中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

立山(純米吟醸)

2011-11-21 17:50:18 | お酒の話(県外)
 「旅に病んで 夢は荒れ野をかけめぐる」

 有名な、芭蕉の辞世の句ですね。「旅に生きた」凄味を感じます。もし私が旅先で病気したら、「ああっ・・・早く家に帰りたい。」としか思わないでしょう。ほんのちょっと風邪気味ぐらいでも、そう思いますから、大病などはとんでもない。「くそっ・・・旅行なんか来るんじゃなかった・・・」ぐらい思うでしょうね。「旅」への情熱と根性が無いんです。


 ということで、家にいながらにして、旅を楽しむことにしました。私の場合、結局のところ「旅の楽しみ」は、イコールすなわち「地酒」なわけですから、各地の銘酒を呑んで、その土地の風物に思いを馳せれば、自宅でも充分なのかも知れない、と。酒でイメージをふくらませて、ヴァーチャルな旅をするのも一興でしょう?・・・極めて堕落しきった考えですが、今年も、もうお腹いっぱい旅行しましたから、許して頂きたい。


 さて、やって来ました、冬の富山です。山形から新潟を越えて、日本海沿いに30本ちかくもあるトンネルを、うんざりしながら抜けていくと、そこはもう富山です。雪がちらつく冬の日本海は、波が荒れて険しい。見るだけで寒いのに、実際に猛烈に風が強いんです。

 少し前に映画化された松本清張の「ゼロの焦点」は、冬の日本海の寂しさが、人の心の淋しさをぴったり写していて感動しました。寂寥感が半端じゃないんです。まあ、あれは金沢でしたけど。東北の冬は雪だらけで、「寂しい」とか、そういう情緒も一緒に雪に埋まって無くなってしまう感じですが、北陸の冬は独特の、しんみりした感じがします。

 しかし、そういう寒い所だからこそ、海の幸はプリプリなわけです。富山の冬はやはり「ぶりしゃぶ」でしょう。脂ののった、厚切りの寒鰤を、アツアツの鍋にさっとくぐらせて、ネギやしょうががたっぷりの付けダレで頂きます。これは本当に素晴らしい。身も心も、あっという間に、ほくほくでございます。

(ここから現実。)

 そこで出てくるのが、銘酒「立山」。しかも、今回のは純米吟醸。これは、実際の富山の居酒屋では、なかなかお目にかかれない。先日戴いて、じっくりねかせてあった、「とっておきの酒」です。よく冷やして、いただきます。

 キリッとしながらも、線が細くて、純粋な飲み口。淡雪のようにキレていきます。「立山」は繊細すぎて「ふわっ」としてしまう酒が多いのですが、この純吟は、ほんのり芯が通って、美しい。完璧な食中酒ですね。(山形のスーパーで買った)ブリにも、本当によく合います。

 富山を堪能しました。


 以上・・・仮想旅行おわり。(ただの「酒の話」でした)
コメント (4)
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