藤原弘達・創価学会を斬る 41年目の検証 言論出版の自由を守る会編
(日新報道 2012/2)
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③池田大作の欠席と池田博正登壇の意味/乙骨正生
それは創価学会の近未来を象徴する光景だった。
昭和35年に創価学会会長に就任して以来、組織・会員の上に絶対的に君臨していた「永遠の指導者」(創価学会会則)である池田大作名誉会長が、平成22年6月3日、創価学会の月間最重要行事である本部幹部会を欠席したのである。
池田氏が本部幹部会を欠席したのは、平成15年4月から5月にかけて体調不良で約1力月にわたって静養し、公の行事に姿を見せなかった時以来のこと。しかし今回の欠席の理由は、病気や体調不良とはされていない。本部幹部会の席上、原田会長から発表された池田氏の欠席理由とは次のようなものだった。
「昨夜、本日の本部幹部会について、池田先生から指導がありました。『明日の本部幹部会については、弟子の君たちが、団結して、しっかりやりなさい。皆が、創価学会のすべての責任を担って戦う時が来ているのである。学会の将来にとって、今がー番大事な時である。ゆえに、私を頼るのではなく、君たちが全責任をもって、やる時代である。私は、これからも君たちを見守っているから、安心して、総力を挙げて広宣流布を推進しなさい』
本日、先生に出席いただけないことは残念ですが、先生の真情を伺うにつけても、もはや甘えは許されません。弟子が、今こそ決然と総立ちする時です」(6月9日付「聖教新聞」)
これによれば、池田氏の欠席は病気のような不可抗力の要因によるものではなく、意図的欠席だったということになる。もっとも、池田氏の動静を伝える「聖教新聞」には、平成22年5月中旬以降、池田氏のリアルタイムでの動静がほとんど報じられておらず、掲載される池田氏の写真も古いものばかり。また平成21年秋以降、本部幹部会での池田スピーチは主に側近の長谷川副理事長が代読していることから、池田氏の思考力や忍酎力が著しく低下しており、健康状態は人前に姿を見せることができないほど重篤なのではないかなど、さまざまな情報が乱れ飛んでいる。
もっとも、池田氏の本部幹部会欠席の理由には、体調不良と同時に選挙対策の策略と責任逃れの狙いがあるものと考えられる。というのも、平成22年7月11日投開票で行われる参院選を前に、創価学会は、大阪の創価学会組織のトップである関西最高参与に池田氏の長男である池田博正副理事長を据え、同参院選を、池田氏が指揮を執り泡沫候補扱いだった白木義一朗創価学会大阪支部長を当選させたことから、「奇蹟の勝利」だったと喧伝する昭和31年参院選の「大阪の戦い」の再来と位置づけ、選挙に向けての士気を鼓舞したからだ。
創価学会では「大阪の戦い」を、戸田会長から池田参謀室長へと創価学会の全権が継承された節目の闘争だったと位置づけている。それだけに池田氏が「私を頼るのではなく、(弟子である)君たちが全責任をもって、やる時代である」と発言したのは、平成22年参院選での選挙闘争の意義を、戸田会長から池田参謀室長への世代交代と同様の、ポスト池田の世代交代の闘争と自覚させることで幹部・活動家の尻を叩き、厳しい選挙戦を勝ち抜こうとしているのだろう。
さらには「君たちが全責任をもって、やる時代」との池田発言の裏には、政教一致の熾烈な政治闘争を指揮し、反社会的行為を操り返してきた創価学会の最高指導者としての自らの責任を回避する狙いがあるものと見られていた。
というのも、平成22年6月4日に首相に就任した菅氏は、過去に国会で創価学会問題や政教分離問題を複数回にわたって質問しているばかりか、創価学会から造反し創価学会と公明党の政教一致の実態や、創価学会が公益法人として税法上の優遇措置を受けていながら、国税庁の税務調査の妨害を企てていた事実を明らかにした矢野絢也元公明党委員長を国会に呼び、話を聞いた「国会議員有志の会」の世話人。その菅首相を創価学会は、「仏敵」と呼び、呪詛の祈りまで加えていたからだ。
さらには平成22年春に、山口組直参の暴力団だった後藤組の後藤忠政元組長が、創価学会との深い関係を明らかにしたこともあり、創価学会の宗教法人としての適格性や創価学会と公明党の政教一致問題が、今後、国会で取り上げられる可能性が出ていた。その際は当然のことながら池田氏の国会招致が焦点となる。
「皆が、創価学会のすべての責任を担って戦う時が来ているのである。学会の将来にとって、今が一番大事な時である。ゆえに、私を頼るのではなく、君たちが全責任をもって、やる時代である」との池田発言は、自らの責任を棚上げにし弟子に責任を転嫁することで、国会や社会の追及から逃げ切ろうとの、池田氏の姑息な計算が働いている可能性も否定できない。
6月3日の本部幹部会では、欠席した池田氏のメッセージが長谷川副理事長によって読み上げられたが、その内容もまた「今、私も戸田先生とまったく同じ心です。君たちに万事を託していく総仕上げの『時』を迎えているからであります」などと、後事を託すといえば聞こえはいいが、責任を弟子に押しつけるものとなっている。そうしたセーフティネットを敷いた上で池田氏は、--
①強盛なる祈りで勝て、
②異体同心の団結で勝て、
③勇気と執念の行動で勝て、--
などと参院選の勝利に向けての檄を飛ばしている。しかも「聖教新聞」には掲載されなかったが、同メッセージの中で池田氏は、「何も恐れるものはない。断じて、勝ってもらいたい。断じて、勝たせたい」「大勝利を侍っています」などと宣うているのだから呆れるしかない。
◆ 登場した池田の意志の解説者
ところで池田氏が意図的に欠席し、「君たちに万事を託していく」とした本部幹部会では、長谷川副理事長による池田氏のメッセージの披露に続いて、池田氏の長男である池田博正副理事長による池田氏の和歌の披露と、池田氏が日蓮正宗との対立の責任をとって会長を辞任した昭和54年5月3日に揮毫したとする掛け軸の披露が行われた。池田博正氏が披露した池田氏が詠んだとする和歌の一つは次のようなものである。
「断固たる 正義の指揮執るわが弟子が 晴れて勝ち抜き 歴史を残せや」
解説するまでもなく、これが参院選での勝利を鼓舞する歌であることは明白だが、興味深いのは、この後に池田氏が会長辞任直後の5月3日に書いたとする揮毫の意味を、池田博正氏が解説した事実である。この池田博正氏の発言は、どういうわけか池田博正発言としてではなく、記事化して「聖教新聞」に掲載されているので、発言そのものを紹介しよう。ポスト池田の大本命の御曹司の発言は、なかなかに興味深い内容となっている。
「さらに先生より二本の掛け軸をお預かりいたしましたので、ここでご披露いたします。
ひとつは『大山』大きな山と書いて『大山」。もうひとつは「大桜」。大きな桜、『大桜」という掛け軸です。で、下に脇書きがありますので、脇書きをご紹介します。『大山』の方の脇書きです。「わが友よ、嵐に不動乃信心たれと折りつつ」『54年5月3日創大にて式後』式典の後、『式後記すなり大作』。
「大桜」の方の脇書きです。『わが友乃 功徳満開たれと 祈りつつ」「54年5月3日創大にて合掌 大作』。
皆さん、ご存じのように、この日は先生は、第三代会長辞任の本部総会に出席をされました。
場所は創価大学の中央体育館であります。終了後、渡り廊下を歩かれていた先生のもとへ、幼子をかかえた婦人部の方々が、「先生、先生」と叫びながら駆け寄ってこられました。先生は、『ありがとう、お元気で』と大きく手を振ってこたえられた。そして『こういう尊い方々を、いったい誰が守っていくのか』と語られました。その直後に、創価大学で認められたのが、この二つのご揮毫であります。その後先生は学会本部にはもどられずにそのまま神奈川文化会館に向かわれました。その日の夜、神奈川文化会館でしたためられたのが『共戦』。二日後の5月5日の御揮毫が『正義』であります。そして1年後の昭和55年に関西でしたためられたのが、先日、披露された『五月三日」の御揮毫であります。『大山』『大桜』さらに『共戦』『正義』そして『5月3日』。
これらの御揮毫から反転攻勢の戦いをただひとり開始された先生の御一念が拝されてなりません。
以来30年。今日の世界192力国に広がる創価学会の大発展を築き上げてくださいました。特に本日、ここに掲げられた2つの御揮毫には全学会員に寄せる深いお心が隠されています。
つまり『我が同志は、一人ももれなく大山のごとく嵐に不動の信心でその一生を生き抜いてもらいたい』そして『大桜のごとく功徳満開の人生を勝ち取ってもらいたい』これが常にかわらざる先生のお心であります。とともに先生は『わが学会は揺るぎない精神界の王者として大山のごとく社会にそびえたっていく』という、そして『幸福勝利の創価桜の道を断じて世界に開いていこう』とも語っておられます。先生が示してくださった、『大山嵐に不動の信心たれ』、『大桜、功徳満開の人生たれ』、この精神を生命に刻みつけて、戦ってまいろうではありませんか。以上です」
自分の父親を「先生」と尊称し、その行為を敬語で讚える滑稽さはひとまず措くとして、意図的であれ体調不良であれ、池田氏が本部幹部会を欠席し、池田氏の意図するところのメッセージを、池田博正氏が幹部・活動家に解説・敷衍したことは、今後、ポスト池田体制の中で、池田氏の意志を会員に伝える、あるいは池田氏の意志を解説するのは池田博正氏であるということを明確にしたといえるだろう。
要するに、実質的に「池田大作」を教祖とする創価学会という閉ざされた集団の中で、教祖のお言葉を伝え、その意味を解釈するのは池田博正氏ということである。
---------(424P)-------つづく--