花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

立春の養生

2015-02-04 | 二十四節気の養生


立春(2月4日)は二十四節気の最初の節気である。厳しい冬の寒さがようやく緩み、陽気が芽生え始め、万物が生まれ出づる春の到来を告げている。春の季節は、木、火、土、金、水の五行で言えば「木」にあたり、肝、心、脾、肺、腎の五臓の内の「肝」と深い関係にある。東洋医学的に「肝」の働きと考えられているのは、身体の上下内外の気の働きの調節や胃腸の消化吸収機能の促進、そして体内の血液の貯蔵と血液量の調節である。前者は疏泄機能と呼ばれるが、この肝の疏泄の機能がうまく働いていると、気血が滞りなく流れ様々な臓腑や器官の働きが正常に保たれる。さらに肝の疏泄機能には、精神をゆったりとさせる作用も含まれている。いらいらと腹をたてたり、憂鬱になったりという様な精神状態が続くと、疏泄機能が影響されて体内に様々な病的現象を引き起こすことになる。そのために特に春は気持ちをのびやかに保ち、明るく楽しく過ごすように心がけることが肝心である。また春の始まりとは申せ、暖かくなったと思えばまた寒くなり、気温の変化が大きい時期でもある。一気に春の装いに衣替えするのではなく、「上薄下厚」で早春の寒気から下半身を守りながら、徐々に衣服を調節してゆかれることが肝要である。

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つ今日の 風やとくらむ     紀貫之、古今集・春上