中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

大船渡にて

2011-11-17 13:38:08 | 山形交響楽団
 岩手県の大船渡に行ってきました。宮城から岩手にかけての、石巻・気仙沼・陸前高田・大船渡・釜石と連なる沿岸の都市名は、津波による災害の報道で頻繁に聞くようになりましたが、本来はどこも穏やかな気候の、静かな港町です。特に秋から冬にかけての寒い季節は、山形から峠を越えて太平洋に近づくにつれて、空が鉛色から青空へと変化していくのを見ると、なんとなく気持ちも晴れやかになっていくものです。

 しかし、今回は被災地での「支援コンサート」ということでしたから、「晴れやか」というわけにはいきません。


 会場の学校は高台にありました。湾が見下ろせる斜面の上にある体育館からは、穏やかな海が見えます。吹き上げてくる海風は冷たいものの、陽射しは明るくて、黒服の背を温めてくれます。

 しかし、体育館の反対側には、ぎっしりと密集した仮設住宅が、無表情にひろがっています。時おり、各戸に何かを配っている人の姿を見ましたが、他には人の出入りもなく、静まり返っていました。

 何となく気詰まりで、再び海に目をやると、美しい海のその穏やかな表情が、少し残酷に感じられました。


 中学生たちは心なしか、とても大人びた顔をしていて、軽々しく「頑張れ」という態度で接するのが、ふさわしくないような気がしました。すれ違うと、礼儀正しく挨拶をされたので、こちらも礼儀正しく挨拶を返しました。

 
 今回はこの一ヶ所だけの公演だったので、演奏を終えて、またすごすごと、曇り空の山形へと帰りました。我々の演奏が何か少しでも、「支援」と言うに値する影響を彼らに与えられていたら、嬉しく思います。
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