藤原弘達・創価学会を斬る 41年目の検証 言論出版の自由を守る会編
(日新報道 2012/2)
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◆ 宗教団体への便宜供与は憲法違反
では、この便宜供与の要請を受けた外務省はどう動いたか。池田氏の「香港並びにアセアン3ケ国」訪問の模様を報じる「聖教新聞1を検証すると、池田氏が訪問した香港、タイ、マレーシア、シンガポールすべての国で、公使、総領事が出迎え、見送りを行い、大使が池田氏が出席する諸行事に出席しているのである。税関のフリーパスという便宜供与がなされたことは疑いようがない。
実際、この時にクアラルンプールで池田氏の出迎え、見送りを行った橋本宏公使は、後に「週刊新潮」のインタビューで次のように、便宜供与の事実を認めるとともに、池田氏に対する便宜供与は問題ないと次のように話している。
「池田氏はあの時、空港に着くなり別室に通され、そこから直接入国しています。いわゆる特別通関です。池田氏の来訪は文化交流が目的だったし、マレーシアの政府機関も関わっていたので私どもの出迎えはむしろ当然だったと思いますよ。あの当時は、池田氏の外遊には在外公館の次席級が出迎えることになっていました。閣僚級に次ぐランクですよ。文化交流なら宗教団体でも外務省が便宜をはかっても問題はないと思います」(平成8年5月16日号)
だが、池田氏の外遊の目的は、「文化交流」だけではない。「世界平和文化祭」はSGIの行事だし、渡航先の国々で現地の学会員に対しての信仰指導など宗教活動も行っている。また、池田氏の渡航先での動静を「聖教新聞」で大々的に報じ池田氏の箔付け、イメージアップに利用。新たな会員獲得のためのPRとして活用している。外務省が池田氏に便宜供与を行い、特別扱いすることは、特定宗教団体である創価学会のPR、勢力拡大に寄与、協力していることになるのである。
周知のように「信教の自由」と「政教分離」の原則を定める憲法に20条には、「いかなる宗教団体も国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とあり、特定の宗教団体が国から特権を受けてはならないと規定している。この条文を国の立場から読むならば、国は特定の宗教団体に特権を与えてはならないということである。外務省の池田氏に対する便宜供与は、この憲法の規定に明らかに違反する。
しかも中平大使が出席しているマレーシアのクアラルンプールで行われた合同公演とは、創価学会の文化部門を担当する傘下財団法人の民音主催の芸能公演。要するに創価学会の主催する公演なのだが、これに日本大使館が共催者として名を連ねている。仮にこの公演に公金が支出されていた場合には、「宗教上の組織もしくは団体」に対する公金の支出を禁じた憲法89条違反の可能性がある。
◆ 皇族と同格、最高ランクのAA扱いが発覚
ところで、橋本公使は池田氏に対する便宜供与の待遇を「閣僚級に次ぐランク」と発言しているが、実は、外務省の便宜供与には、最高ランクのAAから最低ランクのTTXXで6段階の取り扱い基準があることが、平成14年に民主党の前田雄吉衆議院議員が外務省に対し行った資料請求の結果、明らかとなった。
それによると、最高ランクのAAの対象は皇族、総理、国務大臣、衆・参両院議長、最高裁判所長官、特派大使、前・元総理で、便宜供与の内容は、--
・公館長自身が送迎、現地事情説明等を行う。
・時宜に応じ、公館長自身が訪問先への同行、案内等を行う。
・必要に応じ、館員が通訳を行う。
となっている。では、橋本公使が「閣僚級に次ぐランク」と発言している池田氏に対する便宜供与。外務省の便宜供与取り扱い基準によればAAに該当すると思われるランクの便宜供与の対象と内容を見てみよう。AAランクの対象は、衆・参両院副議長、衆・参両院正式派遣議員団、党公式派遣議員団、各省庁副大臣、大臣政務官、衆参両院常任委員会委員長、最高裁判事、都道府県知事、民間経済四団体の長などであり、便宜供与の内容は以下のようになっている。
・送迎については、大使館では官庁代理、総領事館では館長が行う。
・公館長又は館長代理が現地事情説明、訪問先同行、案内等を行う。
・必要に応じ、館員が通訳を行う。
たしかに池田氏の送迎は、公使や総領事であり橋本氏の発言を裏付けている。それにしても本来、一宗教団体の長とはいっても、代表役員でも会長でもない名誉会長に過ぎない池田氏を、衆・参両院の副議長や都道府県知事と同格に扱っていいものなのだろうか。しかも、その後の池田氏の外遊の際の送迎をみるとこの待遇がグレードアップしていることが分かる。
というのも、例えば池田氏は、平成元年5月から6月にかけてヨーロッバ諸国を歴訪しているが、その際には、各国駐在の大使が送迎を行っているからである。この時のヨーロッパ訪問では、スウェーデンの野村大使やジュネーブ在住日本政府代表部の波多野大使、フランスの木内大使などが出迎えや見送りを行っている。在外公館長の大使が送迎を行うのは、先の外務省の便宜供与マニュアルによれぱAAランクで、皇族、総理、衆参両院議長、最高裁長官などが対象となっている。
この事実は池田氏が皇族や三権の長と同じ待遇の便宜供与を受けていたことを示している。しかもジュネーブでは日本政府代表部の波多野大使が、池田氏の「人道賞」受賞を祝賀するレセプションまで開催しているのである。
昭和40年に池田氏は、「私は、日本の国主であり、大統領であり、精神界の王者であり、思想文化一切の指導者・最高権力者である」と発言しているが、外務省はまさに国主なみの便宜供与を行っていたのである。
こうした便宜供与の事実は、平成4年のヨーロッパ、中東訪問、平成5年の北・南米訪問でも確認することができる。ちなみにコロンビアで池田氏を送迎し、勲章の授与式に陪席した高野博師臨時代理大使とは、「大鳳会」の一員で、この2年後の平成7年には公明党候補として参議院埼玉選挙区から立候補して当選。参議院法務委員長などを歴任した人物である(平成19年参院選で落選。平成23年10月に野田政権が内閣参与へ登用しヨうとする動きがあった)。
こうした池田氏に対する便宜供与は、公明党が非自民連立政権に参画以来、公明党の政権参画を批判した自民党議員らが国会で問題にしたため、平成6年以降、創価学会は外務省に対する便宜供与の要求を自粛している。
だが、外務省が憲法上問題のある特定の宗教団体の長である池田氏に対して、数年前まで特別通関等の便宜供与を行っていたことはまぎれもない事実である。
こうした外務省と創価学会の関係について、外務省に池田氏の外遊便宜供与の資料を請求した前田代議士は平成14年当時、次のように批判している。
「先日、私は外務委員会の席上、大鳳会などの外圧、内圧によって日本の外交が歪められることがあってはならないと質しました。今回、外務省に池田大作氏の外遊についての便宜供与の資料を請求したのも、外交官には外交本来の仕事に精励してもらいたいからです。外交官に池田大作氏や創価学会に便宜供与をしている暇はないはずです。外務省は創価学会と癒着してはならない外務省官僚をはじめ、公務員は憲法15条で「特定の奉仕者」ではなく「全体の奉仕者」でなくてはならないと規定されている。また、繰り返しになるが憲法に20条は、「いかなる宗教団体も国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と、明確に政教分離を定めている。
だが、実際にはこれらの憲法条文は創価学会の横車によってないがしろにされてきた。外務省が池田氏に対して皇族や三権の長と同格の便宜供与を与えていた事実は、そうした日本の政治と宗教、国家と宗教のいい加減で杜撰な実態を象徴する一事なのである。
---------(197P)-------つづく--