花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

あじさいを生ける│大和未生流の稽古

2018-07-05 | アート・文化


紫陽花はアジサイではない
世間一般にアジサイを紫陽花だと思っているがこれもまたトンデモナイ見当違いで、紫陽花なんてテンデ何の植物だか得体の判らぬものダ。これは白楽天の詩にあるもので、その詩は「何年植向仙壇上、早晚移栽到梵家、雖在人間人不識,与君名作紫陽花」である。そしてその註に「招賢寺有山花一樹無人知名色紫氣香芳麗可愛頗類仙物因以紫陽花名之」とある。こんなアッケナイ詩と文章とに基づきこれがアジサイでゴザルとは驚き入った盲蛇である。元来アジサイは房州・豆洲辺に自生せる額アジサイを親とする日本出の花で唐物ではない。ゆえに支那では 瑪哩花、天麻裏掛、洋繍毬といわるる。」
(そうじゃない植物三つ│「花物語」, p163-164)

  紫陽花 白居易
招賢寺有山花一樹、無人知名。色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物。因以紫陽花名之。
招賢寺に山花一樹あり。人の名を知るもの無し。色紫にして気香ばし。芳麗愛す可く、頗る仙物に類す。因つて紫陽花を以て之を名づく。

何年植向仙壇上、早晩移栽到梵家。
雖在人閒人不識,與君名作紫陽花。

何れの年にか 仙壇の上(ほとり)に植ゑたる、早晩(いつ)か 移し栽ゑて梵家に到れる。人閒(じんかん)に在りと雖も 人識らず、君の與(ため)に名(なづ)けて 紫陽花(しやうくわ)と作(な)す。
(この花は、何時はじめて仙壇(俗界を離れた仙境)の上に植えられたのか。またこの花は、いつこの寺院に移植されたのか。この人間社会にありながら、人びとはその名も知らない。よって私は君のために紫陽花と名づけてやろう。)
(白氏文集巻二十 律詩│新釈漢文大系「白氏文集 四」, 441-442)



参考資料:
牧野富太郎著:ちくま学芸文庫「花物語 続植物記」, 筑摩書房, 2010
岡村繁著:新釈漢文大系「白氏文集 四」, 明治書院, 1990