沢木耕太郎著『 深夜特急ノート 旅する力 』(新潮社)読む。
なんか、あまりにも忙しくて、仕事の内容がメチャクチャで、過剰なストレスで眠れない日が続き、寝てもすぐに起きてしまい・・・そんな感じなので、時間があれば本を読むことにした。
有名な「深夜特急」は長い旅を終えたあとに読んだ。ほとんど記憶にないのは、すでに2年にも及ぶ長期旅行をした後だったからかもしれない。でも面白く読んだことは間違いない。
この本も面白かった。やはり絶対に旅に出ようと思う。どうにかして、意地でも10年以内に1年くらいの旅に出ようと思う。これがオレの今の目標だ。
いくつか抜粋を
●前川健一「旅行記でめぐる世界」
●檀一雄「風浪の旅」
●あるいは、私が旅で得た最大のものは、自分はどこでも生きていけるという自信だったかもしれない。どのようなところでも、どのような状況でも自分は生きてくことができるという自信を持つことができた。しかし、それは同時に大切なものを失わせることにもなった。自分はどこでも生きていくことができるという思いは、どこにいてもここは仮の場所なのではないかという意識を生むことになってしまったのだ。私は日本に帰ってしばらくは池上の父母の家にいたが、すぐに経堂でひとり暮らしを始めた。夜、その部屋の窓から暗い外の闇を眺めていると、ふと、自分がどこにいるのかわからなくなる、ということが長く続いた。そこが自分の部屋であり、家なのに、旅先で泊まったホテルの部屋より実在感がないような気がしてならなかった。
●エリアス・カネッティ「マラケシュの声」
●かつて、私は、旅をすることは何かを得ると同時に何かを失うことでもあると言ったことがある。しかし、齢を取ってからの旅は、大事なものを失わないかわりに決定的なものを得ることもないように思えるのだ。もちろん、三十代には三十代を適齢期とする旅があり、五十代には五十代を適齢期とする旅があるはずだ。
●旅は人を変える。しかし変わらない人というのも間違えなくいる。旅がその人を変えないということは、旅に対するその人の対応の仕方の問題なんだろうと思う。人が変わることができる機会というのが人生のうちにそう何度もあるわけではない。だからやはり、旅には出ていった方がいい。危険はいっぱいあるあるけれど、困難はいっぱいあるけれど、やはり出ていった方がいい。いろいろなところに行き、いろいろなことを経験した方がいい、と私は思うのだ。
●ポール・ニザンが「アデン アラビア」で《 一歩を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ 》と言ったのは二十歳についてだったが、それは若者のすべてに、若い旅人のすべてに言えることでもあるのだ。私は結果としてその「一歩」を踏みはずさずに済んだ。そのことを含めて、私には「運」があったと思う。
旅がしたい、ただひたすら旅がしたい。