TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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労働者派遣事業の功罪

2007-10-10 23:52:14 | 経営全般
 労働者派遣事業所が急増しています。この功罪について思うところを書きます。

 平成16年3月からの労働者派遣法の改正で労働者派遣事業所が急増しています。私の住む群馬県では、平成12年では134事業所だったのが、平成19年9月1日現在で955事業所に増加しています。製造業への派遣が解禁になった平成16年に406事業所と前年(252事業所)と比較して倍近く増加して、平成17年(594事業所)、平成18年(826事業所)、平成19年(955事業所)と急増していいます。平成12,13年ころの景気が低迷していた時、企業は3つ過剰を抱えていると言われていました。「設備の過剰」、「債務の過剰」そして「人の過剰」です。固定費の変動費化策として「人の過剰」を解消するため、企業は正社員の採用を控え派遣社員で対応する方策を取ってきたことが派遣事業所の急増をもたらしたと思われます。

 企業にとって派遣社員の活用メリットとして、①必要な時に必要なだけの不足人員が迅速に調達ができる、②即戦力人材の確保、③人件費圧縮によるコスト削減効果があるといわれます。確かに納得のいくことです。とりわけ、人件費のコスト高が深刻だった製造業にとっては16年3月以降に解禁になったことは業績回復に効果があったようです。また、正社員、パートという働く形態の他に「派遣社員」という形が定着したことは働く者としても、選択枝が増えてよかったのかもしれません。派遣社員は社会に定着し、篠原涼子が主演した「派遣の品格」というテレビドラマは高視聴率だったようです。

 一方、派遣という形態はいろいろな問題をはらんでいると私は思います。まず、派遣で働く人は職業的に不安定な状態にあることです。テレビドラマの篠原涼子にように、高度なスキルを持つ人材であれば高給で派遣されるかもしれませんが、大半の派遣社員が安い賃金、薄い保障、低い福利厚生で雇用されているのはないでしょうか。私は県立専門校で再就職することを目的とした失業者を対象の「ビジネス実務科(6ヶ月コース)」で教えていた時に、はなかなか就職が決まらす最終的には人材派遣会社に登録することで就職した形にした女性がいました。生活のために稼がなくてはならず正社員として就職できず、泣く泣く条件の悪い派遣社員に登録していました。好き好んで派遣社員に登録して働く人は少ないのではないでしょか。企業が正社員を雇用せず、派遣で対応する背景があるので派遣で働く人が多いのではないでしょうか。所得格差が日本では急速に広がっているのも派遣事業所の急増と関連していると思います。

 それから、派遣先企業にとって派遣に頼った企業体質では将来性がないように思われます。私は、16年4月から19年3月まで、地域産業振興支援の仕事で地元(伊勢崎、玉村地区)の主として製造業を企業訪問していました。経営者に景況感や経営方針をヒアリングしていたのですが、工場現場を見学させてもらう機会もありました。派遣労働者や請負労働者が働いている職場も多かったです。感じとして独自技術を持った企業は正社員比率が高かったと思います。プレス加工の企業に派遣が多かったと記憶しています。比較的単純な労働が多い企業は派遣労働者でなければ、工賃が安いのでしょうから採算があわないのかもしません。しかし、企業としての将来性は心配でないでしょうか。

 BRICSなどといわれるようにどんどん工業化が進む国が増えてきて世界的な競争が激化する時代に、今後はますます自社の独自技術と人材が生き残るための大切な経営資源となると思われます。コスト削減できるからといって、派遣という形態に頼よりすぎている企業に将来はないように思れます。