた。
ミウは今、しあわせだった。
火曜日の朝方、午前4時を過ぎたあたり・・・。
サトルの携帯に電話がかかってきた。
「はい・・・もしもし・・・」
とサトルが半分眠りながら、電話に出ると、
「鈴木、メインフレームの調子がおかしい。CPUの負荷が200%に上がったままなんだ。他の処理にも影響が出始めている・・・対応してくれないか?」
と、関空現地の主任システムエンジニア、多岐川からのエマージェンシーコールだった。
「わかりました。会社には10分でいきますから、すぐ折り返し、連絡いれます」
と、サトルはしゃっきりしながら、服を着替え、しゃっきりして、部屋を出て行った。
(つづく)
→主要登場人物へ
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