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小泉純一郎、政界引退

2008-09-26 00:21:40 | 政治・経済
小泉純一郎元首相が次期衆院選に出馬しないことを表明した。
つまり、今度の選挙で国会議員を引退するということだが、私はホッと肩をなでおろした。

というのも、小泉政権の末期に一部で小泉首相続投説が流れたとき、
私は方々で「小泉さんは首相を続ける気は無い。それどころか、議員を辞める気でいる。直ぐ辞めないにしても次の選挙には絶対に出ない」と断言していたからだ。
首相の続投はなかったものの議員を辞職する気配はなく、次の選挙が近づいた。
あれだけ言いふらしたのに結果的に嘘をついてしまったかなと案じていたら今日の引退表明があったわけだ。

小泉純一郎という人物はわかりにくいようで実はわかりやすい。
彼には政治思想らしい政治思想なんてなく、己の良いと思ったことを信じてそれに突き進む。
他人に左右されたくないから、派閥なんて何処吹く風。
森派に属していたがほとんど勝手に行動していた。
そして、未練なんてものを持たない。
だから、念願だった郵政民営化を達成したのだから政界から去って余生を愉しむだろうと予想していた次第だ。
永田町でこんな人物まづ居ない。
田中眞紀子が彼に変人とあだ名を附けたのは今更ながら言いえて妙だと思う。

彼が総理になる前、変人は変人にすぎず、党からも殆んど相手にされていなかった。
まぁ、ああいう変人がいるけれど、影響力無いし放って置こう、と。
当時、郵政民営化なんて誰も出来るなんて思っていなかった。
郵政民営化を唱え、衆議院勤続二十五年の表彰を拒否して、百万円の肖像画代の受け取りを拒否したときも、他の議員は鼻で笑っていた。

そんな変人が総理になれたのは森内閣の末期、変人を担ぎ出さねばならぬほど、自民党が困り果てていたからだ。
森総理の政権末期の支持率は5%そこそこ。
次期総裁に国民から人気のある人物を据えないと自民党の明日は無いという危機感ががあった。
彼が総理になったとき、もっとも高いもので90%以上の支持率を叩き出した。
自民党は肩をなでおろしたが、彼がしきりに叫ぶ構造改革とやらに心中おだやかでなかった。
当時、構造改革を望んでいたのはむしろ、民主党など野党の方で自民党は郵政民営化を含めて止めて欲しいことだった。
が、彼は本気だった。
自民党をぶっ壊すという言葉にも偽りは無かった。
じじつ、郵政選挙以後、自民党はぶっこわれたのだ。
真性保守議員はその時ほとんど放逐された。
そして、小泉改革のツケがじわりじわりと効いていた。
いまの自民党の不人気は小泉首相の「御蔭」なのである。

肖像画代を受け取らなかったことからもわかるように小泉純一郎は合理主義で生きているような人でとにかく、無駄が嫌いな人だった。
彼に一つ思想があるとすればそれは合理主義だったように思う。
そういう意味において彼は本質的には左翼だったわけだ。
総理になったあと、皇室の儀式について「天皇の儀式って何をやっているんだろうねー。何もわからない。こりゃ、皇室も改革が必要だな」なんて嘯いたのはやはり彼が合理主義者だったからだろう。

靖国神社に参拝したのも他の保守系議員が参拝する理由とはちょっと異なる。
鹿児島の知覧で戦死した特攻隊員の遺書を読み感動したからと言った方がいい。
だから彼にとって大東亜戦争の意義なんてどうでもよいことだった。
合理主義者に歴史も伝統も必要ないからだ。
女系の天皇で何が悪いの?と皇室典範の改正に着手したのもこれらのことを踏まえれば誰もが頷けるだろう。

この合理主義は官僚機構改革においては抜群の威力を発揮する。
私も当初小泉内閣を支持したくちだが、それは日本の癌におもえた官僚機構の無駄を一気に解消してくれるかもとの期待があったからだ。
ところが、そちらは中途半端に終り、むしろ、手をつけてはいけない領域が改革の美名の下につぎつぎと破壊されていった。
皇室典範は悠仁様の御誕生でなんとか改悪を免れたが、モラトリアムを与えられたにすぎない。
皇室をはじめ日本国をかたちづくるものには不合理なものが多い。
しかし、それは無駄とイコールではないのだ。
無駄に思われても日本おおび日本人にとって必要なことが沢山ある。
それが小泉首相にはよく理解できなかったのだろう。
彼はしばしばアメリカのポチ(犬)なんて云われていたが、いや、犬ではなく彼はアメリカ人そのものであったのだ。

縷々批判めいたことを書いたが私が小泉元首相をいまでも評価している点が一つある。
それは金正日に拉致を認めさせたことだ。
御蔭で日本人がやっと北朝鮮のいかがわしさに気づいた。
そして、社民党やその支持団体のそれにも。
これは大きかった。
少し前まで、北朝鮮が日本人を拉致したなんて言おうものなら軍国主義者や右翼のレッテルが貼られた。
国会で拉致問題を取り上げた議員の質問は社民党と自民党の中にもいた北朝鮮シンパの野次にかき消された。
戦前は言論の自由がなかったなんて良く言われるが、云えない内容が変わっただけで戦後も言論の自由がないこと戦前と似たようなものだった。

が、小泉訪朝は輿論をがらっと変えた。(少なくとも北朝鮮に対するものは)
いま社民党が消滅寸前なのも北朝鮮の正体がばれたことが大きい。
日本人が戦後初めて、日本の周りは危険な国だらけだということに気づいた。
近年では中国のそれにも本当にやっと気づいてくれたようだ。
私は高校の頃、中国も北朝鮮も韓国もロシヤもそしてアメリカも凄く危険な国ですよなんて云っていたら当然の如く「右翼」なんて言われたものだ。
いまや、それも常識となった。
やっと日本人の目が醒めて来たという具合だが、あまりにも長い眠りだった。
近ごろ、日本は右傾化しているなんて云う人があるが、日本人の国防意識がやっと世界基準に近づいただけだ。
私の師事する教授が朝日カルチャーセンターで講演をしたとき、同様の質問が出た。
「いま、日本は右傾化していますがどう思いますか」と。
教授は「私は中国やロシヤの帝国化のほうがよほど怖い。それらの国と比べても日本が右傾化しているとは到底思えない」と答えたとのこと。
ま、いまのところ、日本政府がどこかの国を侵掠する気配はないし、他国の領土を不法に占拠して、近づいた他国民に銃を発砲することもないし、他国の国民を拉致していることもないし、自衛隊が日本国内で国民を虐殺するなんてことも起こっていないし、政府の悪口を云っても監獄に入れられて内蔵を摘出されることもないのでバカ右翼が増えたのは事実だとしても日本の右傾化なんてものはだれかが言い出したフィクションだと思っている。

おっと、小泉さんのことを書いていたはずなのに案の定話がずれてしまった。

小泉元首相は引退するが、彼の遺伝子は自民党内にばら撒かれた。
小泉の劣化コピーがうじゃうじゃいる自民党はある意味じゃ大量の不良債権を抱えているようなものだ。
麻生内閣でその小泉の不良債権ならぬ、上げ潮派の議員が一人も入閣していないことは特筆にあたいする。
麻生新総理は小泉首相が残した不良債権をうまく処理することができるか注目したいところだ。

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4 コメント

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首相としての是非はともかく (いーじす)
2008-09-26 12:11:16
歴史的に見て必要な人物だったと思います
今後、かれを肯定的に評価するかしないかは
今後の流れというものがありますから
それこそ彼の死後を待たねばならぬと思いますが

後々、現代史では彼をキーポイントとして
日本の「流れ」が変わったと語られるように思えます

よく、小泉さんを信長と例えられることがありますが
正しく、彼は信長だったと思います
彼の存在なくして徳川300年の平和は無かったわけです
願わくば小泉さんの後300年といわずとも
20年くらいの平和の基礎を築く政治家が現れて欲しいものです。


個人的には7:3の割合で小泉さんを肯定的に思っています
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おっしゃるとほりだと思ひます (粗忽亭主人)
2008-09-26 14:56:25
わたしも小泉元首相不出馬の報道に接して、「へー!」とは思ひましたが、意外だとは思ひませんでした。小泉續投待望論があれだけあったのに任期切れですっぱり退任してしまったのは、やりたいことはやりをへてしまったからにほかなりません。「普通の」政治家なら、ちょっとでも長く首相をつづけ、かつ、退任後も影響力をのこし、驅使しようとするでせう。森元首相がいまさうしてゐるやうに。議員を辭職しなかったのは、選ばれた以上、任期までつとめるのが責任だとかんがへてゐたにすぎないと思ひます。
新聞などの解説では、總裁選で小池さんを支持したのにさっぱりだったのがきっかけではないかとかいろいろ言ってゐますが、僻目ですね。小泉さんは議員などといふ不自由な立場にゐるよりも、時間的にも自由な立場になって、好きなこと(クラシックの鑑賞とか)を好きなだけすることの方がたのしいと思ってゐるのでせう。わたしなんぞも食ふにこまらないだけの金さへあればさっさと隱居したいと思ってゐるクチですから、そのへんはよくわかります。かっこよくいへばヤン・ウェンリータイプですね。

ところで小泉さんが自民黨をぶっこはした結果、自民黨の中でも特に自民黨らしかった人たちが追ひ出され、國民新黨を作りました。非自民が看板のはずの民主黨はその國民新黨と連携してゐます。自公聯立以上の御都合主義的數あはせと言はざるを得ません。
いっそのこと、今度の總選擧をきっかけに、本格的な政界再編、いはゆるガラガラポンがおこって、自民黨も民主黨もぶっこはれて、主義主張、政策の近い人たちで作る本當の意味での「政黨」にまとまりなほしてほしいと思ひます。でないと、どの黨を支持すべきか、どの黨に投票すべきか、今後とも判斷に苦しむことになってしまひます。
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最高のエンターテイナー (あび卯月)
2008-09-26 23:40:28
小泉元首相の政治家としてやってきたことについては功罪あったといわねばなりませんが、小泉首相の出現によって日本の流れが変わったのは確かですね。
小泉=信長という御指摘も頷けます。
さて、誰が秀吉、家康になるか見ものです。

そして、小泉さんは芸能人としては一流だったと思います。
今日、テレビで小泉政権の五年を振り返る映像がながれていましたが、今見ても胸躍る箇所がいくつかあります。
「自民党に足を引張られるのではなく、私が自民党をぶっつぶします。小泉を信じてください!」
「私の内閣に反対する勢力、これは全部抵抗勢力だ!」
また、これは映像では流れませんでしたが
「旧郵政省の訳の解らない論理は小泉内閣では通用しないということをしっかりと銘記していただきたい!」等など。
どのセリフも大衆を魅了するに余りあります。
小泉劇場は国民としてではなく観客としてはまことに愉しませてもらいました。
まことにもって小泉首相は(政治家としての是非はともかく)最高のエンターテイナーでありました。
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政界再編を・・・! (あび卯月)
2008-09-27 00:05:56
コメントありがたうございます。

他のメディアの解説ではこの度の引退宣言は麻生内閣に対する当てつけなんていふのもありました。
これも的外れな解釈と云はざるをえません。
小泉さんと麻生さん経済政策にかなりの温度差があるにせよ、この時期に引退することは随分前から決めてゐたことでせう。
それにしても、私も粗忽亭主人さんと同じく喰ふに困らない金さへあれば隠居して趣味に生きたいなんて思ってゐるクチなので小泉さんの生き方は羨ましい限りです。
本当にあの人は政治家といふより自由人ですね。

>いっそのこと、今度の總選擧をきっかけに、本格的な政界再編、いはゆるガラガラポンがおこって、自民黨も民主黨もぶっこはれて、主義主張、政策の近い人たちで作る本當の意味での「政黨」にまとまりなほしてほしいと思ひます。

まったく同感の至りです。
現状では自民・民主それぞれの党内の議員の主義主張がばらばらで「どちらを支持しますか?」と問はれても自民にも民主にも支持する議員はゐても、党としてはどちらも支持する気になれません。
主義主張を同じくするものが集まったものが政党だとすると自民も民主もおよそ政党の体をなしていません。
いまのやうな事態になるまえに政界再編をするべきだったと強く思ひます。
福田政権のときなど、結構良い時機だったと思ふのですが、いまとなっては叶はぬ願ひです。
大連立構想が持ち上がった時もこのブログで、いまは連立ではなくて政界再編をすべきで「自民、民主の両党の議員は反米保守、親米保守、反米親特アの三つくらいに分かれてはどうか」なんて書きました。
この分類の是非はともかくとして、近い将来に政界再編を望みたいものです。
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