而して今 2023-07-23 | 日記・エッセイ あさぎり(奈良公園)│笠松紫浪 昭和12年 先日、午前診療終了後、恩師宅に夏の表敬訪問で伺った。梅雨明けの炎天から降り注ぐ容赦ない陽射しに加えて、余す所無く整備された石畳からの照り返しを浴びながら、ひたすら黙黙と奈良の三条通を歩き続けた。生駒山系の暗峠を越えて大阪に至る暗峠奈良街道に連なる三条通は、JR奈良駅から春日大社の一の鳥居まで続く東西道路である。さらに南に下る高畑町の母の生家に滞在した昔日、早起きして向かった緑溢れる春日野の飛火野は、人の世をいまだ知らぬ子供にとり至福のまほろばだった。