『暗殺の牒状』は澤田ふじ子の「足引き寺閻魔帳」シリーズの第6巻目にあたる。京の町にある地蔵寺の住職の宗徳、その思い人でである女扇絵師のお淋、西町奉行所同心・蓮根左仲、その手先・与惣次の4人と地蔵寺の飼い犬・豪の1匹は、ひそかに悪人を始末する足引き寺の役割を果たしている。『暗殺の牒状』はこの1冊の第7話で、他に『御衣の針』『俗世の輩』『秋の扇』「六角労屋敷』『雪の桜』が盛り込まれている。澤田ふじ子の作品が、京都を舞台にして社会の底辺にある者の立場に立って書かれていることから、私はかなりのものを読んできた。中でも『暗殺の牒状』では西町奉行所の吟味役与力の悪行をさばき、自ら腹を切らせるのであるが、宗徳の兄である与力などもうすうす足引き寺の存在に気づきがら、これを陰ながら認めていることが推察されるあたりも面白い。