うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読む30

2010-02-24 06:39:46 | 日記

風太郎氏、民衆の声に不満あり<o:p></o:p>

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 (空襲の日常化、そして硫黄島への上陸や、姿見せぬ連合艦隊に業を煮やす庶民の焦燥ち、庶民の声は辛辣さを増していくようです)<o:p></o:p>

 「政府はいったい何をしているんだ?」<o:p></o:p>

 「海軍は、日本海軍はすべて海底にありという敵の宣伝も、これじゃ信じないわけにはゆかないじゃないか!<o:p></o:p>

 「硫黄島はもう駄目だな。いや、日本はもう駄目だな。だんちがいだ。手も足も出ないとはこのことだな。公平に見て、日本は絶対にかちめがないな」<o:p></o:p>

 「この戦争を始めたのはいったい誰なんだ? 一大誤算だったんだ。近衛さんはやっぱりえらかったな」<o:p></o:p>

 国民とはすなわち衆愚なりとの(しるし)、騒然と波打つ街頭に歴として出現す。<o:p></o:p>

 (国民の声に風太郎氏、少なからず怒りを感じているようです。神国不滅の精神からでしょうか、憂国の情熱ひしと披瀝します)<o:p></o:p>

 西にドイツ潰えんとして、東に敵艦海を覆い、敵機空を覆わんとす。しかも米の富強、なお余りありて、英、ソ、支に莫大の武器を注入す。一を以って十を撃つも及ばず、百を撃たんか、一を以って百を撃つものは科学と精神力なり。科学は如何、日々のB29の来襲ほとんど傍若無人にあらずや。ああ、日本をこの危機に陥らしめたるもの。みそぎや、神風や、かかる荒唐無稽なるものを以ってすべてに勝れりとなす固陋卑怯の政治家、職業的精神主義者、神がかり的狂信者どもなり。<o:p></o:p>

 性能劣れる兵器を以って卓抜する千倍の敵を撃たんとす。戦術も手をこまねき精神力も圧倒せられざるを得んや。この機動部隊を粉砕し、硫黄島の敵を駆逐し、比島奪回に成功し、しかも長躯広茫の太平洋を越えて米本土を制圧せんとす。あに夢といわずして何ぞや。ああ、必勝の信念堅持することの難きかな。(この慨嘆、当時の日本人の大多数が、心に秘めていたものなのでしょうか。)