◆撮影:2014年8月17日、大石山の家にて
2014年7月24日(木)
『蝉の声』
<憧れのクマゼミ>
「蝉の鳴声がよく聞こえる」と先日、上さんが言った。そのときに僕が返した言葉は「僕等が子供の頃と比して、その様子に相当の変化があるよね」「夏が始まったころ、先ずはニイニイゼミから鳴き始め、次はアブラゼミ、そして盛夏になって初めてクマゼミが鳴き始めたように思う」であった。
今はクマゼミの声ばかりだ。時折アブラゼミの声が聞こえたりもするが、ニイニイゼミの鳴声は皆無だ。もっとも僕の耳鳴りの所為で聞こえるニイニイゼミの声はあるのだが。
僕達が子供であった半世紀前の気候が、現在のそれと比して如何であったのか僕には分からないが、今は気温がかなり上昇しているのだろう。その影響で蝉の生態系にも変化が生じているのかも知れない。クマゼミと比して相当身体が小さいニイニイゼミは、平均気温の上昇に耐えられなかったのかも知れない。
半世紀前、僕達小学生にとってクマゼミは憧れの的であった。ニイニイゼミやアブラゼミは低い処に停まって居るのだが、クマゼミは今のように低いところに停まってはくれなかった。神社の境内の鬱蒼と茂る高木(欅?)の、それも高い処で鳴くのが一般的で、市販されている一本の採集網ではけっして届くことはない。竿をつないで紐でしっかりと括って長く伸ばさなければ届かなかった。中には網ではなく竿先にトリモチを付けて捕る者も居た。その方が、樹木の枝葉の間隙をすり抜け網のように音をたてることなく上手く蝉に届くからだが、僕はトリモチを使用することはなかった。蝉翅にトリモチが一旦くっ付いてしまうと蝉は二度と飛べなくなってしまう。そのころ僕達の殆どの者が、捕獲した蝉を暫くしたら逃がしてやるのが常であったからだ。また、夏が終わろうとするころに鳴き始めるのがツクツクボウシで、ツクツクボウシはクマゼミよりも小型で、クマゼミと同じ透明の翅を所有し少し緑がかった綺麗な体を持つ美しい蝉であった。しかし、すばしっこいので捕獲することが難しかったのを覚えている。