昔は良かった

昔は良かった
2014/08/05
　「昔は良かった」と言う人が居ます。私（渡邉）も子供時代の昭和２０年～３０年を楽しく想い出します。
　しかし、それ以降の青年時代昭和４０年～５０年を想い出して、あの頃の生活や仕事をもう一度やれと言われると、やれる自信はありません。
　良くやってきたなあ。今のだれた生活の考えでは、耐えられないだろう。
　あんなに失敗して、やり直して、何とか結着出来たのは、何故だろう？そうするしかなかったからだろう。などと考え込んでしまいます。
　初めて、責任者として現場工事を担当したのは、三菱化成の石炭埠頭工事でした。環境も悪く、ヒゲ剃って現場に行くと、近くの煙突の黄色い煙は硝酸ガスだそうで顔が腫れあがります。ピッチ置き場の側だったのですが、作業員の皮膚が腫れ漆（うるし）敗けのようになるのです。塗り薬を支給して貰い毎日顔や手に塗るのです。木杭を打ってコンクリートの支保工を作っていますと、翌日壊れています。石炭運搬のはしけがそのくいにロープを繋ぎ、壊してしまうのです。　桟橋のコンクリート梁スラブ打設の終了した時、引き船が衝突し、大きな傷が入りました。そんなゴタゴタで作業員と揉めたりしながら工事が終了し、係員も解散し一人現場に残っている時、ものすごい幸せ感を味わいました。何もせず坐っているだけで、エンドルフィンなどの快楽ホルモンが噴出していたのでしょう？うれしくて飛び上がる気分です。しかしもう一度経験したいとは思えません。
　考えてみると、今が一番良い時期である。昔は苦労が多かった。良くそれらの苦労をこなして来た。又一度やりたいとは思わない。現在が良いと感じます。
　高速道路の現場では、雨が降ると、付近の畑に土が流れ、晴れると、土運搬のトラックの埃（ほこり）で果樹園などから、毎日、文句を言われ、散水車で水を撒いてもすぐ乾き、アスファルト乳剤を撒いても効果は少なく、現場に行くのが嫌になるほどでした。良く耐えて、謝罪ばかりしていたな、と思い出します。
　戦争に行った父親たちの苦労に比べれば、そんなことは苦労の内に入らないと言われそうですが、現在の状態を自分の最高の時代だと思います。
　同級生や仕事仲間の優秀な人達が、ガンなどで早死にしているのを思い出すと、自分が致命的な病気にもならず、現在生きていることを幸せだと思います。
　腰痛・歩行困難・糖尿病・透析など生活条件は最高とは言えませんが、幸福感は、今までの生涯のうち、最高と感じます。昔は良かったと言うより、現在の最高を探すほうが、楽しいですね。長生きもしそうです。保其寿・楽其生。