あび卯月☆ぶろぐ

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「大津いじめ事件」について一言

2012-07-26 21:58:21 | 社会・世相
昨年十月、滋賀県大津市の中学校でいじめによって男子生徒が自殺した。
いまになって明るみになり、連日メディアが騒いでいる。
いじめの内容は凄惨を極めるもので、「いじめ」というより殺人未遂、傷害、暴行、恐喝、窃盗・・・と云った方がいい。

「いじめという言葉をもうやめよう。傷害、暴行、恐喝、窃盗ときちんと実態にあった名称で呼ぶべきだろう。そして、そのような刑法犯はとっ捕まえて少年院にでも放り込めばいい。」
とツイッターでつぶやいたが、改めて強調しておきたい。

この事件で一番悪いのいじめた生徒だ。
二番目がそれを知っていて無視した教師。あとは教育員会が続くか。

いじめた生徒を難じるのはここではしない。
他の正義漢たちにお任せしよう。
ここでは学校について一言いいたい。

なぜ学校はいじめについてほとんど有効な対応ができないのか。

全国の小中学校は文部科学省の学校評価制度によって評価される。
いじめや不登校という問題が明るみにでると、学校や校長の評価が下がる。
それで、学校はいじめを明るみにしない。あっても隠蔽する。

古谷実に『僕といっしょ』という漫画があるが、作中に主人公の知人の小学生が学校でいじめを受けているシーンがある。
突然、校長室の絵になり、校長が一言「いじめはありません」。
この漫画はギャグ漫画だが、そういうギャグのような実情が現実にある。

実際にこの大津の事件でも校長は「学校は気づいてなかったんですわ」とのたまっている。
自殺した生徒は担任の教師にいじめについて相談したが、教師は「そんなんどうでもいいから」「君が我慢したら丸く収まるから」と対応した。

鳥取県の中学でも似た話がある。
いじめを目撃した女子生徒が教師に訴えると
「いじめた側には家庭問題でいろいろ大変なことがあるのでそれくらい赦してやれ」と対応されたという。
悪いのはいじめを受けた側で、いじめた方は何も悪くないような言い草だ。

こういう学校側の対応を知って、私は漱石の『坊つちやん』を思い出した。

主人公の「坊っちゃん」は新任教師として松山の中学校に赴く。
そこで生徒から連日いやがらせに遭うのだが、宿直の夜には蚊帳の中にバッタを入れられ、二階からは騒ぎたてられた。

その処分についての職員会議が開かれる。
そこで教頭の「赤シャツ」は、事件を起こした生徒たちに「厳重な制裁を加えるのはかえって未来のためによくない」といい、
「少年血気のものであるから活気があふれて、善悪の考えはなく、半ば無意識にこんな悪戯をやる事はないとも限らん」と生徒を擁護し、「なるべく寛大なお取り計らいを願いたい」と締める。
他の教師たちも、みな賛同する。

事件を起こした生徒には悪気があったわけではないから、まぁ、穏便に済ませましょうと。
小説の中の話とはいえ、明治の昔から教育現場では似たようなことが繰り返されてきたのかと肩を落としたくなる。

しかし、このあと数学教師の「山嵐」がその場の空気を打ち破り反論する。
長くなるが引用する。

「私は教頭及びその他諸君のお説には全然不同意であります。
というのもはこの事件はどの点から見ても、五十名の寄宿生が新米の教師某氏を軽侮してこれを翻弄しようとした所為とより外には認められんのであります。
教頭はその源因を教師の人物いかんにお求めになるようでありますが失礼ながらそれは失言かと思います。(略)
軽侮されるべき至当な理由があって、軽侮を受けたのなら生徒の行為に斟酌を加える理由もありましょうが、なんらの源因もないのに新米の先生を愚弄するような軽薄な生徒を寛仮(かんか)しては学校の威信に関わる事と思います。
教育の精神は単に学問を授けるばかりではない、高尚な、正直な、武士的な元気を鼓吹すると同時に、野卑な、軽躁な、暴慢な悪風を掃蕩するにあると思います。
もし反動が恐ろしいの、騒動が大きくなるのと姑息な事を云った日にはこの弊風はいつ矯正出来るか知れません。
かかる弊風を杜絶するためにこそ吾々はこの学校に職を奉じているので、これを見逃すくらいなら始めから教師にならん方がいいと思います。・・・」

武士的な元気を鼓吹とは若干時代的ではあるものの、感動的な反論だ。
特に最後のくだりは教師ではない身にも万感迫るものがある。
そう、いじめを見逃すくらいなら始めから教師にならん方がいいのである。

大津の中学校には「山嵐」が居なかったのだろう。
それが悲劇を生んだ一因であることは間違いない。

いじめ事件は大津だけの問題ではない。
全国津々浦々で似たような事例があろう。
教師はいまからでも遅くない、「山嵐」の演説を一回でも朗読するべきだ。

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1 コメント

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子供たちは社会を映す鏡 (himaoji3)
2012-09-01 14:50:53
ありきたりで恐縮ですが、子供が悪いと決めつけることは大人であるわたしたちの怠慢です。一年間に三万人近い人が自殺する社会を映して、中学生や小学生が自殺するのは、見方を変えれば当たり前かも知れません。

人を死に追い込むような社会を是認している昨今、経済価値だけが万物の物差しであるかのような社会を正しいという大人こそが変わらなければと思います。

言葉や知識で子供を諭すのではなく、正しい行動や態度で子供に教えることが、社会の大人の責任です。
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