花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

思想│花便り

2020-08-15 | アート・文化
要する所は人性の究竟的平等観と絶対的差別感との争となるのであって、頗る重大なる問題であったのである。勿論この交論は当時の学界に行はれたもので、一般の民衆には直接交渉は無かったとも云へるが、併し、思想は決して学者と云ふ特殊階級にのみ潜行すべきものではなくて、学界に顕れるものが必ず民衆の上にも何等かの形を取って顕れて来る。また一面から云へば学者は民衆の意志を能弁に論ずる機関であって、学者の頭に考へつく頃は無自覚の状態であるにしても、民衆一般の中にその思想は早くも何等かの形態を以て動いて居るものであるとも云へる。斯う言ふ予の考に誤がないとすれば、奈良朝から平安朝への転換期に、人々に依って代表されて論じられたこの問題には軽からざる意義があると思ふ。

(第二章 徳一の思想・信仰/島地大等著:徳一の教学について│田村晃祐編:「徳一論叢」, p85-86, 国書刊行会, 1986)