私は山崎正友を詐欺罪から救った! -- 2002/05
--アウトローが明かす巨額“手形詐欺”事件の真実--
-------(前回、97P迄)--以下、本文--
5 計画倒産の失敗
山崎と私の計画は、シーホースの倒産日を昭和五十五(一九八〇)年七月三十一日と決めめ、それまでの三力月間に取り込み詐欺を働くというものであつた。
しかし、計画を実行に移してわずか十五日後の四月十五日には、山崎が以前に振り出していたシーホースの手形が不渡り事故を起し、事実上の倒産となってしまった。結果として、シーホースの計画倒産は失敗に終わり、取り込み詐欺もほんのわずかな成果しか上げることができなかった。
シーホースの不渡り事故は、山崎のまったくの計算違いであった。このように中途半端な形で倒産させた場合には仕事師との約束違反であるばかりか、仕事師たちも自らが取り引きした債権者を抑えることが難しく、告訴される事態も予想しなければならなかった。
シーホースが倒産した二日後の四月十七日、私は赤坂の事務所にいた。その日の夕方、私は山崎から呼び出され、事務所の目の前にあるホテルニュージャパンの一階にある喫茶室に赴いた。
私が席に着くと、山崎は辺りに顔見知りがいないかどうかを伺い、私と山崎の二人だけであること確かめると、口早に要件を切り出した。
「すまない。塚ちゃんとの約束した日まで、会社をもたせることができなくなってしまった」
私と約束したシーホースの計画倒産の期日は、前述したように七月の末日であった。この期日を違えた場合、計画した通りの取り込み詐欺は成り立たない。
そのため、私との約束事が反古となってしまったことを意識しての挨拶であり、シーホースが不渡り事故を起こしたことへの詫びでもあった。
「実は二、三日前から学会が俺の取り引き銀行に圧力をかけて、俺を潰しにかかってきた。この前にも話した通り、俺は学会と戦争をしなければならない。学会の方でも俺の計画をうすうす感じているらしく、なんとしても俺を潰したいと思つているようなのだ」
と、深刻な顔をした。私がその顔をのぞき込むと、--
「なに、まだ俺の計画している本当の戦争(陰謀)がバレたわけではない。ただなんとなく俺を疑い出してきたのだとは思う。本当のことは、まだ創価学会の連中にはわかってはいないはずだ」--と自分自身を励ますように山崎は言つた。
「とにかく今は絶対に俺の戦争のことがバレてはまずい。そのためにもシーホースの倒産が詐欺事件になると、俺は非常にまずいことになる。なんとか、塚ちゃんの方で扱ったシーホースの債権者を抑えられないか。そのためにかかる費用はすべて用意する。
塚ちゃんの方の仕事師が扱った分の必要な金は、もう用意してある。シーホースの社員が扱った分は、俺たちの方で抑える。塚ちゃんの仕事師が扱った取引先に手を打って、一件でも事件にならないようにしてくれないか。俺の方の戦争は、俺がいなければ勝負にならない。俺がこの戦争に勝っためにはなんとしても、シーホースのことは塚ちゃんに頼むしかない。丸尾や坂本ではとても無理だ。
俺が創価学会に仕掛ける戦争は、先日、塚ちゃんにも話してある通り大仕事だ。しかし、このことは今はまだ創価学会にバレてはいない。だが、この戦争に勝っためには、これからが大事な時なんだ。俺はその準備をしておかなければならない。そのためにも、俺が今ここで警察に捕まるようなことは、絶対に避けたいのだ。塚ちゃんには、何の儲けもさせないうちにシーホースをパンクさせたことは謝る。他の連中にも謝っておいてくれ。少しぐらいの金は明日にでも届ける。また、塚ちゃんにも少しはやれるから心配するな。シーホースの件で、刑事事件にさえならないようにしてくれれば、今後も塚ちゃん達の面倒は、俺がなんとかする」
山崎は、私には一言も話させず、ここまでを一気に話した。
「万一の場合、警察には、塚ちゃんが俺やシーホースの社長である坂本を騙したことにしてくれ。シーホースは、塚ちゃん達に騙された被害者の立場にしてくれないか。それに必要な塚ちゃんの報酬は、創価学会を脅して金にする。このことについても塚ちゃんの協力が必要だ。まあ、この話は、また後で相談しょう。よく考えて俺を助けてくれ。絶対に金儲けはさせる。約束するから、ぜひ頼むよ」
刑事事件から逃れようとする山崎の懸命な懇請であるが、一方で、自らの顧問先である創価学会を恐喝するというのである。
シーホースの倒産事件を助けた見返りに、山崎が創価学会を恐喝した金の分け前をくれるという申し出である。
なんといっても巨大教団である創価学会に対する顧問弁護士の恐喝だ。うなるような力ネが出るにちがいない。それはそれで、私にとってヨダレが出るような、おいしい話であった。私は山崎の依頼に乗った。
「俺は学会を恐喝する。俺は顧問弁護士として、学会のためにいろんなことをやってきた。この俺が内部告発をすれば大変なことになる。俺は原爆級のネタをたくさん持ってる。これをチラつかせるだけで、学会はビビッてすぐに金を出す」
これまでに手掛けたことのない大仕事である。私は背筋がゾクゾクした。これがものになつたら億万長者も夢ではない。懲役も覚悟の上で山崎の依頼のすべてを引き受けることにした。
翌日から手駒の仕事師を呼び出し、その彼らが呼び込んで使った仕事師全員を事務所に呼びつけた。彼らには山崎から預かっていた約二千五百万円の中から、シーホースの倒産で違約したオトシマエとしての金を渡した。
そして、彼らが関係したすべての債権者(被害者)に対して、被害届を出させないように話をつけることを頼んだのだった。
---------(102P)-------つづく--