山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『本能寺』上・下=池宮彰一郎著

2013-11-07 17:45:45 | 読書

 農作業をしながら、寝る前や朝起きてから配達後の時間を使って、池宮彰一郎の『本能寺』上・下2巻を読んだ。本能寺の主役は織田信長と明智光秀であることは間違いがない。なぜ、光秀が謀反に及んだのか?そのことを池宮流に解明したのが本書である。

 まず著者、池宮彰一郎について。池宮彰一郎は1923年生まれ東京で生まれ、静岡県沼津市で育つ。軍隊生活の後、映画の脚本家として独立。1992年に小説家として『四十七人の刺客』でデビューし、新田次郎文学賞を受賞。主な著書に『高杉晋作』『天下騒乱 鍵屋の辻』『平家』などがある。私は、あまり読み込んでいない作家である。

 群雄割拠する時代に、尾張に時代を凌駕する天才武将・織田信長が登場したと著者は書く。そして、足利義昭を奉じて上洛をはたし、群がる敵を打ち払って天下に号令する地位を確立していく。その信長がすべての利権を廃し、大名も無くし、天皇や公家までのなくして一種の共和制のような国家をつくろうという考えを持っていたことをしった、千の利休や先の関白などが光秀に示唆を与えて本能寺の乱になったという推測を著者はしている。信長の最後をめぐる謎はずいぶん小説になってきた『信長の棺』という小説も結構面白かったし、『本能寺』も独特の推理で読ませてくれる作品である。ただ、革命についての池宮氏の考えは私には同意できない。世は合理的社会をつくるために、その桎梏を取り外すために革命的変化を起こすと思うのだが、信長の生き方が一種革命的あったとしても、それは封建制の社会を変革するようなものでもないことは明らかだ。とにかく、歴史の大きな転換点になった「本能寺の変」をめぐる動きを独自の視点で書いた点で、面白く読ませてもらった。