TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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「日本経済100の常識2008」を読む

2007-10-20 18:54:41 | 今週の一冊
 本日は、最新の日本経済の常識100テーマを解説した本、「日本経済100の常識2008」について書きます。

 この本では、第1章「経済の動きを知る」から、第7章「グローバル化の流れを読む」までの7章構成で、見開き2ページ1テーマで100テーマが書かれています。1テーマの内容がちょっと物足りないのですが、あやふやだったキーワードやことがらが簡潔に説明されていて勉強になります。その中で、私が興味を引かれて読んだ3テーマに書きます。
 
 第2章「政策を読む」026「市場化テストとは何でしょうか」とうテーマについて
 この制度は、公園運営、税金徴収など公共サービスの担い手を官民どちらかがふさわしいか入札で競い合う制度です。海外では20前から導入されている手法だそうですが、日本では平成16年のモデル事業としてスターし、根拠法「公共サービス改革法」が施行されたのは平成17年だったそうです。私は、言葉は知っていたのですが、どのような内容かははずかしながら知りませんでした。
 対象業務として、①ハローワーク関連事業、②国民年金保険料収納業務、③登記関連業務などが指定されています。今日の新聞には、対象業務22業務が追加されることが記載されていました。国立病院の集金業務や公営住宅の滞納家賃徴収などです。これで市場化テストの対象は49業務となります。この本では課題として、ハローワークの例を上げ「官」の抵抗が記載されています。ハローワーク業などは相談者の守秘義務がしっかり守られたならば職業紹介を「官」が行う必要がないと私は思うのですが。これは「小さな政府」を目指す政策手法で、民間研究所の試算では、市場化テストが普及すると、国と地方で合計8兆円弱の人件費削減ができるとされ財政削減にもつながります。「官」で行っている業務で「民」でできる業務がどんどん民間で行うべきだと私は思います。

 第4章「日本企業に残された課題は?」057「三角合併とは何ですか」というテーマについて
 平成19年5月に1年間の猶予期間を経て解禁された三角合併のことが書かれています。従来は企業が合併する際には、合併の対価として存続会社が消滅会社の株主に渡すのは存続会社の株式が原則でしたが、今年の5月からは、現金、社債、存続会社以外の株式など経済的価値があるものなら何でも使えるようになりました。「合併対価の柔軟化」の流れであり、この場合に親会社の株式を使うことが三角合併です。本では、外国企業の子会社が日本企業を合併した時に、外国企業の株式を交付する例が図式されています。少ない現金で日本の企業を完全子会社できる手法です。
 それにしても、なぜ企業の合併・買収がこれほど活発化しているのでしょうか。今日の新聞記事でもキリンHDが協和発酵を買収することが書かれていました。この本に書かれている日本企業によるM&A(企業の合併・買収)の推移件数を見ると、平成8年には621件だったのが平成18年には2,775件になっています。経済のグローバル化が要因かもしれませんが、従業員にとってはきついものがあるのではないでしょうか。
 地元伊勢崎市の中核企業、「日立オートモティブ」はかつては日産の子会社「ユニシア・ジェックス」でした。日産が合理化のため日立に売却した企業です。私は、この企業の従業員の方に親会社が変わって変化したことがありますかという質問をしたことがあります。業種が変わっていろいろなことが短期志向になったとの返答がありました。自動車と電機の違いですかねとの話でした。いままで培った企業風土を親会社にあわせていかなくてはならないのですから苦労があると思います。しかし、環境変化していくことが企業の生き残りにはどうしても求められるのでしょう。しかし、自分の会社がある面、なくなっていますのですからつらいですね。

 第4章「日本企業に残された課題は?」062「会計制度はどのように変わろうとしているのか」というテーマについて
 「会計ビックバン」と呼ばれきた日本の会計制度改革が書かれてします。狙いは「財務諸表の中身をできるだけ企業実態に近づけることにある」に妙に納得しました。私は、平成14年に税理士試験の簿記論を勉強するために専門学校に通学していたのですが(ほんとうに難しかった)、その時に新しい会計の「金融商品会計」「退職給付会計」「「税効果会計」「キャシュフロー会計」などを勉強しました。すべて企業実態に近づけるための会計だったわけです。なぜ、こんな頭のいたくなるようなことをやるのかと思っていましまたが、グローバルスタンダードという会計制度の潮流だったんですね。今年度以降も残存価格なしの減価償却計算、平成20年からはリース会計の費用化などと会計手法が次々と変わっていきます。

 この本をはタイムリーな話題を説明しています。新しい制度、理論が次々と導入されていることがわかます。時代に取り残されないように、日々勉強していかなくてはならないことを自覚させてくれる本でした。

http://www.sia.go.jp/top/kaikaku/shijoka/index.htm
↑ 社会保険庁の市場化テストのHPです。

http://www.pref.osaka.jp/kikaku/sijohka/jisshi.html
 ↑ 大阪府の市場化テストのHPです。

http://www.nikkeibp.co.jp/news/feature/531534/
 ↑ 日経BPnetの三角合併の記事です。