趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『幸福論』 吉本隆明

2012年04月05日 | 
吉本隆明さん、まだ続いています。

この本は吉本さん76歳の時の口述をまとめたもので、2001年出版されています。


検索していて知ったのですが、10年後の2011年に、
同じ出版社から『老いの幸福論』として新書版で出版されています。


 逃れられない不安とどう向き合うか。
 老いや死への不安、自己への焦り、
 人生のさまざまな悩みに対して行き着いた答えとは。

「死の恐怖はあるのが当たり前」
「老人というのは心身両面が慢性的なうつ病ということです」
これらはもうお馴染みの老齢期についての述懐なのですが、
何度読んでもほっとするというか、ああ、そうなんだなと思ってしまいます。

自ら老いていく様を厳しく見つめながら、あれこれ実験を試みながら、
考えを深めていかれるのがよく分かるのです。
これまで読んできた本と内容が重なる部分も多いのですが、
微妙に出版年が違う事から、少しずつ吉本さんの変化が見て取れます。

また本書には、我が子が犯罪者となってしまったら、と
我が子が犯罪に巻き込まれてしまったら、という重いテーマで
‘親’というものについても率直に語られています。
こんなに真摯に、率直に語られた物を初めて読みました。

そして、奥様との結婚のいきさつについても。
以前読んだ『超恋愛論』でも少し触れられていたので、
何となく想像はしていたのですが・・・。

自らの体験や体得してきたことから生まれ出る言葉の数々は、
とても説得力があり、読む者に勇気をくれる気がします。
語り口は読みやすいと感じられるので、若い人にもおすすめです。。