公明党=創価学会の真実 乙骨正生 (2003/1 かもがわ出版 1800-)
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◆ 東京の学会組織の努力計る資料に
ところで今回の都議選の結果は、「本陣・東京」と呼称される東京の創価学会組織の勢力を計る格好の資料でもある。
まず第一には、候補を擁立できるか否かによって、地域ごとの創価学会の組織力の強弱が分かる。そして第二には、得票数によってその地域の創価学会の勢力の実態がどの程度なのかを計ることができる。
今回、公明党が候補を擁立した二十選挙区の地域別内訳は、区部が十七選挙区で市部が三選挙区。区部で候補を立てられなかったのは千代田、中央、港、文京、台東、渋谷の六区。複数の候補を立てているのは大田、世田谷、足立の三区。そして市部で候補を擁立しているのは八王子と町田、そして東村山を中心とする北多摩一区である。
前回は先頃西東京市となつた田無市・保谷市そして小平市を選挙区とする北多摩五区にも候補を擁立していたが、今回は北多摩五区が西東京選挙区と小平選挙区に分割したこともあって候補の擁立を断念した。
今回、公明党は二十三選挙区で七二万二四六三票を獲得したが、これは前回二十四選挙区で獲得した七〇万五八一六票を一万六六四七票上回っている。前回と今回の得票数の比較を今回候補を擁立した二十三選挙区に限れば得票増は三万七六一〇票に拡大する。
特に、葛飾、足立では前回より五千票以上、中野、町田、大田では四千票以上増やすなど、計十四選挙区で得票を増やしている。
一方、得票率は15・09パーセントと前回よりも3・6パーセント落ちているが、これは投票率が前回を約10パーセント上回ったことが原因であり、当日の有権者数に対応する絶対得票率に限ってみれば、今回は前回の10・36パーセントからて10・49パーセントへと増やしている。特に荒川区では得票率が34・15パーセントと30パーセントを凌駕。絶対得票率も16・93パーセントに及んでいる。また、東村山市(北多摩一区)でも得票率が26・23パーセント、絶対得票率も14・21パーセントにも達している。この他、絶対得票率が10パーセントを超えたのは墨田、江東、目黒、大田、中野、豊島、北、足立、葛飾、江戸川、八王子、町田の各選挙区に及んでいる。
この選挙結果は、創価学会の勢力は頭打ち状態であり、緩やかな漸減傾向にあるものの、全国の組織を動員すれば東京で八十万票程度を集票する活動能力を持っていること。Fとよばれる外部票を仮に三十万票と多めに見積もった場合は、組織内投票(内票)が五十万票で、組織実態としては二十五万世帯程度。Fを二十万票と少なめに見積もった場合の内票は六十万票で、おおむね三十万世帯くらいの勢力をもっていることを示している。
そして第三点として都議選の選挙結果からは、創価学会・公明党がきっちりとした区割りに基づいた高度なノウハウを持つ厳密な組織選挙を行っていることが、公明候補が複数立候補した選挙区の得票数から読みとることができる。
今回の都議選で公明候補が複数立候補したのは大田、世田谷、足立の三選挙区。その得票数は以下のようになつている。
大田区
2位 藤井 一 三一ニニ二
3位 曾雌久義 二八九七八 差.ニニ四三
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世田谷区
6位 中島義雄 二四一一〇
7位 桜井良之助 二三五一七 差.五九三
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足立区
4位 土持正豊 三四六九二
6位 友利春久 三二七七九 差.一九一三
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ちなみに大田区でトツプ当選した自民党候補と4位当選した自民党候補の得票差は一万四九九九票。世田谷区でトップ当選した自民党候補と3位当選した自民党候補の得票差は六〇三八票。同様に足立区でトップ当選と3位当選の自民党候補の得票差も一万四七六二票差である。
いずれも六千票以上の差、大田、足立では一万五千票近い差がついている。
これに対して公明党候補は、得票差がもっとも開いた大田でもニニ四三票差、世田谷ではなんと五九三票差と神業のような二分割を行っている。
周知のように創価学会は最末端のブロック組蛾(三~五世帯)から地区(三十~四十世帯)、支部(百五十~二百世帯)、本部(約千世帯)、分区、総区と、地域組織を細かく分けており、統監と称して、組織内の所帯数や人員をきっちりと把握しているばかりか、選挙に際して地区、支部部、本部毎に組織内に内部有権者(NU)、未人信家族を含む全有権者(ZU)が何人いるかを綿密に把握する。その上で活動家に対して外部票(フレンド・F)を何票獲得したかを毎週報告させることで、各地区、支部、本部から公明党にどの程度の票が出せるかを綿密に集計している。
世田谷区で五九三票差という驚異的な二分割をなしえたのは、こうした選挙のための体制、活動を日常的に行い、そのノウハウを蓄積しているからである。
秋谷会長は、宗教法人法の改正に伴い、平成七年十二月に行われた参議院宗教法人等特別委員会に参考人として出席した際、創価学会の選挙活動は副次的活動であり、期間、地域の限られた「限定的活動」に過ぎないと公言した。
だが、実際には、平成十年は参議院選挙を、平成十一年は統一地方選挙、平成十二年は衆議院選挙、そして平成十三年は、北九州市議選から都議選、そして参議院選挙と、毎年、恒常的に選挙闘争を展開している。創価学会の実態、本質が単なる「宗教団体」ではなく、「政治・宗教団体」あるいは「宗教・政治団体」であることは、こうした点からも裏付けることができる。
◆ 共産党候補落とすため票まわす
ところで、都議選開票後「朝日新聞」は、公明党が共産党から都議会第二党の地位を奪還するために、公明候補の立っていない選挙区の創価学会票を民主党にまわし、共産党の現職を落選させたと公明党幹部が語っている事実を報じている。
実際、定数二で自民党の現職候補と民主党の新人候補が当選し、共産党の現職候補と、民主党の事務職員時代「政治と宗教を考える会」の実務責任者として、創価学会・公明党問題に熱心に取り組んだ無所属新人の中村晃久候補が落選した立川選挙区で、創価学会組織が中村候補に対して激しい攻撃を加えるとともに、共産党現職を落選させるために「当面の敵」として「聖教新聞」や「公明新聞」で激しい批判を繰り広げている民主党候補に投票した事実が分かっている。ちなみに立川選挙区の民主党新人候補と共産党現職の得票差は二八八五票。公明党は立川市で六人の市議会議員を擁しており、市議選での得票数は一万二〇九五票。このうち三千票をF票と仮定すれば内票は九千票。少なくとも組織票の三分の一にあたる三〇パーセント以上を民主党にまわしたものと考えられる。
こうした事実は、同じく共産党の現職が民主党候補に破れた港区(二九五票差)、文京区(七八二票差)、北多摩三区(七七四〇票差)、北多摩四区(ニニ九八票差)などでも行われたものと見られている。
機関紙誌では「当面の敵」である民主党を徹底的に批判、攻撃しながら、その一方で「不倶戴天の敵」共産党を打倒するために、民主党を利用し、手を組む創価学会・公明党。そのマキャベリスティックな体質には、あらためて呆れるばかりだが、党首や幹事長をはじめ党そのものを罵詈罵倒されながら、それでも創価学会・公明党と通じて票をもらおうとする民主党の体質(一部議員かもしれないが)も問題である。
ところで、こうした民主党と創価学会・公明党の開係を取り持つ存在として大きな役割を果たしているのが、労働組合の連合である。平成十二年の衆議院選挙でも連合は民主党に創価学会・公明党批判を控えるよう申し入れるなど、創価学会の民主党対策の先兵役を果たしている。
いずれにせよ、今回、二十三議席を獲得し、共産党から都議会第二党を奪還したことで、公明党は引き続き都議会のキャスティングボートを握った。これにより今後とも都庁、警視庁に対する創価学会・公明党の影響力は保持されることとなった。
また、小泉政権が参議院選挙や衆議院選挙で大勝し、自民党が単独過半数を確保した場合、自・公連立の解消がありえるかのような論評もあるが、少なくとも都議会においては自・公連立体制は維持される。
仮に中央の自・公連立体制が解消されたとしても、創価学会・公明党はこの都議会をはじめとする地方政界での自・公連立体制を軸に、再び、中央での自・公連立を画策することは間違いない。すでに小泉首相は、参院選の結果を問わず、参院選後も自・公・保連立を維持することを明言しているが、地方政界での自・公連立体制を打破しなければ、中央の自・公連立体制の打破もないことを、日本国民、有権者は認識する必要があるといえるだろう。
---------(160P)-------つづく--