中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

雨の日は美術館へ

2014-05-02 21:08:01 | 芸術
 この間の雨が降った休日、娘と奥さんと三人で、山形美術館へ行きました。

 晴耕雨読・・・晴れたら野山へ散策に出かけ、雨が降れば美術館で芸術的感性の保養をさせる。まあ言ってみれば、私のような、山形に暮らす文化人としては当然の「たしなみ」でございますな。

・・・というのは大嘘で、山形美術館へ行ったのは、たぶんこれが初めて。美術館というもの自体、山形Qで演奏するために招かれたのを除けば、純粋に鑑賞するために訪れたのは二十年ぶりぐらいです。

 考えてみれば、こういうことを平気で口にするのは破廉恥です。そして身勝手です。「コンサートなんて、もうかれこれ二十年以上、聴きに行ったことないな・・・」とつぶやいている人を見かけたら、「な、なんと野蛮な!」と思うくせに、自分はこのていたらく。・・・悔い改めるべきですね。

 と思いながらも、「なかなかきっかけが」などとグズグズしているところに、なんと大学時代の友人から、特別展のチケットをもらったのです。

 「近代陶芸の巨匠、板谷波山展」。50周年を迎えた山形美術館が力を入れた企画です。陶芸などというものに無縁な私が知るはずもないことですが、ちょうど没後50年の「板谷波山」という人は、陶芸を日本で初めて芸術の域にまで押し上げた第一人者。知らない方が野蛮なほどの「名匠」なのです。・・・友人の血縁にそんなすごい人がいたとは。


 平日だということもあって、人はまばら。というよりも、山形美術館はスペースの使い方が贅沢なのでそう感じるのかも知れません。

 正直なことを言えば、「陶芸」ということで、あまり気がすすまなかった。芸術というものは、深ければ深いほど、予備知識がゼロでは楽しめないことがある。生まれてこのかた、まじまじと壷を見たことなどない人間が行く意義があるのか・・・と。

 しかし最初の部屋で、その心配は無用だったことがわかりました。貝殻の内側のような光沢の内側に、薄くしかし色彩豊かに、紫陽花や金魚などがゆらめいている。「壷の模様や形」などという域をはるかに超えて、絵画と彫刻を合わせたような独自のジャンルなのだということが、初めてわかりました。

 釉薬の奇跡的な作用なのか、夕焼けの空に現れた星が鼓動を始めたような、凄まじい模様の作品もありました。この世に起こる一瞬の神秘が、そのまま壷に閉じこめられたようでした。絵でも彫刻でも、本当にすごい作品は、見る者の時間の感覚を奪いますね。どのぐらいの時間、それを見ていたのかが知覚できない。


 とにかく素人にも、いや私のような門外漢にこそ「一見の価値がある」展示でした。常設展も良かったし・・・これからはちょくちょく行こうと思います。

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2 コメント

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Unknown (さいころ)
2014-05-03 00:05:30
ありがとうございます!
楽しんでいただけたみたいで、とてもうれしいです。
東京での展覧会は来月からなので、わたしも楽しみです。
でも東京で見るより、山形で見るほうが広々としていてよいかも。。。
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>さいころさん (中爺)
2014-05-05 11:44:57
 こちらこそありがとう。 

 思いがけず(失礼)良い時間を過ごしました。特に、波山が若い頃に手本として勉強した海外の作品が「参考作品」として展示されてたのが面白かった。天才も、初めから何もかもできたわけじゃなくて、コツコツ勉強していく中で「自分が本当にやりたい事は何なのか」を探っていったのだという過程がよくわかり、感動的でした。 

 名を成してからも、故郷のお年寄り達に毎年、何十本もの「つえ」を贈るなど、人柄についてもわかるような展示がありました。「作品=人格」なんだね。素晴らしかった。
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