藤原弘達・創価学会を斬る 41年目の検証 言論出版の自由を守る会編
(日新報道 2012/2)
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① 矢野元公明党委員長が国会.外国特派員協会で講演
--焦点となる矢野元委員長・池田名誉会長の国会招致/乙骨正生
平成二〇年五月一二日に、創価学会および同会の幹部ら七名を被告として、名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を東京地裁に提訴したことを明らかにした矢野絢也元公明党委員長。その矢野氏から提訴にいたる経緯や創価学会・公明党の実態についての意見を聴くための「矢野絢也さんの話を聞く会」が、同年六月一三日午前、衆議院第一議員会館で開催された。
会合の呼びかけ人は、菅直人民主党代表代行・石井一同副代表・渕上貞雄社民党副党首・亀井静香国民新党代表代行、田中康夫新党日本代表ら野党四党の首脳クラス。午前八時半から始まった会合には、鳩山由紀夫民主党幹事長・興石東同党参議院会長をはじめとする野党三党の衆参両院議員七四名が出席。矢野氏の創価学会・公明党からの造反・告発に多くの国会議員が強い関心を示していることを裏付けた。
会合ではまず呼びかけ人を代表して菅民主党代表代行と亀井国民新党代表代行が挨拶。はじめに菅氏は、矢野氏が創価学会幹部らを提訴した理由に「言論妨害」が挙げられている事実に触れ、「自由な国、民主的な国で評論活動を行っている人に、言論妨害が加えられたということが事実なら、これは由々しきこと」だと指摘。
続いて挨拶した亀井氏も、池田大作創価学会名誉会長の名前を挙げながら、矢野氏の提訴した内容が事実であるならば放置できないとして、次のような問題意識を披瀝した。
「矢野さんに対して言論封殺、あるいは基本的人権に関わるようなことがなされたということで、矢野氏が提訴をされたと新聞紙上で報じられた。もし事実なら、自由な社会においてあってはならないことであります。政治家としてもこれを放置するわけにはいかない。一方の当事者である創価学会を指導しておられる池田名誉会長は、世界の一流の方々と国際交流を行い、学会員に対しても人の不幸の上に幸せを築いてはいけないなどと指導されていると聞く。そうであれば落差が大きすぎるという感もいたしますので、事の実態はどういうことなのか、ご本人から直接、お話を聞いて、適切な対応をしなければならないということで、今日の会合になった」
この後、矢野氏が提訴にいたる理由や経緯を詳細に報告。その中で矢野氏は、「提訴は、私個人が被害を受けたことに端を発するが、創価学会は政権与党・公明党の母体であり、その人権侵害行為は私一人ではなく多くの人に及んでおり、もはや公的問題。その意味で提訴は公憤」と強調。「言論弾圧と人権侵害は民主主義社会の根幹を揺るがす重大問題であり、許すことはできない」として、今後、「時間がかかるかも知れないが、裁判で徹底的に戦っていきたい」と創価学会と戦う決意を表明した。
続いて質疑応答が行われ、最初に民主党の前田雄吉代議士が、創価学会・公明党の政教一致問題について次のように質問した。
「公明党と宗教団体としての創価学会。これが本当に政教分離といえるのか。あるいは、政教一致というべきなのか、この点についてお伺いしたい」
これに対して矢野氏は、政教分離問題を議論するには概念の定義が必要と発言。現在、創価学会・公明党は、憲法二〇条一項後段の政教分離規定の解釈について、国家の宗教に対する禁止規定とする内閣法制局の見解を金科玉条の如く振りかざし、政教一致批判の防波堤としているが、矢野氏は、「御存知の通り、最近の色々なテロ活動にしても、宗教法人が政治を揺さぶっている。宗教法人側からの政治への介入、これが政教一致になるのか、ならないのか。今後、議論されるべきだと私は思っています」と発言。
国家の宗教に対する禁止規定という側面ばかりではなく、宗教からの国家・行政・政治に対する介入という側面についての議論が必要との認識を示し、創価学会・公明党の立場とは一線を画す姿勢を明確にした。
◆ 大きな声では言えないこと
その上で矢野氏は、宗教団体の政治利用に言及。労働組合が政党を支援して組合員の権利を守ろうとするように、宗教団体も組織防衛や利害の観点から、自らの意思を政治に反映させようとするが、それが許容されるか否かは「程度の問題」だと発言し、以下のように自らが創価学会のために行ってきた様々な事件処理は、「大きな声で言え」ないものであり「やりすぎ」だったとの認識を示し注目された。
「公明党書記長として、私は学会の意を受け、いろんな問題を処理してまいりました。けしからん奴だと叱られそうですが、大きな声で言えんようなこともしてきました。学会を守るという大きな目的があつたし、真剣にそう思っていました。ですが、やった張本人が言ったら世話はないと思うんですけど、今となってはあれはやりすぎ」
矢野氏は、マスコミの取材に答えて、
・池田氏の国会証人喚問が取沙汰された言論出版妨害事件の対策や、
・創価学会と日本共産党との協定(いわゆる創共協定)の無意味化工作、
・池田氏の女性スキャンダルが問題となった月刊ペン事件での政治工作、
・創価学会への国税当局の税務調査への妨害等々
に関わつてきた事実を明らかにしているが、こうした創価学会を守るために行ったさまざまな工作等は、「やりすぎ」だったというのである。しかも矢野氏は、創価学会がこうした行為を教訓として反省し、組織の健全化を図ったのであればまだ救われるが、現状の創価学会はそうなっていないと次のように慨嘆した。
「個人的に言えば、私がやったことによって、それを教訓にして、対応が変わるんなら、まだ意義があるんです。ところが、便利なことで、まあ、ええわということにされてはたまったもんじやありません」
また政教分維に関する議論は、抽象的な議論ではなく実態に即した議論にする必要があると強調。その前提として宗教施設である創価学会の会館での選挙活動に、以下のように言及した。
「創価学会の場合、選挙期間中、常時、非課税の資金で作られている宗教施設が選挙活動の拠点になる。電話も使われる。そういったことについて、少なくとも私の時代には、対価を払ったことはございません」
「非課税で運営をされている宗教団体の施設が裏選対というような形で24時間体制で使用され、さらに運動してくれた方々の日当、電話代、会場使用料もかからない。こういったものが政教一致になるか、今後、議論すべき」
創価学会は、平成一九年の統一地方選・参院選を「本門の池田門下初陣の法戦」と位置付け、宗教施設である会館で、「仏敵」である民主党を打倒しようとの会合を全国各地で恒常的に繰り広げた。こうした選挙闘争そのものである活動を創価学会は宗教活動だと言い逃れているが、そのような欺瞞的な主張が許されるのかどうか、矢野氏が指摘するように実態に即した本質的な政教一致の議論を行う必要が急務と言えよう。
---------(148P)-------つづく--