花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

松竹水聲涼 其の一│佐藤秀明「雨のくに」

2018-07-01 | 日記・エッセイ

佐藤秀明写真集「雨のくに」, PIE Books, 2004

「撮影が最も楽しく捗るのはやはり梅雨時の雨だろう。植物や花が水を得た魚のように生き生きとしてとてもフォトジェニックだ。そして雨も明るく温かい。そんな雨とともに古い街並みを歩くことも好きである。民家の軒下にもぐり込んで雨だれにカメラを向けるとき、ふと子供の頃、雨だれに長靴についた泥を落としたことを思いだしたりする。雨と古い街並み、妙に似合うのである。だからこの頃の京都にもよく足を運ぶ。」
(季節の雨を旅する│「雨のくに」, p94)


夏の雨 走り梅雨・はしりづゆ│「雨のくに」

ことが有るたびに心火逆上になる性で、「滅却心頭火自涼」の境地には程遠い毎日を過ごす羽目になる。外来診療では、小暑が近づきはや暑湿で体調をくずしておられる方を多くお見かけするこの頃である。ここで「松竹水聲涼」シリーズと称し、時宜にかなう写真集や本を本棚から取り出して順次掲げてみようと思う。涼風一陣となれば幸いである。
 口切の佐藤秀明写真集『雨のくに』は、一つ一つの写真に季節により異なった雅な雨の名前が冠せられている。移り変わる大自然、そして人間の営為のなかの一瞬の光と影を捉えた写真を拝する時、歩き去ったはずの、あの場所にあった懐かしい雨の匂いがする。

さて「雨に打たれる花」を生け花にいけたなら、どの様な風姿になるのだろう。花時雨、青葉雨、梅雨、夕立、秋霖や氷雨など、折々の季節に花開き旬を迎える花材を使う、という切り口は定番に終わる。花や葉に霧を吹くなどは殊更に言わずもがなである。折に触れて考えてみるが、いまだにはかばかしい結論に至っていない。