中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

奔馬

2011-11-15 14:09:11 | 山形弦楽四重奏団
 昨日の山形Qの練習は、まず今週土曜日に予定されている、河北町でのコンサートのプログラムから。親子で楽しむためのコンサートのようで、山形Qの出番は30分程度。

 コンサートの詳細はよくわかりません。どうも、コンサートを依頼する側は、出演者には必要が無いと思っているのか、あるいは失礼だと感じているのかわかりませんが、催しの内容を詳しく教えてくれないことが多いのです。どうせなら宣伝させれば良いのに・・・と思うのですが。とにかく、午後に河北町「どんがホール」で演奏します。


 さて、その後はフィリップ・グラスの「Mishima」。反復される細かい音符は、効果音的でありながら、旋律として音楽をリードしなければならない・・・これがかなり難しい。しかも美しくないといけない。キラキラした感じが必要です。

 「MISHIMA」の映画の中でも、特に第一楽章の細かい音符は、キラキラしたイメージで使われていたように思いました。「黎明」の輝きです。

 映画の中で「豊饒の海」第二巻の「奔馬」が、イメージとして使われていましたが、朝日の輝きの映像はそこからきていると思いますので、少しだけ「奔馬」の話を。


 「豊饒の海」は、四巻からなる大作です。輪廻転生が大きなテーマになっています。脇腹に3つの黒子がある主人公が親友に、「きっとまた逢うぜ・・・滝の下で」と、転生の予言のような言葉を残して、20歳で夭折してしまう。これが「第一巻」。二巻からは、その親友が主人公になり、信じられないながらも、転生の神秘にひきつけられて、のめり込んでいく。

 第一巻では恋に生きる侯爵の息子が、第二巻では愛国心に燃える青年剣士、第三巻では謎めいたタイの王女、第四巻では暗い目をした海の若者・・・に転生したのではないか、という傍観者の疑いは、それぞれの3つの黒子を見る度に確信に変わっていき、その神秘を確かめたいという執念に溺れていく物語です。評価はいろいろですが、私は三島由紀夫の最高傑作だと思います。時代錯誤であるとか、右っぽいとか、ゲイっぽいとか・・・そういう低劣で短絡的なくくりでは言い表せない、壮大な芸術的妄想です。

 その最終章を書き上げて、市ヶ谷駐屯地に向かうわけです。そのシーンも、映画の中にあります。


 ところでその第二巻の「奔馬」は、ひたすらに愛国のために命を捧げたいという若者の物語なのですが、言われているように、三島の「切腹賛美」が強く現れています。国賊に天誅を与え、山の上から昇る朝日を仰ぎ見て、自害して果てるという、「夢」をひたすらに追い求める主人公の姿を、異様な美しさで描いた小説です。

 そのクライマックスで、自決しながら仰ぎ見る「朝日」(実際には日の出まで間があって見ることはできないので幻覚)の輝きが、映画の冒頭なのでしょう。


 ・・・こんな風に書くと、ヒイてしまうばかりかも知れませんね。自決はともかく、幻覚の中の美化された朝日のキラキラ感と、グラスのサイケデリックな音型が、本当によくマッチしていると思います。


 「いい曲」と言えるかどうかは疑問ですが、楽しみたいと思います。
コメント (2)
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