福岡伸一著『遺伝子はダメなあなたを愛してる』(朝日新聞出版)読み終える。福岡先生、サイコー
●アオスジアゲハの幼虫はクスノキの葉、キアゲハはパセリかニンジン、クロアゲハはミカンかサンショウ、ジャコウアゲハはウマノスズクサ、という具合に自分の食べる植物をかたくなまでに限定しています。
●たしかに生命体は子孫を残すように作られています。しかしそれは生物としての義務ではありません。生き物には、繁殖に成功しないで一生を終える個体はたくさんいますが、子孫を残せなかった個体にも罰や不利益はありません。種全体で一定数の繁栄が起きればよいのです。その点、人類は安泰です。ですからこう思うのです。遺伝子は私たちに子孫を残せと指令しているのではなく、むしろこう命じているのです。自由であれと。
●興味深いのは母親の子育てにも個性があるということです。一心に赤ちゃんをなめたり、なでたりして一生懸命ケアする母ネズミと、逆に、赤ちゃんにあまり関心を示さず、ほったらかしの母ネズミがいるのです。面白い研究があります。よくケアされて育った子ネズミはどちらかといえば落ち着いて、リラックスした大人に育ち、あまりケアされずに育った子ネズミは警戒的で、いらいらした大人に育つ傾向が見られるというのです。ストレスにさらされると副腎からコルチゾールというホルモンが血中に放出されます。コルチゾールはエネルギーの燃焼を促進し、闘争したり逃走したりする行動を助けます。たくさん放出されるとその一部は脳の海馬に到達し、そこでグルココルチコイドレセプター(GR)という分子に結合し、信号を発します。この信号は視床下部、脳下垂体を経て、別の信号に変換され、それが副腎に働いて、コルチゾールの放出を抑制します。つまりフィードバックがかかるしくみです。さて、子育ての仕方とGRのレベルには、相関があるのです。生後まもなく手厚いケアを受けた子ネズミではGR遺伝子のボリュームつまみの音量が大きく設定されることがわかりました。GRのれべるが高いとコルチゾールを検出できるので、すばやくフィードバックがかかり、ストレス反応を抑えます。それゆえ子供は温厚に育ちます。子育ても余裕を持って行うことでしょう。つまり遺伝子そのものの有無ではなく、遺伝子の発現の仕方が、行動によって世代を超えて伝達されうるのです。これはエピジェノミックス(遺伝子そのものではなく、遺伝子を取り巻く仕組みの変化。「エピ」とは外側の意)と呼ばれ、生物学研究の新しいトレンドになっているのです。むろんネズミの成果がすぐにヒトに当てはまるとは限りませんが。
●トウモロコシは、アフリカのような乾燥地帯でも、アマゾンのような熱帯雨林でも育ちます。それはトウモロコシの特殊な光合成能力によります。一般の植物はC3植物ですが、トウモロコシはC4植物だからなのです。C3とかC4とかは、炭素(カーボン)Cの数です。光合成の初期産物は通常、炭素三つで構成されるホスホエノールピルビン酸ですが、トウモロコシはこの経路に加えて、炭素四つのオキサロ酢酸からも光合成を進めることができるのです。この結果、C4植物は、高温、乾燥、やせた土地などでも、効率よく二酸化炭素を栄養に変換し生育することができるのです。アスファルトの裂け目とか、道路脇のほんの小さな隙間に、雑草が生えているのを見かけることがあります。ああいった雑草は、C4植物であることが多いのです。
●マーシャ・ガッセン著「完全なる証明」
●黒岩比沙子「パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い」(講談社)、「伝書鳩 もうひとつのIT」(文春新書)
●普通の燃焼、例えばろうそくの火では、光への変換効率がたった4%程度。残りのエネルギーのほとんどが熱となって散逸してしまいます。電球でも光への効率は10%、熱くて触れないのはそのためです。一方、私たちはたき火や電球に親しみを感じます。光のあるところに暖かさがあることになじんできたからです。それゆえにこそ、‘冷たい光’が異世界のものに思えるのでしょう。LEDの効率は約30%。だから節電になるのです。そして、ホタルの発光効率はなんと90%。ほとんど熱絵の損失がありません。
●あるとき魚類の一部が、消化管を使って呼吸をすることを始めました。長い時間を経て、消化管がくびれて袋状になり、呼吸専門の器官となっていったのが肺の発生だと考えられています。今から数億年前のことです。今でも肺で呼吸できる古いタイプの魚がいます。南米やアフリカ、オーストラリアに棲息するハイギョの仲間です。それから町で呼吸できる達者なものもいます。人気者のドジョウですね。その後、肺は両生類、爬虫類、そして哺乳類へと受け継がれていきますが、肺を最も進化させたのは、何といっても鳥類でしょう。長距離を飛翔するためには大量の酸素が必要です。しかも空気が薄い高高度でも酸素を有効に利用しなければなりません。実は、鳥は我々ヒトとは違って、息を吸っているときだけでなく、吐いているときも酸素を吸収できているのです。鳥の肺には気嚢という袋がついています。息を吸うと肺を経由して、気嚢にも空気が溜まります。そして息を吐くときには、気嚢の空気がもう一度肺を通るのです。こうして鳥は往復して絶えず酸素を取り入れることができるのです。すごいでしょ。実は、恐竜も気嚢を持っていたので火山活動が盛んな低酸素時代に大繁栄できたのではという仮説もあるくらいなのです。つまり恐竜は鳥に近かったわけですね。
●バイオレメデーション
●アオスジアゲハの幼虫はクスノキの葉、キアゲハはパセリかニンジン、クロアゲハはミカンかサンショウ、ジャコウアゲハはウマノスズクサ、という具合に自分の食べる植物をかたくなまでに限定しています。
●たしかに生命体は子孫を残すように作られています。しかしそれは生物としての義務ではありません。生き物には、繁殖に成功しないで一生を終える個体はたくさんいますが、子孫を残せなかった個体にも罰や不利益はありません。種全体で一定数の繁栄が起きればよいのです。その点、人類は安泰です。ですからこう思うのです。遺伝子は私たちに子孫を残せと指令しているのではなく、むしろこう命じているのです。自由であれと。
●興味深いのは母親の子育てにも個性があるということです。一心に赤ちゃんをなめたり、なでたりして一生懸命ケアする母ネズミと、逆に、赤ちゃんにあまり関心を示さず、ほったらかしの母ネズミがいるのです。面白い研究があります。よくケアされて育った子ネズミはどちらかといえば落ち着いて、リラックスした大人に育ち、あまりケアされずに育った子ネズミは警戒的で、いらいらした大人に育つ傾向が見られるというのです。ストレスにさらされると副腎からコルチゾールというホルモンが血中に放出されます。コルチゾールはエネルギーの燃焼を促進し、闘争したり逃走したりする行動を助けます。たくさん放出されるとその一部は脳の海馬に到達し、そこでグルココルチコイドレセプター(GR)という分子に結合し、信号を発します。この信号は視床下部、脳下垂体を経て、別の信号に変換され、それが副腎に働いて、コルチゾールの放出を抑制します。つまりフィードバックがかかるしくみです。さて、子育ての仕方とGRのレベルには、相関があるのです。生後まもなく手厚いケアを受けた子ネズミではGR遺伝子のボリュームつまみの音量が大きく設定されることがわかりました。GRのれべるが高いとコルチゾールを検出できるので、すばやくフィードバックがかかり、ストレス反応を抑えます。それゆえ子供は温厚に育ちます。子育ても余裕を持って行うことでしょう。つまり遺伝子そのものの有無ではなく、遺伝子の発現の仕方が、行動によって世代を超えて伝達されうるのです。これはエピジェノミックス(遺伝子そのものではなく、遺伝子を取り巻く仕組みの変化。「エピ」とは外側の意)と呼ばれ、生物学研究の新しいトレンドになっているのです。むろんネズミの成果がすぐにヒトに当てはまるとは限りませんが。
●トウモロコシは、アフリカのような乾燥地帯でも、アマゾンのような熱帯雨林でも育ちます。それはトウモロコシの特殊な光合成能力によります。一般の植物はC3植物ですが、トウモロコシはC4植物だからなのです。C3とかC4とかは、炭素(カーボン)Cの数です。光合成の初期産物は通常、炭素三つで構成されるホスホエノールピルビン酸ですが、トウモロコシはこの経路に加えて、炭素四つのオキサロ酢酸からも光合成を進めることができるのです。この結果、C4植物は、高温、乾燥、やせた土地などでも、効率よく二酸化炭素を栄養に変換し生育することができるのです。アスファルトの裂け目とか、道路脇のほんの小さな隙間に、雑草が生えているのを見かけることがあります。ああいった雑草は、C4植物であることが多いのです。
●マーシャ・ガッセン著「完全なる証明」
●黒岩比沙子「パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い」(講談社)、「伝書鳩 もうひとつのIT」(文春新書)
●普通の燃焼、例えばろうそくの火では、光への変換効率がたった4%程度。残りのエネルギーのほとんどが熱となって散逸してしまいます。電球でも光への効率は10%、熱くて触れないのはそのためです。一方、私たちはたき火や電球に親しみを感じます。光のあるところに暖かさがあることになじんできたからです。それゆえにこそ、‘冷たい光’が異世界のものに思えるのでしょう。LEDの効率は約30%。だから節電になるのです。そして、ホタルの発光効率はなんと90%。ほとんど熱絵の損失がありません。
●あるとき魚類の一部が、消化管を使って呼吸をすることを始めました。長い時間を経て、消化管がくびれて袋状になり、呼吸専門の器官となっていったのが肺の発生だと考えられています。今から数億年前のことです。今でも肺で呼吸できる古いタイプの魚がいます。南米やアフリカ、オーストラリアに棲息するハイギョの仲間です。それから町で呼吸できる達者なものもいます。人気者のドジョウですね。その後、肺は両生類、爬虫類、そして哺乳類へと受け継がれていきますが、肺を最も進化させたのは、何といっても鳥類でしょう。長距離を飛翔するためには大量の酸素が必要です。しかも空気が薄い高高度でも酸素を有効に利用しなければなりません。実は、鳥は我々ヒトとは違って、息を吸っているときだけでなく、吐いているときも酸素を吸収できているのです。鳥の肺には気嚢という袋がついています。息を吸うと肺を経由して、気嚢にも空気が溜まります。そして息を吐くときには、気嚢の空気がもう一度肺を通るのです。こうして鳥は往復して絶えず酸素を取り入れることができるのです。すごいでしょ。実は、恐竜も気嚢を持っていたので火山活動が盛んな低酸素時代に大繁栄できたのではという仮説もあるくらいなのです。つまり恐竜は鳥に近かったわけですね。
●バイオレメデーション
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