『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳 九つの話 No.3 青い山

2012-06-29 17:44:15 | 翻訳

 

翻訳 九つの話  No.3  青い山<o:p></o:p>

 

 時々、彼女は同じ夢を見た。かなり低いスレードの家並みが密集した山の麓を彷徨う夢だった。彼女が行こうとする所は青い山の峰だった。青みがかった灰色の積乱雲に覆われたその場所は切り立つように高い。しかし高くて険しいことは構わなかった。問題はどんなに彷徨ってもそこへ行く道を見つけることができないことだった。<o:p></o:p>

 

 メガネを外したように視野がぼやけた。何にせよ上に登るだけでいいはずだが、迷路のように絡まった路地は一様に袋小路になった道が続いていた。周囲はひっそりと静まっていた。のどが渇いた。牛の群れを追って行く老人、汚い服を身に着けた少女たちが壁の間を流れるように歩いていて消えた。入口のない家並みだった。誰もいないの? 壁を叩いて叫ぶと自分自身の声だけが割れて戻ってきた。<o:p></o:p>

 

 青い山のてっぺんには雨が降った。青みがかった灰色の厚い雲の広がりが一粒一粒光る雨粒になり散らばった。そこをめざして峠を背にしたまま、彼女は路地の中で少しも動くことが出来なかった。飛んで行くことができたら・・・<o:p></o:p>

 

そうするうちに、乗っているような喉の渇きを感じて夢から覚めるのだった。<o:p></o:p>

 

 夢だけではなく、起きている時も彼女は時々その山を見た。ソウルが山に囲まれている都市なのでどこでも北漢山と冠岳山の連なりを見ることができたが、輪郭線の上に巨大にそびえるその山が、ソウルを俯瞰している時があった。雲霧に遮られて山の峰が見えない青い山,青く藍色の山腹とその渓谷の深く濃い影を見上げるのに、彼女はしていた仕事を中断し、立ち上がったりした。<o:p></o:p>

 

―完―<o:p></o:p>

 


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