藤原弘達・創価学会を斬る 41年目の検証 言論出版の自由を守る会編
(日新報道 2012/2)
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◆ 不明朗な会計処理
平成一九年六月、公明党を「全体主義的」と批判して離党(創価学会・公明党は除名処分)した福本潤一元参院議員が指摘した、いわゆるP献金に言及したのは、民主党の松野信夫参院議員。
松野議員は不透明な公明党議員の献金問題についてこう質した。
「公明党議員は、選挙に出る際、党に公認料を払うと聞きました。創価学会の記念日などには、お金を集めて出すこともあるとか、その実態についてお聞かせ願いたい」
これに対して矢野氏は、竹入・矢野時代、池田大作氏の誕生日などに金品を贈った事実を認めた上で、その会計処理が池田氏の収入として処理されているのか、あるいは創価学会の収入として処理されているかは、創価学会に聞いて欲しいと次のように発言した。
「竹入さんが委員長当時、池田名誉会長の御誕生日に『お祝いを持っていこう』と。国会議員全員だったことも、中央執行委員だけだったこともある。それから、創価学会の日、あるいは選挙で当選したお礼などにお金を贈ったこともある。夏、軽井沢へ名誉会長がいらっしゃると、竹入さんは牛肉や野菜を保冷車に入れて運んでいた」
「ただこれは勘違いされては困るんですが、本当に感謝の気持ちから名誉会長にお祝いを納めていました。それが学会本部の収入となっておるのか。あるいは名誉会長個人の収入として、納税の手続きを取っておられるのか。本人から『ありがとう』とご返事もいただいており、こちらは個人に対してお贈りしているが、会計処理については創価学会に聞いてもらうしかございません」
平成19年10月16日の参院予算委員会で、民主党の石井一副代表は、福本元参院議員の当選時に六〇〇万円を上納したとの発言に基づき、国会でいわゆるP献金などの公明党議員の献金問題について質問した。これに対して公明党の冬柴鉄三国交相は、「公認料」と答弁した。ところが平成20年11月15日に行われた衆院予算委員会での民主党,松木謙公代議士の質問に対して冬柴国交相は、自らの「選挙費用」だったと答弁を訂正している。この不可解な答弁の変更や矢野氏が指摘する会計処理の問題などを含め、不透明な公明党議員の上納金や(P献金の実態については、国会で真相の究明を図る必要が急務だ。税制の抜本的な議論が不可欠になっている今日公益法人に対する優遇税制のあり方などを議論するためにも、同問題は看過できない重大問題だと言えよう。
◆ 学会本部を守るための静穏規制
この後、質問に立った民主党の中村哲治参議院議員は、創価学会本部のある東京都新宿区信濃町周辺が、静穏を保持する法律によって「静穩地帯」に指定されている理由を質問したが、これに対する矢野氏の発言は、公明党が創価学会を守るための番犬であるという、公明党の本質を赤裸々に示すものとして注目を集めた。
まず矢野氏は静穏の保持に関する法律が制定された経緯と背景を説明。その中で、創価学会本部を街宣活動から守るために、学会本部を公明党本部周辺として静穏保持の規制がかかるように線引きしたと、創価学会のために特別の便宜を図った経緯を次のように明かした。
「消費税国会の頃の88年、ソ連大使館周辺で街宣活動が盛んに行われ、政府に苦情がきた。そこで政府は、大使館に対する街頭宣伝の規制をすることとなった。その折、学会本部に対しても、毎日のように街宣活動が続いており、私は学会本部から『なんとかせい』と言われていたのです。
そこで私が、自民党の幹事長だった安倍晋太郎さんらに、政党本部周辺も規制しようと持ちかけ、政党本部も規制対象とすることにした。その際に学会本部を公明党本部の周辺地帯に入るよう線引きして、学会本部も静穏地帯に入るようにしたのです」
しかもこの静穏規制を維持するために、公明党は新進党への合流問題で、当初の約束を反故にしたと矢野氏は指摘する。平成六年に発足した新進党へ、公明党は当初、全国会議員が合流することとなっていた。ところが公明党の国会議員全員が新進党に合流すると、地方議員を主体とする公明は政党要件を満たさなくなり、公明党本部への静穏保持の法律の適用が消滅し、創価学会本部に静穏規制のメリットが及ばなくなってしまう。このため矢野氏が藤井富雄公明代表にアドバイスして、国会議員全員を合流させるという当初の約束を反故にして、公明党の参議院議員の半数を公明として残すことにしたというのである。
静穏保持の法律を制定するに際して、創価学会本部を公明党本部周辺に含めるよう線引きした事実、また静穏保持規制を維持するために公明党国会議員の新進党への合流を改変した事実を、当事者である公明党の元委員長が告白したことは、公明党が創価学会を守るために存在している事実を示す重大な証言と言えよう。
矢野氏は、この他にも、平成2年から3年にかけて国税当局が創価学会に税務調査に人った際、創価学会の要請、しかも池田大作名誉会長からのたっての依頼を受けて、創価学会の言い分を国税当局に「陳情(妨害)」した事実を明らかにしている。こうした工作が、宗教による政治介入・過度な政治的要求であることは自明の理。国会で実態的な政教分離に関する議論が行われる必要があることは明らかだが、その際には、創価学会・公明党の裏・表に精通し、自らさまざまな政治工作に関わつた事実を公表している矢野氏の国会招致が不可欠である。
◆ 池田国会招致が必要不可欠
この国会招致問題ついて矢野氏は、会合の席上、国会が参考人もしくは証人として矢野氏を招致した場合、「喜んで出席する」と発言。すでに民主党は、平成19年10月に石井副代表が参院予算委員会で、創価学会の池田名誉会長と福本元公明党参院議員の国会招致を要求しているだけに、今後は、矢野氏と池田氏の国会招致が政治日程にのぼる可能性も否定できない。
実際、石井副代表は、マスコミの取材に答えて、矢野氏と池田氏の参考人招致に言及しており、場合によつては参議院において多数決で参考人招致を決定することも視野に入れている旨、癸言している。また矢野氏の話を聞いた他の民主党議員も、「国会で矢野氏と池田氏に話を聞く機会を設けたい」と話している。それだけに秋の臨時国会では、池田・矢野両氏の参考人招致が、与野党対決の焦点になる可能性があつた。
平成20年6月25日午後、有楽町の外国特派員協会で行われた記者会見でも、矢野氏は、この国会招致問題に言及。「国会に呼ばれれば喜んで行くが、一方の意見だけでは片手落ち。反対意見を言ってもらうためには創価学会の方にも来てもらって議論をしたい」と、池田氏とそろって国会に招致されることを期待する発言を行った。
この日の記者会見での矢野氏の発言は、6月22日の衆議院第一議員会館での発言よりも、踏み込んだものとなっていた。例えば、政治工作等についても、「(創価学会に関するさまざまな問題について)党からは私、創価学会からは秋谷会長.八尋弁護士などが、1週間3回も4回も学会本部で打ち合わせを行い、情報も集め、大きな声では言えないいろんな工作、行政機関や政党への働きかけなどを行った。大分やりすぎた」などと発言。
「それで収まり教訓として、運営が改善されたのであれば意味があった」が、現在の創価学会は、矢野氏が委員長・書記長在任時とは大きく変わり、反社会的体質を強めているとの認識を披露。以下のように苦言を呈した。
「脱会する人を嫌がらせする。半ば無理やり選挙活動を強いる。半ば無理やり金を集める。反対する者は気に食わないとして、反対する者を口を極めて悪口雑言する。論争なんていうものではない。そういう団体は外国でどういう扱いを受けているのか。創価学会は危険な団体だと規定している国もあると聞いている。そうした実態を外国の特派員の方々にも知っていただきたい。
池田名誉会長が、諸外国から名誉称号をもらうのはおめでたいこと。しかし諸外国でSGIがロビー活動などを行うなかで、創価学会についての正しい情報・実態が諸外国の指導者・教育者マスコミ等に伝わっているのか。一方的情報で表彰しているのではないか。そうした人々には正しい情報を知ってもらいたいし、逆に創価学会にはそうした批判を受けて正しい団体となってもらいたい」
また創価学会が矢野氏ばかりではなく、秋谷前会長を批判している事実にも言及し、こう不决感を示した。
「昨年、公明党を離党した福本元参院議員の話によれば、矢野攻撃、秋谷前会長攻撃は今から10年も前に始まっており、プロジェクトを作る相談があったという。私は文春に記事を書いているから分かるが、なぜ秋谷さんまで攻撃するのか、驚いた。北條会長も批判されたというが、北條会長は学会のために誠心誠意働いた人。そういう人が何も知らない若い連中に悪者扱いされていることを残念に思う」
外国特派員協会の会見において矢野氏は、今後も積極的に創価学会・公明党の実態に関する情報を発信すると公言した。国会議員を対象にした会合終了後、矢野氏は筆者の取材に応じたが、その際、創価学会による言論妨害や人権侵害を厳しく批判。以下のように創価学会と徹底的に戦う姿勢を明らかにした。
「藤原弘達さんに対する創価学会の言論出版妨害の後始末に関わった私が、逆に創価学会の言論妨害を受けるとは、皮肉としかいいようがありません。しかし、言論妨害は、自由と民主主義を根底から否定するものであり、断じて許せません。また人権侵害行為を放置することもできません。今後は、時間がかかるかもしれませんが、法廷闘争をはじめとして、徹底的に戦う所存です。
それがお世話になった学会員の皆さんや、池田名誉会長に対する本当の恩返しだと思つています」
---------(154P)-------つづく--