朝礼の話題

見たり読んだりして、感じたことを朝礼で話しています。この頃は仕事の話は少なくなりました。

沼田先生の車中講義

2006-12-26 15:06:09 | 趣味
沼田先生の車中講義2006/12/21
セメントの歴史・未来
 沼田先生は新日鉄のスラグ研究第一人者で、退職後 工学博士 西工大教授になられました。土木の世界を若くドロップアウトした私は、土木技術一筋の先生を尊敬しお話を聴く度若返る気がして、いつも興味深く拝聴しています。
 福岡の友人が東京に転進する送別会の帰りは、西鉄高速バスにしました。
 いつもは居眠りで眼が覚めるともう小倉ですが、沼田先生と一緒で中身の濃い1時間半の土木材料教室になりました。
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 ●ポゾランセメント
セメントは古代から使われ、ローマ遺跡建造物が現存するのはセメントの強度・耐久性を証明しています。
このセメントは現在のポルトランドセメントとは違い、ローマンセメントあるいはポゾランセメントと呼ばれます。
ベスビオス火山の麓の街プツォリ(puzzuoli)産の火山灰を消石灰と混ぜ水を加えたものです。
これは自然に硬化しますが、この硬化する反応をポゾラン反応と言います。
火山灰のポゾラン成分が水に溶けて液体―液体の化学反応で新しい化合物が出来るもので、空隙の少ない固体が出来て水密性にも優れています。
●ポルトランドセメント
1824年アスピディンさんがポルトランドセメントを発明しました。
石灰石と粘土を混ぜて焼き石膏を加えて粉砕します。この粉末に水を加えますと、水和物が結晶し固くなります。
この反応はトポケミカル反応と呼ばれ、固体と液体の反応で硬化は固体(セメント粒子)の周りに化合物が順次重なって出来る固まりかたをします。水和初期では空隙も多く、異物を巻き込み水密性はよくありません。
硬化はゆっくりですので、硬化を待つため、昔の構造物はそれだけ念を入れ、完成までの工事期間は長かったそうです。
建設工事のスピードが上がったのは、浅野セメントがベロセメントという硬化の速いセメントを昭和3年に作ったことからだと、先生は言われます。
●水中コンクリート
普通のコンクリートを水中に打設するのは難しいです。
打設時二水中を落下させたりするとバラバラになったり水を取り込み強度のないコンクリートになってしまいます。
昔はプレパクトコンクリートという名の施工法がありました。
水中に型枠を組み立て、中に大きな骨材(石)を詰め込み、パイプで底からモルタルを注入し、下部から上部へ水を追い出しながら充填し硬化させる方法ですが、不確実な出来上がりで今でも心配なところがあります。
現在の水中コンクリートは水中でも水に影響されない硬化をする混和剤を使用し、陸上で打設するのと同じ強度が出せるようになりました。
その混和剤は、食パンの添加物と同じ成分です。
●メチルセルロース
テレビCMで食パンの角を押さえ元に戻るのを見せ、弾力がありフワフワする様子を強調していますが、これがメチルセルローズと呼ばれる繊維質です。
この添加物のお陰で容易にふっくらしたパンが出来るようになったそうです。
このメチルセルロースをセメントに混ぜコンクリートにし、水中に打設すれば水に影響されず硬化し良いコンクリートが打てるそうです。
なお,この水中コンクリート技術は同級生の(鹿島建設技術研究所)中原康さんが技術導入して開発し,科学技術庁長官賞を受けたものです。【聴くだけでも誇らしいです】

陸上のコンクリートでも流動性を良くする混和剤としてメチルセルロースは使われています。
その結果コンクリートの品質は良くなり、工事の騒音も減りました。
それは昔のように現場で生コン車に水を加える必要もなくなり、バイブレーターを掛けなくても、生コンクリ-トが流れて空気を巻き込まなくなったからです。
【こんなお話を聴くと、中原康さんの研究成果はすごい影響を建設工事及びその公害対策に与えているのが解ります うれしいなぁ!】
●次世代コンクリート
沼田先生はポゾランセメントが新しく見直され実用化されると言います。
これはセメント15%、フライアッシュ55%、メタカオリン30%の配合したもので水ーセメント比30% では28日強度600kg/cm2の高強度セメントです。
メタカオリンとは粘土鉱物カオリナイト(カオリンとも言う)を焼成したものです。
●カオリン
粘土鉱物は人間の細胞程度の小さな平たい形状です。電子的な力でカードハウス状構造をとり、その空隙に多量の水を含んでいます。それが可塑性のある理由です。
カオリナイトまたはカオリン鉱物を主成分とする粘土ですが、この名は中国語から来ています。陶磁器で有名な景徳鎮の高嶺土(カオリン)です。
このカオリンを常温から焼き徐徐に温度を上げ、水分を気化させます。
ある温度になると粘土の構造水も脱水し、鉱物は非晶質になります。
これがメタカオリンです。
800℃以上でメタカオリン別の結晶になり始めますのでこれ以下の温度に留めます。これを粉砕した微粉はセメントの水和物である消石灰成分とポゾラン反応を起こし、強度の強いしかも硬化の速い新ポゾランセメントになるのだそうです。

カオリンは日本には産出しません。
日本の粘土鉱物はモンモリロナイト、ハロイサイトが多いそうです。
熊本県植木町一帯はハロイサイトからなる、阿蘇 灰土からなる台地です。
粘土鉱物は何か知りませんが鹿児島県は姶良火山のシラス台地です。
これらの土でメタカオリン同様の作用があるかどうか実験をする研究者・大学があるといいですね!