読書感想18 幻夜
著者 : 東野圭吾<o:p></o:p>
生年 : 1958年<o:p></o:p>
出身地 : 大阪府<o:p></o:p>
出版年 : 2004年<o:p></o:p>
出版社 : 集英社<o:p></o:p>
値段 : 952円(税別)<o:p></o:p>
集英社文庫<o:p></o:p>
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あらすじ
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阪神大震災で倒壊した梁の下敷きになっていた叔父から400万円の借用証を奪い取るために思わず殺してしまう。その現場を見られた若い女に青年は、叔父の救助を求める様子を写したビデオ映像を回収して助けてもらう。若い女は阪神大震災で両親を亡くした新海美冬と名乗る。青年、水原雅也の町工場の後ろのアパートに両親が住んでいて、たまたま訪ねて来て被災したのだ。雅也は美冬の恋人となって一緒に東京に移り、美冬の影の協力者となる。青年は叔父殺害現場の写真を送りつけてきた脅迫者を、美冬の言うとおりに殺害してしまう。偶然美冬の高校時代の写真を見た雅也は、女が新海美冬ではないことに気付く。さらに脅迫者が新海美冬の父親の部下で会社に残っていた美冬の写真を届けようと美冬の居所を探していたことも知る。美冬はなぜ別人になろうとしたのか。<o:p></o:p>
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感想
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「白夜行」の続編だということだが、印象はずいぶん異なっている。「白夜行」では2人の少年少女の悪人へと成長していく軌跡が第三者によって語られるが、その心情を当人たちが語ることはない。<o:p></o:p>
また最初の殺人が愛する者を助けようとして実の父親を殺してしまうという少年の悲劇もあり、実の母親から少女売春を強制されていたという少女の不幸もある。それで少女の貧しさから何としてでものし上がろうとする気持ちも説得力が出てくる。少年の少女への変わることのない愛に対しても同情が湧く。読後感は可哀想という言葉に尽きる。<o:p></o:p>
しかし、「幻夜」では犯罪を犯す当人たちが饒舌である。その饒舌ぶりがただ自分たちの欲と保身を正当化していくだけの語りである。話せば話すほど2人の男女から読者は気持ちが離れていく。性的な場面での女の指南は、これはヤリ手婆か売春婦かというぐらいで辟易する。女にまるで魅力が出てこないのだ。男女の結び付きに最初から愛がないので、読後感もよくない。「白夜行」と同じく「幻夜」でも悪女が生き残るが、ここではほとんどモンスター状態である。人間らしさが全く感じられなくなっている。<o:p></o:p>
過去を消したい女の過去を「白夜行」に頼ったのは「幻夜」をつまらなくした一因だ。「白夜行」と全く別の小説にした方が面白かったと思う。<o:p></o:p>
