建物破壊作業続く、空襲も<o:p></o:p>
四月四日(水)雨
午前零時過警報。敵大編隊南方海上を北上中なりと。
一時ごろよりその主力は房総より、その一部は伊豆、駿河湾より進入し来る。
伊豆に入りたるものは焼夷カードを撒布する。房総より入りたるものは関東東部を経て北部に至り。照明弾、焼夷弾を投下中とラジオいう。
高須さんと二階に上がり、窓あけて、暗々と雲ひくき夜空を仰ぎつつ、ヤレヤレ今夜は東京にあらざるごとしとよろこびいたるに、この北部の敵南下して、帝都上空を経て南方に去る。そのついでにしきりに爆弾を各所に投下し、轟音、炸裂、家震動、ガラス戸ガタガタと鳴り、大いに戦慄す。
少数機ずつ続々と入りては投弾し、防空壕より出でんとすれば青白の閃光四辺にきらめき、ダダーンという音、凄まじとも何んとも形容し難し。小便するも能わず、今までの空襲の中、最も閉口す。
三時過ぎ、もう下火となりたるべしと思いしに新たなる敵伊豆に侵入しつつありといいて、ラジオ沈黙す。やがて、轟音とダ、ダ、ダ、ダ、ダーンという爆弾の落とされゆく音、四時過ぎまで荒れ狂う。
ラジオようやく声を発す。敵は京浜地区にも時限爆弾を投下せりと。四時半ようやく解除せらる。二階に上がって見るに、東西南北いずれにも火の手あがる。三月十日よりも火災弱く見ゆるも、範囲は広し。遠く近くしきりに消防自動車の音聞こゆ。
寝につく。未だ眠りに入らざるに、もう朝五時のラジオ、「みなさんお早うございます」の声をきく。
終日、雨、暗くして寒し。朝九時、正午、B29一機ずつ来。
夜、勇太郎君来り、新宿のへんやられたりと知らす。東京駅近傍、大森あたりもやられたりと。