ゴルゴ13シリーズには、主役級の名脇役が登場する。
なかでも、『すべて人民のもの(第277話)』発表1988年5月に登場する
狂言廻し役の調査員「ブライアン・フェイス」が私のお気に入り。
ゴルバチョフのソ連、ロマノフ家の遺産を管理・運営していた
スイス・ジュネーブのヒューラー商会に
「ニコライ・シュヴァイツェル陸軍大佐」(本名ニコライ・セルゲヴィチ・ロマノフ)が
正式な遺産相続人として現れる…
ヒューラー商会は、フェイスに、もう一人いるはずの遺産相続人捜索を依頼する。
ソ連最強の暗殺者でもあるニコライは、フェイスをマークするんだが…
どこからも依頼を受けていない筈のデューク東郷・ゴルゴ13もまた
フェイスをマークする。
そして、有能なフェイスは気づいてしまう。
歴史上存在しないことになっている
ロマノフ家第5皇女に逢いに行くフェイスをニコライが追うが…
この段階で、
ゴルバチョフはKGBを通じてニコライ暗殺をゴルゴに依頼していた。
フェイスに語り終え、彼を送ったかつての第5皇女は
ある種の超能力で、ニコライが近くに来ていることを察する。
まさに、母親殺しをしようとした瞬間、
ニコライは、ゴルゴが狙撃態勢に入っていることを察し、暗殺を中断。
森の中に逃げ込むが、ゴルゴの「よみ撃ち」に倒れる…
その銃声に、
「グレゴリー・皇士・東郷=ロマノフ」の母である第5皇女は、
「すべて」を理解する。
フェイスは、ゴルゴの出生の秘密?に迫ったにも関わらず生き残り
物語を締めくくる大役も果たしている。
いやぁ~、さすが「ゴルゴ出生譚」人気No.1作品。
このフェイス、偶然、ゴルゴに邂逅してしまうのだが…
ゴルゴ・シリーズに3回程度登場する
ジャーナリストでゴルゴ研究家「マンディ・ワシントン」に比べて
キャラクター的にゴルゴに近い気がするのだ。
経歴・腕は抜群、語学の天才。
組織の中では生きていけないという「己」をよく知り、
結局は、フリーランスの道を選ぶ。
日本という社会では、「組織」を外れたら生きていけない!という妄想が
幼少時から刷り込まれる。
組織の力学に汲々とし、
自分が何を目指していたのかさえ思い出せなくなっては、オシマイである。