TSUNODAの経営・経済つれづれ草

身近な経営に関すること、経済に関することを思うままに

「戦略会計入門」を読む

2007-10-13 21:54:56 | 今週の一冊
 土曜日なので、今読んでいる「戦略会計入門」の感想を書きます。

 この本についてはまだ、最後まで終わっていないのですが、勉強になったことが多いので書きます。私にとっては難しい本ですが、読み終わったらもう一回読んで理解を深めたい本です。この本の著者、高田直芳の本を読むのは2冊目です。「決定版ほんとうにわかる経営分析」という本を読んでいます。経営分析の本では私にとっては一番ためになった本でした。今回の本も面白いです。会計本として山田真哉の本も面白いですが、高田直芳の本は、少し会計の知識を持つ者にとってなるほどなと関心することが多い内容となっています。以下になるほどなと関心したことを三つ書いてみます。

 まず、戦略会計の五大原理が最初に書かれているのですが、その第一原理「ビジネスは択一問題に直面している」の箇所です。ビジネスはあらゆるところで択一問題が成立します。たとえば、どの製品を製品化するか、会社を買収するかしないか、事業撤退すべきかしないべきかなど、すべていづれかを選択(意思決定)することが求めれます。私たちの日常生活もあらゆる場面でどっちを選ぶのか選択をしているのですが、なぜかこの箇所を読んでいてなるほどなーと思ってしまいました。診断士受験の勉強をしていた時、サイモンの意思決定プロセスを勉強しました。情報活動→設計活動→選択活動です。私はこのプロセスを思い出し、この理論の選択活動とは、この第一原理のことなのかと思ったのです。企業活動の最適な選択プロセスがサイモンの意思決定プロセスだったのです。この本ではどのような選択をすればよいかが第二原理以降に書かれています。

 次に、私が勉強になった箇所は「事業付加価値の意義」です。ここでは付加価値の意味が書いてあります。私は、付加価値ということがよくわかりませんでした。
控除法と、加算方式での付加価値の計算方法があり、融資を担当していた時は、付加価値率を経営指標としていましたが、その意味をほうんとうには理解できていませんでした。付加価値の計算方法としては、売上高ー(材料費+外注加工賃)で企業が生み出した価値であり、その数値が大きい企業が生産性が高く、売上高で割った付加価値率の高い企業が優良企業としていました。なぜかということが理解できていませんでした。付加価値の構成要素は人件費、減価償却費などの費用、営業利益で構成されているのですが、費用が多額な企業が優良企業とは理解できないでいたのです。
 この本ではCVP図表を利用して事業付加価値を説明しています。事業付加価値は変動利益(固定費用+当期純利益)と図で表現されています。変動費型ビジネスと固定費型ビジネスもCVP図表で表されています。事業付加価値の小さい企業はフットワークはよいが、生殺奪権を外部の者に(外注業者)に握られ「自活力が弱い」というリスクがあると記載されていることが理解できました。いわゆる優良企業ではないのです。また、事業付加価値の高い企業は固定費を抱えているのですから、その設備が効率よく稼動していることが当然に求められます。遊休設備や無能な人を多く抱えて事業付加価値の「見てくれ」が大きくても優良企業ではないということです。そこで総資本当期純利益率の指標と組み合わせて経営分析することが必要と書かれていることに納得です。

 それから、「顧客の機会利得を収奪せよ」の箇所も面白く読みました。経済学の部分均衡分析をベースに書かれているのですが、社会全体で享受できる機会利得をだれが獲得するかが図表を使い説明されています。企業は、消費者の機会利得を奪わなければ自らの機会利得を拡大することができません。その例としてハードカバーの本と文庫本の関係、バーゲンセールのこと、抱き合わせ販売が説明されています。そして、私は、談合がなぜよくないかが、この理論で説明されていることになるほどなーと納得しました。

 30年前に学んだミクロ経済学の図表がこんな意味を持っていたのかと思いました(図表の内容がもう理解できないことが多かったですが)。読み終わっていないのですが、じっくりもう一度読んでみたい本です。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~njtakada/
高田直芳氏の書籍紹介されています。