師の道┃井上靖「本覺坊遺文」 2021-03-04 | アート・文化 実際に、私にはあの夢の中で師がお歩きになっていた道のことが、この六年間、やはり心にひっかかっております。私が自分などの踏み込めるような、そんな容易な道ではないと思った、あの冷え枯れた道は何なのでございましょう。私が夢の中で師から引返しなさいと言われ、素直にお気持ちに副って引返したあの道は何なのでございましょう。 (井上靖著:「本覺坊遺文」, p13, 講談社, 1981)