花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

会場受付にて

2018-02-13 | 日記・エッセイ


とある学会会場で受付のお役目に付いた日の事である。華やかに若い方々に前列に座って頂き、当方は後方部隊として参加費の出納に携わっていた。来場された方々の殆どは、受付に辿り着いてからおもむろに財布からお札を取り出される。数千円の会費に対し、壱万円をお出しになる方が過半数を遥かに超えた。財布に折りたたまれていた壱万円札や千円札は、当然深々と折り目が入っているか湾曲した癖がついている。その中に御一方、懐の長封筒から新札の千円札を揃えて取り出してお納め下さった方がおられた。

会計元締めの先生は御多忙の中、多量の整えた千円札を周到に御用意になっていたが、途中からは参加者からお納め頂いた千円札がお釣りに回ることになる。出てゆく古札の皺を後方で伸ばそうとはしたものの、幾多の修羅場を潜り抜けてきたかもしれない古強者のお札は、一向にこちらの意向になど従ってはくれない。思い返せば、いかに使い込まれた古札であろうともお札はお札である。何よりも過不足なくお預かりする、お釣りとしてお納め頂くことが、受付で金銭出納にかかわる者が守るべき綱領である。ましてや本日はお日柄も良くの披露宴でも祝賀会でもなく、学術研究の向上発達を要件とする学術集会であった。参加者は受付手続など素早く終えて講演会場にお入りになりたい。主催者側にとっては一人でも二人でも多くの御来場を頂いて、活発な議論の内に盛会に終わればそれが一番である。
 確かにそれはそうなのであるが、それでも綺麗なお札をやり取りするに越したことはない。会が無事に終わっての帰り道、先の奥床しいお気遣いの御方の顔が心にふと浮かんできた。