大和未生流の夏期特別講習会が、8月9日、奈良春日野国際フォーラム甍、別館で開催された。当代御家元の御講義は、初代御家元が創生された流派の基本花型に関する詳細で丁寧な御解説であった。次いで副御家元が、グラジオラス一種、前人三本生けの微に入り細を穿つ実技指導を御担当になった。両先生は、第三代御家元が夏期講習会開催にあたり如何にその御心を砕かれ、周到に準備なさっていたかをお聞かせ下さった。御講義のための綿密な原稿作成、例年窯元に自ら足をお運びになり御監修の花器、実技で生ける花材を決定されるまでの経過を伺った時、一点一画も忽せになさらない真摯で高潔な在りし日の御姿が彷彿と浮かんだ。
帰宅後、御形見というべき花器を心して拝した。御配布頂いた本年の筒花入はわずかに端反り下膨れで、内外に浅いろくろ目が走り、窯変が景色をみせる風韻漂う色調である。
*「グラジオラス」、別名「和蘭あやめ」(おらんだあやめ)、「唐菖蒲」(たうしやうぶ)、「和蘭菖蒲」(おらんだしやうぶ)は夏の季語である。
参考資料:「新版 角川俳句大歳時記 夏」, 角川書店, 2022
「草木花 歳時記(夏の巻)」, 朝日新聞社, 1999