75歳ははたから見ればやはり老人でした
わが家からバスで280円の距離に、五年の余利用している床屋さんがあります。月に一度同じエリアにある泌尿器科と眼科に行く時、伸び具合を計ってお願いしています。ですからその連携プレイが上手く噛み合わないと、床屋をして随分とお久しぶりですねと言わせたり、かみさんに「伸びてますよ、お義父さんのお洒落見習ったら」なんて言われます。近所にも床屋はあるのですが、上手ですしなんとなく気が合い、世辞にもきれいとは言えないお店ですが利用しているわけです。
一昨日もそんな次第で目医者の帰りに行きました。しかしドアを開けて入っても電気も点いておらず店主も居ません。飼犬が一匹土間に寝転んでいて鼻を鳴らしております。と思ったら後からドアが開きもう一匹の犬を抱えて店主が入ってきました。そしてあたしとの挨拶もそこそこに奥のドア越しに二階に怒鳴ります。「何子、お客さんが来たから散歩に連れていけないよ」。彼、犬を散歩に連れ出したものの、店に入るあたしを見かけて急いで戻ってきたのです。いかに流行らないお店かがお分かりかと思います。
彼なかなかの根性がありまして、以前にかかとを骨折しても休むことなく、滑車のついた椅子に座って仕事を続けました。今日もやっと杖をつかずに歩けるようになったと言ってます。あたしは帰りのバスの時間を告げて座ります。
散髪も終わって時間に余裕があったので話し込みます。といっても一方的に彼の話を聞くだけでして、彼なかなかの饒舌家なのです。彼の話です。
「バス使っていらっしゃるのが億劫になったらいつでもお電話下さい。車で送り迎えしますから。」「大儀なときなんか、お声を掛けて下されば、お宅に伺ってやらして貰いますよ。遠慮なく言い付けて下さい。」「将来的にはあたしもそんなことを考えないでもないんですよ」とこれはあたし。「そういってはなんですが、この辺も高齢者の街といっていいぐらいでしてね、来てくださるお客さんにお話しているんですよ。そうすれば口コミで広まり、皆さんに喜ばれるんじゃないかと。こないだは懇意のお客さんが入院なさっていて、奥さんに頼まれ行って来ました。病院に出入りの床屋では嫌だと病人が言ってくださったそうです。高齢者社会ですから、これからはそこまで考えを変えてやらなくてはいけませんね。」
なるほど、この近所にも二軒の床屋があり、小奇麗な店構です。店主としても店の改装も、儘ならずといったところではないのだろうか。それとも息子は東京で独立して理髪店を開業しているという事もあり、齢も還暦を迎えたと言ってますし、そこまでの気力はないのかも知れません。
そういえばあたしの父も晩年は、懇意の床屋さんに来てもらって散髪してもらっていたのです。なるほど、あたしも父の年齢に近づいてきたということなのです。自分では若いつもりでいて、人からもお若い、とてもそんなお齢には見えませんと言われて、それなりに悦に入っていますが、考えたら別に考えなくても明日で75才になるのです。驚きです。大病と事故で背中と腹に大きな手術痕を残し、よくもこの齢まで生き永らえたものです。
床屋の店主は正直に、あたしをそれなりの老人と見て心配してくれたのです。そう素直に考えればそう言ってくれるだけあり難いと思わねば、世の中丸く収まりません。
あたしは思いました。これからは自信を持って自分は75才の立派な老人と、胸を張って大手を振って歩こうと。まさかそこまで気張ることはありませんか。いろいろ思いを巡らした半日でした。
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出張床屋は、いいアイディアですよ。
電気はついてますが、エアコンは真夏と真冬だけです。自分達もそこで作業しますからつけますが・・・
そこの床屋さん 出張床屋 に鞍替えしてもいいのではないのかしら~今1000円床屋ありますからね・・・
親切も時々は・・・複雑な胸中ですね~。
床屋さんといえば、30年来おつきあいのお店が、昨年末お店を閉めました。私と同年生まれの店主が大病をし、息子さんも都心での営業は難しい(客がない)といって、郊外に移転しました。年と共に、出会いが減り、別れが増えます。ムベナルかなです。
今日だけというより、毎年5月18日の一日だけ同い年になるわけですね。七夕さまみたいですね。
やまちゃんさんへ
志村さんもおっしゃるように、いいアイディアかもしれませんね。腕に職があるということは強いですね。もっとも体も頑強でなければなりませんが。
koba3さんへ
何処も同じ秋の夕暮れですか。あたしの周りでも、一人減り、二人減りがここ数年続いております。寂しきかぎりです。