蟋蟀庵便り

山野草、旅、昆虫、日常のつれづれなどに関するミニエッセイ。

旅へ

2011年09月29日 | つれづれに

 2年振りのアメリカへの旅立ちまで、あと2週間。スーツケースを開き、そろそろパッキングの準備に掛るタイミングとなった。

 毎回、山のようなお土産でスーツケースを重たくしてしまう。前回は手荷物の制限重量を超え、お情けで超過料金を免除してもらったことに懲りて、お土産の先送りを郵便局に持っていった。2個口の小包の重量22キロ!送料31,000円に苦笑いする。これだけで、一人分の手荷物重量オーバーである。「ダイビングで担ぐ重さに近いのかな?」と呟きながら「これが、親心の重さだよ」と自己弁護して、近付いた娘との再会を想う。
 「何?この判じ物みたいなお土産の山!」と呆れ、笑いながらも喜ぶ娘夫婦の顔が彷彿する。今回はダイビング用具(マスク、ブーツ、フィン、グローブ、シュノーケルなど)を持っていかない分と合わせ、手荷物はいつもの半分になるだろう…多分。フォーマルの要らないカジュアルなカリフォルニアだから、衣類も少なくていい。

 A4サイズ1枚の味気ないEチケットも受取った(昔の何ページもの航空券がチョッピリ懐かしい)。インターネットでアメリカ大使館のホームページにはいって、ESTA(Electronic System for Travel Authorization 渡航認証許可番号)も取得した。このブログを書き終わったら、筑紫野警察署に国際運転免許証を受取りに行く。こうして、手馴れた旅立ちの準備が着々と整っていく。

 10月12日、福岡空港から成田に飛んで、夕方の便でロスに向かう。着くのはその日のお昼前。いつもながら面白い時差のイタズラである。往路10時間、復路は季節柄強い偏西風に逆らって飛ぶから12時間。何度飛んでも、エコノミー・シートの空の旅は長いが、時差ぼけを一気に解消する為に、眠らずに映画を5本見て耐える。10年前には往復8万円だった。5,000円追加したら、ロスのホテルに1泊して、ガイド付きの半日観光までセットされた。
 2年前には15万円となり、今回は燃油サーチャージという不可解なものがドーンと乗って約20万!だから、「折角高い航空運賃使って行くのなら」と、41日間の滞在とした。それでも2年前の2ヶ月にくらべると、アッという間に過ぎる娘との生活である。帰り着いた頃には、太宰府はもう木枯らしの先駆けが吹き始めていることだろう。

 9月も終わろうとしているのに、相変わらず残暑の居座りは厳しく、湿気を伴った30度の暑い日々が続く。もう暑さには倦んだ。充分過ぎるほど、暑さに叩かれた。庭先で鳴き騒いでいたツクツクボウシの鳴き声もいつしか遠くなり、石穴稲荷の鎮守の森から風に乗って微かに数匹の声が届くばかりである。代わりにシジュウカラが山から下りてきて、ツツピン、ツツピンと空気を弾く。
 ハナミズキの落ち葉が日ごと数を増し、朝夕の落ち葉掃きの秋の日課が戻ってきた。20本ほど立っていた白いヒガンバナもそろそろ終わり、シロバナホトトギスがたくさんの花を並べている。戻り残暑に一時声を潜めていたコオロギの声が盛り返し、夜毎蟋蟀庵を濃密に包み込む。今年最後の月下美人が4輪の蕾を垂らしている。やがて頭を擡げ、儚く、それでいて限りなく豪華なひと夜限りの花を開くのは、2年前と同じく旅立ちの頃だろうか。
 八朔の葉裏に空蝉がひとつ。この夏幾度も命誕生の感動を見せてくれた名残は少し寂しいけれども、シッカリとしがみ付く姿は、どこか健気でさえある。さよなら、夏。明日からのひと雨で、来週以降の気温は一気に22度まで下がるという。遅れて来た秋は、今年もきっと韋駄天走りに違いない。

 そして今、庭の隅々に幾本もの赤い小花を連ねるミズヒキソウを、雨がしめやかに叩き始めた。
               (2011年9月:写真:白いヒガンバナ)

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2 コメント

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再会 (kasumi)
2011-09-29 21:02:12
こんばんは。愈愈、二年ぶりのアメリカですね。良いですね~・・・
コチラは一年半ぶりぐらいに次女が日本にきます。ただし、滞在は月光仮面並です。♪疾風のように現れて嵐のように去ってゆく♪だったかな???:)

又、楽しいアメリカ滞在話聞かせてくださいね。
私ももう一度ぐらいは行ってみたいけど・・・hmm...



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帰心、矢の如し (蟋蟀庵ご隠居)
2011-09-30 09:18:21
hasumi さん

 お嬢様にとっては、故郷・日本への帰心、第2の故郷への帰心、いずれも「矢の如し」なのでしょう。疾風のように来たり、去っても、帰ってきてくれる優しさをよしとしましょう。我が家の娘も、ロスから成田に着いた途端、逆ホームシックにかかると言います。

 それでも帰りたい、会いに行きたいと思うのが親心子心、。我が家が、そして娘の家が、いつまでもそんな存在でありたいと思っています。
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